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077.帰着/肉塊


「お待たせ! ……あは!」



「お疲れだよねぇ」



「やったなァ! アン! 今回も綺麗にやってくれたおかげで、あとの作業が(はかど)るぜェ!」



「……そうデスね。無駄にしないためにも、素早いか作業が必要デスね」



「……ま、そうしないとまた再生成して、同じことの繰り返しになりかねないからナ」



「……再生成、もしかしてメノミウスは」





エマの攻撃から発せられた衝撃。

こちらへと向かい、被害を伝えることは……なかった。



だが、その分発生した(エネルギー)はメノミウスの体内に伝達される。

避けられぬ波動として、縦横無尽に駆け巡った。



落ちる頭部、足を付ける少女。

同一の面にて存在する二つの存在の後方を見れば……。

統合部分が、明るく切り落とされた、ある種の残留物が映る。



その様相(ようそう)を見れば、非衝撃の華麗なる一撃。

そこから発生した総量は、メノミウスの身体で顕現(けんげん)されたのだと理解出来た。



無数の身体に連結された一つの頭部。

切り落とされ、既に存在しない統合部分の後端(こうたん)は、度重なる攻撃……内部からの激震により、原型を留めておらず、言うなればそれは、ただの肉塊と遜色のない存在へと変化していたのだ。



しかし、再生成となれば。

あの物体が、未だ「メノミウス」として認識されている事になる。





「あれで、何回目だろうね! ……あは!」



「覚えてないんだよねぇ」



「……ま、それだけ戦ってきたってことだナ」



「……そうデスね。そのおかげで情報を多数に得られたデス」



「ッてこたァ! また戦えるってことだぜェ! 今回はアンに最後の一撃を譲ったがァ、次回にも期待できるんだぜェ!」



「うんうんー! ア号姉妹がー、メノミウスに精通しているのはー、度重なる再生成……無限に復元され続ける生物にー、退治し続けているからなんだよねー!」



「そう! だから蓄積された経験、情報に勝るものはない! メノミウスに関わることは、ア号姉妹ちゃん達じゃないとダメなんだよ!」



「=うん。感謝感激。うん」





一つの頭部に連結された六つの身体。

残ったのは無惨に潰された後部。



目にしたメノミウスの姿を臨みながら再度。

共に岩陰にて隠れていた皆の方に、目をやる。



すると、私がそちらを視界に捉えたと同時に……。

まるで、示し合わせたように、顔を見合わせた。





「……じゃあー。さっそくー」



「回収かな!」



「=うん。体液採取と卵回収。うん」





その状況が広がるなり、静寂が展開される。

それは、一様に目標体を臨んでいた影響によるものだ。



貼り付けられた状況。

織り交ぜられた感覚。

なぜだか(みな)の考えている事が分かったような気がしたのだ。





「……では」





顔を見合わせながら……。

延々と時間が過ぎてしまうような気がしたので、改変を求める。



つまるところ、そうなのだ。

いくら考えが分かるからと言っても、口に出さない事には始まらない。





「これから、行動に移るのですね」





……なので、私は発生した静寂を切り裂くように言葉を切り出したのだ。



静寂を掻き消し告げた後。

(みな)は辺りを見渡すなり、誰かが特に指示をした訳では無いが。

極めて自然と、端正なる円を作っていた。



私の言葉が今後へと向かう一つの区切りとなり、八人が岩陰により円となり、肉塊について議論を行う様は悠久なる時を連想させる。



私は、いつの間にか始まった一種の「会議」によって形成された円から目を外し、話の話題そのものであるメノミウスを見る。



────ただの肉塊。



ファブリカやオリヴァレスティ。

ア号姉妹達による忌憚(きたん)のない会話を耳にした後にそれを見れば、元の姿がどのようなものであったかを容易に想像することが難しくなった。





「……あそこに膨らんで見えるのが、卵がある所だね! ……あは!」



「身体の繋ぎ目にあるやつかな!」



「=うん。沢山あるね。うん」



「そして! 首から繋がる骨、骨髄に染みる体液が、オネスティさんに必要なものだよ! ……あは!」



「採取したら、拠点で調査だなァ! ぐへへェ……」



「?」



「……ま、今回は卵の回収と、体液採集の二つの目的があるからナ。素早い動作のためには、役割分担を明確にした方がいいナ」



「……そうデスね。そろそろお時間デスね」



「もう溺れるのは嫌だよねぇ……」



「うんうんー! もうーそんな時間なんだーねー」



「うん! あたし達が保持して入った入口がそろそろ閉じちゃう! 早くしないとここに上の水が流れ込んでくる……あは!」



「もし……遅れたら……」



「……溺れるデス」



「ええ……」



「それとだねぇ。今はあんな姿のメノミウスは、その水を得ることによって、復活を始めるんだよねぇ」



「え」



「その通り! 水はメノミウスにとって回復剤なんだ! 完全に復活したら、また戦えばいいんだよね! ……あは!」



「そうだぜェ! 水さえあれば元に戻る生き物……無限大の活用が出来るぜェ!」



「え、じゃあお肉も無限?」



「=うん。どれだけ食べても無限生成。うん」



『え』



「そっか……お肉、そうだね! そうだ! メノミウスのお肉も持ち帰れば、何かに使えるかもしれない! ……あは! そっか……そういう考え方もあるんだね」





(すごい感心している)





「こらーオリヴァレスティー、ア号姉妹のーお仕事をー増やすんじゃーないぞー?」



「……うぁ。確かに私じゃー持ち帰れないけどー……!」





オリヴァレスティは、その場でメノミウスに向かって指を向ける。





「食べたいじゃん!!」



「=うん。戦闘時における保存食としても有用の可能性。うん」





頭を抱えるファブリカ。

腰に手を当て満足そうなオリヴァレスティ。

真剣に考え込むアン。



……それらを見ながら苦笑いをする姉妹達。

私はその様子を見て、若干表情を柔らかくさせた。





「……うん! 大丈夫! あたし達の体内に溜めておけば、沢山運べるしね! ……あは!」



「ん?」



「じゃあ、そんなわけで! 体液採集と卵の回収……それとお肉。役割分担をしたいね! ……あは!」


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