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081.拠点/奥間


「まー、再生成を繰り返すならー、精巧の度合いは低下するよねー!」



「兄ちゃんが目標を手にしたところで、集合地点に戻ろうかな!」



「=うん。向こうも終わったみたいだしね。うん」





視線を向けるオリヴァレスティ……。

そこには、鮮明に、ア号姉妹が映っていた。





「お疲れ様! あそこに行く前に、合流出来ちゃったね! ……あは!」



「順調だよねぇ。だけど、驚いたよねぇ」



「……ま、回収作業中に突然人型が現れたのは驚いたナ」



「……そうデスね。あれは、ファブリカさんの魔術なのデス?」



「そうだよー! 怖くなかったー?」



「怖くないぜェ! むしろ、素早い作業に感心したぜェ!」



「それは良かったよー、ねー! オリヴァレスティー?」



「ゔ」





身構え、不満げな表情を見せながら……。

ファブリカの口を抑えにいく、オリヴァレスティ。



それを(かわ)し、笑みを浮かべるファブリカ。



ア号姉妹の全員がメノミウスの頭部周辺に集まり、合流となった現状にて……アンは正確に、口から肉を取りだした。





「オリヴァレスティお姉ちゃん! これあげるから元気だして! 帰ったらまだまだあるから、楽しみにしててね! ……あは!」



「……うう、ありがとう」



「=うん。早く帰りたい……。うん」





取り出されていた「保管物」をアンから受け取ったオリヴァレスティは、躊躇(ためら)うことなどなく、一口(サイズ)の肉を放り込んだ。





「ふんふんふん……、あー、美味しい……」



「=うん。楽しみにしてるね。うん」



「良かった! じゃあそろそろ時間だから……帰ろうか! ……あは!」



「だよねぇ。保持空間、そろそろこの空間の入口が閉じちゃうもんねぇ」



「……ま、この陸地が無くなると、水が流入するナ」



「メノミウスの復活だぜェ!」



「……そうデスね。早く拠点に帰還した方がいいデス。それに、スナホリクンが待っているデスから……」



「うん! 早くご飯をあげないと! ……貯蓄も出来たし、後は無事にここから出られるか、だね! ……あは!」





スナホリクン……カブトガニの形をした何か。

彼女達が回収した「メノミウスの卵」が、その子のご飯、らしい。





「それじゃ! ファブリカお姉ちゃん! オリヴァレスティお姉ちゃん! オネスティさん! 衝撃に備えてね! ……あは!」





再び、記憶に新しい円陣を形成させるア号姉妹。

全員が向かいになって輪を作るために両手を使用しなければならず、私はエミリーの助言を元に、地に「骨」を置いた。



腕を組み、中心に向かって視線を据えながら……。

ア号姉妹の目を見れば、次第にそれらは光沢を強める。



色彩豊かな円を捉えると。

今度は、円陣中央に五色が混在する光源が形成された。



彼女達の光彩から滲みだした光の糸が重なり……。

それが形を強め大きくさせていくと、空間が歪む。



紙を勢いよく丸めたような圧縮的な音が発生するや否や、眩い光は、空間内を駆けるように炸裂し────私の視界を包み込んだ。





〜・〜・〜・〜・〜・





私はいつの間にか閉じていた目を開ける。

……開かれた視界に真っ先に映りこんだのは、(まさ)しく、多数の蔵書が展開された「中世的様式(ゴシック)の空間」であった。



《拠点》



床を見れば、そこには先程まで手にしていた「メノミウスの骨」が置かれており、移動が完了したことを知る。



だが、その下部の視線の先。

少しばかりの上方に「異形」を捉える。



水溜まりの存在。

私は……思い出す。



十二本の足首から生成された五人は、最後に人間の形に戻り、手を振る。

下部から次第に元に戻っていくために、口だけが鼻や目より先に確認出来た。



口元から判別した笑顔に塗れた全体像に、手を振り返した。





「大成功! こうも順調だと怖いね! ……あは!」



「……お、おーいアンー……? 私たちのことを見てそれ言ってる?!」



「=うん。何か引っかかってるんだけど。うん」





何故か上から聞こえたオリヴァレスティの声に気づき。

私は、音源を辿って、視線を向ける。



(……な)



自らの視界に映りこんだもの。

それはオリヴァレスティ、ファブリカが、拠点の天井に突き出ていた吊り具(フック)のようなものに身体を吊るされている状況であった。





「ファブリカさん……オリヴァレスティさん……」



「ファブリカさん……オリヴァレスティさん……。じゃないよ! 兄ちゃん! 早く助けてよ?!」



「=うん。浮遊感。うん」



「オネスティーくんお願いー! あそこにあるー、メノミウスの骨を立てて置いてー」



「分かりました。……はい、お願いします」





置かれていた骨を両手で持ち上げ、天井に向けて立てる。

支柱となった骨は、吊るされ身動きの取れなくなっている二人に届き、彼女達はそれを元に「自力で」脱出した。





「ふー、たまには吊るされるのも悪くないかなー」



「何を言ってるのさ……ファブリカ……やい! アンもといア号姉妹ちゃん達! これは一体なん────」





走り出したアンは、戸棚から菓子類と袋を持ち出す。

先程オリヴァレスティが美味しそうに頬張っていた菓子だ。



……それを手にしながら、取り囲む。





「オリヴァレスティお姉ちゃん! これどうぞ! ……あは!」





アンからの施しを受け取ると……。

取り囲んでいた姉妹は、口から保管していたメノミウスの肉を取りだし。

早々と、取り残すこと許さず、袋に詰めていく。





「……おお」



「=うん。ここは……夢か……。うん」





皿の上の菓子を幸せそうに頬張る。

詰められた肉を受け取るオリヴァレスティ。



その様子は、まるで、餌付けをされているようである。



小さな円陣から抜けたアンは、小さく頷きながら。

光景を見守る、ファブリカの元へと向かう。





「……ごめんなさいファブリカお姉ちゃん。なかなか調節が難しくて、これからも精度を上げるように頑張るから! ……あは!」



「いいんだよー! 私はア号姉妹にー、あんな感じでオリヴァレスティに接してもらって助かってるしねー。ありがとうー! ……ああ、そうだー。そういえば団長から……」



「あれだね! ……オネスティさん! これからあたし達、体液を抽出するから、待ってて!」



「……はい。ちなみにオリヴァレスティさんは」



「任せたよー、オネスティーくん!」



「え」



「じゃーみんなー! その骨を持って、作業に取り掛かるよ! ファブリカお姉ちゃんが手伝ってくれるからね! ……あは!」



「効率が上がって助かるだよねぇ」



「ファブリカさん! よろしくだぜェ!」



「……ま、楽しみだナ」



「……そうデスね。頑張るデス」



「え、その、私……は」



「オリヴァレスティお姉ちゃんは、戸棚にあるお菓子を好きなだけ持って行っていいから! オネスティさんと一緒に出発の準備をお願い! ……あは!」



「あんまりー、食べすぎるんじゃないぞー? オネスティー頼んだよー」



「……分かりました」



「ぐぬぬ……兄ちゃん。貴様もあちら側……か」



「=うん。監視されてる……。うん」



「それじゃあ行ってくるね! オリヴァレスティお姉ちゃん! オネスティさん!」


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