表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/219

082.抗体/試金


メノミウスの骨を運び、奥の部屋に消えるア号姉妹とファブリカ。

何を思ってか私とオリヴァレスティを残したが、やはりその意図は不明だ。



彼女達がこの場を後にするや否や。

黙々と袋を手に取り、戸棚から菓子類を詰めていくオリヴァレスティ。



私は、それを目にしながら……。

ファブリカに頼まれた「監視の任務」を実行しようとしていた。





「……そういえば、先程話していた食糧難の件。()い案かは分からないですが、一つ思い付いたことがあるのです」



「んー? メノミウスのお肉を使った話だよね!」



「=うん。美味しい美味しいお肉。うん」



「その件なのですけど、そのままお肉として提供するのではなくて、粉々にしたり、混ぜ合わせたりして形を変えれば受け取り易いのではないかなと」



「え? お肉を……粉々に……? それって美味しいのかな?」



「=うん。想像がつかない……。うん」



「あの、元の肉がどのようなものかにもよるとは思いますが……大抵混ぜたり(まと)めたりしてしまえば、何とかなると思います……」



「なるほどね、それじゃあ兄ちゃん、……これ! 食べてみてよ!」



「=うん。ご賞味ください。うん」





そう言って、戸棚から菓子類を詰めていたオリヴァレスティはその手を止め、下に置かれていた別の袋からメノミウスの肉を取り出し、差し出した。



目の前に突き出された肉。

一口(サイズ)に切り纏められているとはいえ、その若干青みがかった断面と鼻腔を刺激する臭いが、私の……食欲を実食する前から、半減させた。





「それじゃあ……」





私は恐る恐る噛みしめる。

一度口にすれば、食感その他諸々が判明する。



……恐らくこれは、牛肉のそれに似ているようだ。



そこまでくれば、(のち)猜疑心(さいぎしん)は崩れ、拍子(ひょうし)に沿って進んでいく。





「────そうですね。思ってたより、味は悪くないと思います」



「ほんと!? 兄ちゃんは大丈夫なんだね!」



「=うん。よし。抗体があるようだ。うん」



「抗体……? それは……」



「うん! メノミウスの肉には、魔素が大量に含まれてて、魔術に対する適性がない人が口にしたら、拒絶反応が出ちゃうんだよね!」



「=うん。だいたい半分。うん」



「つまり、メノミウスの肉をもって食糧難を解決するには、魔術適性がある人でないと……」



「それは大丈夫! もちろん、加工方法はちゃんとある!」



「=うん。外部的に抗体を生成させれば事足りる。うん」



「そうですか────って、待ってください、今気づきました」



「?」



「それって、この結果は()()ということですか……?」



「まあ、抗体がなくても、吐くくらいだしね!」



「=うん。極めて軽度な被害、味を楽しむには許容範囲。うん」



「ええ……」





にっこりと笑いながら、作業を再開するオリヴァレスティ。

下手すれば腹を(くだ)していた後付けの宣告に、彼女がとても恐ろしく映った。





・・・・・・





「お疲れ様」



「うん! 終わり終わり! ふー!これで後は安心だ!」



「=うん。ながたびながたび。うん」





詰め込み作業も終わりが見え、オリヴァレスティは袋を閉じる。

そうしている間に扉が開き、中から人影が映し出される。



真っ先に目にした、とある人影の正体。

アンの手には、液体の入れられた瓶のようなものが握られていた。





《奥の間》





「お待たせ! オリヴァレスティお姉ちゃん! オネスティさん! 抽出終わったよ! ……あは!」



「その手にしているのが……」



「そう! これこそが! 魔術適性を調べる優れものー! ……あは!」





ア号姉妹が全員揃い、拠点に(そな)わった椅子やら何やらに座る。

さすれば、次第と元の位置へ戻っていく。



そして。

扉の中からファブリカが顔を見せる。



最後に出てきた彼女の手には、何やら彼女のものとは異なる杖があった。





「オリヴァレスティー詰め終わったー?」



「うん! 終わったよ!」



「=うん。それが。うん」



「うんうんー! オネスティーくんにあげるやつね!」





魔術適性を調べる内容物を保持した瓶。

そして、空中を浮遊し高速で移動することが可能な杖。

その二物が、机の上に置かれる。



これを使えるか否か。

アンが携えた「瓶」その内容物の結果によって……私の今後が定まる。



つまり今が、重要な分岐点なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ