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075.炸裂/変化


埋め込み式。

その言葉の為に、後方の注意を逸らし続けていた。

だが、それも時が経ち「熟成」とともに確立する。



ア号姉妹に連れられ岩陰に潜り込むと、単一のメノミウスを発見する。



後方で作業をしていたアンは飛び出して、こちらへと向かう。

空を飛ぶファブリカ、オリヴァレスティは地に降り、合流する。





「……よしー、これでーあとはーアンの帰りを待つだけだねー!」



「あ、来たみたい!」



「=うん。埋め込み式、正常に作動したみたいだね。うん」





私はそれを聞くなり、メノミウスの後端(こうたん)を見た。

すると、よく見れば点灯し続けている後方部の一点を確認することが出来た。



(あれが埋め込み式……あっ)



先程までの大きさよりも一回り大きくなったそれは……。

明確かつ時が経つにつれて成長している。



色も記憶に新しい「紅色」に染まり、その点滅……点灯する光源で辺り一面とまではいかないが、集まった光は今にも(こぼ)れそうであった。



────すると。



等間隔をもって点灯し続けていた……光が一瞬。

清々なるが如くに、輝く事を辞めた。





「……どかん」





オリヴァレスティがそんな事を呟いたのと同時に、輝く事を諦めた光源は一点に凝縮し、一気に「爆発」という形でメノミウスの後部から放出された。



今は辺り一面と言っていいほどの(エネルギー)が爆散し、今までのとは比べ物にならない程の光が、空間内を満たすように……照らした。



『炸裂音』



放出された際に顕現した紅い光。

何本にも連なり飛び出し、壁に突き刺さっている。



壁に吸い寄せられた紅光(べにこう)の線達。

それは、まるで本当の地下の天井を支える柱の様にも見えた。



放たれた柱は一旦、メノミウスの中で集まり、後に散開。

より細かくなった柱の一つ一つが「蜘蛛の巣」のように……。

天井や壁に衝突して、辺りを照らしている。



文献に見た恒星による星空を連想させる光景。

実際には存在していない虚実(きょじつ)の滴汗。

感じ、それを(ぬぐ)いながら言葉も滴り落ちていく。



(……綺麗だ)



爆散し、光り輝く星空の様に感じたそれら。

確認するや、私自身が吸い込まれていくような感覚に陥った。



無数の紅が辺り一面に広がった時。

全ての残響が瞬時として消えた。



岩陰に隠れながらそれを確認した私は、目を凝らす。

何故なら、拡散した紅が消えた後……。

それを追う形で、爆風が一気に押し寄せてきたからである。



メノミウスに付与されている埋め込み式魔術、それを展開させたアン。

岩陰にて潜み、経過を見守っていた中。

起爆後瞬時に発生した閃光によって、目標を見失ってしまった。



しかも、そのすぐあとに、高温の爆風が襲ってきたのなら尚更だ。



(……いるか?)



爆風が目に当たらない様に。

それこそ反射的に目を細めながら。

先程までメノミウスが沈黙していた場所に注力する。



そうしている間に。

発生し続けていた爆風が和らぎ始め……。

瞼に余計な神経を使わなくても良くなった。



となると、無理に目を凝らす必要はなく。

私は改めて、若干煙が立ち込めている「一番色が深い場所」に注目した。



メノミウスに埋め込まれたという魔術が発動したことによって、あれだけの光や衝撃、爆風が起きたということは……それを受けた対象物から何らかの煙が出ていても、一切不参入的なる疑問はないだろう。



胸に抱いた実感を頼りにしながら、残り香や余韻のように立ち込めている煙を見てみると、煙の量が他とは異なる場所を一箇所確認できたので、そこに目標がいると、心奥底、心静か密かに仮定した。



……煙が、晴れ始める。



煙幕は徐々に薄くなってゆく。

ついには、煙の中心部……一番濃い場所さえも薄くした。



(……あれは)



変わり果てた、歪なる姿を見た。



────不可解なる体躯。



残りの人員の合流の後、辺りに甲高い音が響いた。

その音は埋め込み式魔術による攻撃から発せられたものである。



そう判別出来たのは音の情報だけではなく。

視覚情報に刻まれた「後部の損失」が影響している。



……後部の損失。

埋め込み式魔術という攻撃手段の実行により。

大地は激震し、爆風にも似た風圧に吹き飛ばされそうになる。



私が目を細めながら、やっと目にした光景。

それは、メノミウスの身体半分が喪失している現状であった。



準備に時間を要する為か、比例して威力が強いことを物語っており、発生した炸裂影響と周辺環境が掛け合わされて、後端は原型を留めていなかった。



まるで鈍器の攻撃を受けたかのような喪失最端面は、若干厚みのある果実の皮を捲らせたように鮮明に……大いに割れている。



────だが、それにしても、メノミウスに動きがない。



一瞥した限りでは、対象はかなりの重症である。

体の後端からは血が滴り落ちており、後方部は丸ごと足を残し、吹き飛んでしまっているので、その姿を見ると瀕死の様にも見えた。



さらに岩陰にて潜み、離れた距離であっても判別出来るほどの息遣い。

それは紛うことなく乱れ、荒く、とても息苦しそうである。



最初こそ一瞬動きはあったものの……。

その後、音沙汰無くなり、その場から一歩も動こうとしない。



(な……)



合流し、炸裂した埋め込み式魔術による爆風を岩陰にて臨んでいた「アン」は、メノミウスの姿を確認するなり、飛び出した。


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