078.体内/運搬
「……そうデスね。回収物が増えたのなら、私達が回収に専念してもいいと思うデス」
「だよねぇ。となると、ファブリカさんとオリヴァレスティさん、オネスティさんは体液の採集に向かってもらうだよねぇ」
「だね! そうしたら皆さん! 首の断面から見えるメノミウスの骨を取り出してきて! ……あは!」
「骨髄に存在する液体をー、骨を取り出すことによってー、回収し易くするのだねー! いいよー! ここに持ってくればいいのかなー」
「だね! ここに持ってきてくれさえすれば、あとは簡単! あたし達は卵の回収と、お肉をいくつか持っていくね! ……あは!」
「指針は定まったね! 私達は骨を、ア号姉妹ちゃん達は回収!」
「=うん。またここに戻ってくれば良さそう。うん」
・・・・・・
指針が定まる。
私を含むファブリカ、オリヴァレスティの目標とは、アンが切り落としたことによって断面が露になった高く聳え立つ首に残る「骨」の回収である。
それに対してア号姉妹は、当初から定まっていた「卵」の回収と、オリヴァレスティによって追加的に発生した「肉」の回収を五人で行うという。
いざ、これから二手に別れ、行動を行なうといったところで。
突如として新出した単語に、少しばかり違和感を覚えたのだ。
────体内に溜めれば沢山運べる。
この言葉は、アンによるものだ。
……そして疑問に思ったのも束の間。
同時的な情報が開示され、保持された外界の水量を見れば、背後で進行する存在に対しても、極めて自然的に意識が向く。
空間への入口が閉じ……。
内部に「水」が流入するのも時間の問題らしいとの報告があった。
それを思えば、私たちの今後。
今暫くすれば、当該空間から離脱することとなる現状にとって「行動」こそが最も重要な判断であり、その疑問かつ違和感の優先順位を自身の内なる判断により深々と下降させていたのだ。
「それじゃ! 行ってくるね! ……あは!」
「お互いに頑張ろうだよねぇ」
「……ま、よろしくだナ」
「またここでェ! 合流だぜェ!」
「……そうデスね。その時は、対比になりそうデスね」
極めて不可解な新出部分。
先立って岩陰から飛び出し、巨軀に向かいて進行するア号姉妹。
詳細について尋ねる機会を完全に失った。
私は、心に纏う靄を孕みながら、残された二人に視線を送る。
「ア号姉妹さん達は、どのように卵、それに肉を運ぶのでしょうか……。こう、見た限りですと、彼女達の大きさとの差が」
「それらしい疑問だねー。まあでもー、それはもうすぐ視覚情報からー、判明すると思うよー!」
「そうそう! ……ほら! もうあんな所に!」
「=うん。あ、始まったようだよ。うん」
私は目にした。
連結された身体の付け根に存在する膨らみ、それを喰らい、引きちぎり、拡大させた口をもって「卵」を飲み込む様を。
……それをしていたのは、アン、アイーダ、エーファ。
残りの二人、エルヴィラ、エミリーは……。
メノミウスの筋繊維を同様に分解しながら、柔肉を取り込んでいた。
まるで、倍速のように解体されていく様。
その様相により、私は、再び岩陰により視線を戻す。
「……腹に、溜めて、運ぶのですね」
卵の回収と、肉塊の回収。
このような光景を……彼女達のその姿。
確認したのが、これで二度目になるために、尚更だ。
────少女達の食事光景。
ア号姉妹が言っていた運搬方法即ち……。
体内器官に肉塊を保存し、運搬するという。
それが口から入り、中に溜まるというのだから……私には、それがどうしても、食事のように思えて仕方がないのだ。




