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074.阻止/熟成


立ち上った全ての煙が晴れ、全体像が把握出来るようになると……。

未知数のままであった「頭部」が明らかとなる。



私は見過ごしていた。

あれ程の攻撃を受けて、複数であれ単一であれ、生物であれば何らかの行動。

つまりは、反撃に移ろうと脳裏のどこかで思わない(はず)もない。



その危険性に気づかないまま、魔術槍の命中を安心と期待のままに臨んでいた私は、(またた)く間に変化していく「姿」に焦りを(あらわ)にさせる。



上空の彼女達による無数の傷。

そして、効果についてを重視しており、気を取られていた。



メノミウスはそれを直感的に感じ取ったか。

足元で(たむろ)している「二人組」を捉える寸前。

周辺に目標を定め、頭部を前方から一転し……。

下部へと振り向かせようとしていた。



ほんの少しで、メノミウスの視界にア号姉妹が入るという時点。

私は、それに気づき、背筋を凍らせる。



今なら間に合う、私のみが(わず)かな変化に気づいてしまっているこの状況。

自身の目の前で、彼女達の元へと厄災(やくさい)が振りかかろうとしている瞬間。

その短絡的なる流れの進行(すなわ)ち、計画の破綻を意味していた。





「ア号姉妹さんっ! 離れてくださいっ!」





私は飛び出し、声を上げる。

未充填である魔術槍は無視して、腰に引っ提げた伸縮自在の刺突剣(ヴァシュロン)を抜く。



(なか)ば同時進行的に勢い良く腕を伸ばし……。

踏み出した加速力を活かして強く、そして、遠くまで伸縮させた。



────彼女達に攻撃が届く前に。



メノミウスが彼女達を確実に視認し、反撃へと至らせる前に刺突剣を辿り着かせねばならず、私はその後のことなど考えずに、一心不乱のまま飛び出した。



((間に合えッ……!))



当初の計画に従って魔術槍を放てばそれで良いのだが。

如何(いかん)せん装填もとい充填が未成(みせい)であり、「再充填(リロード)」が必要だ。



つまりは不徳(ふとく)を軌道修正する為に、私は限りなく伸ばした刺突剣を保持したまま奴の懐に潜り込み、その振り向こうとする行動を阻止する必要がある。



今にも下方に振り下そうとしているメノミウスの動向を逃さない様にしながら視界を固定し、駆け出したその先で────刺突剣を突き刺した。



強い筋繊維、激しい反発。

大いなる弾力性は突き刺した剣先を曲げ……。

その反動に私は押し戻されそうになる。



その反応に暗い予兆を覚え、今度は逆方向に(つか)を向かわせ、引き抜かせる。



栓抜きが綺麗に活躍した時に発生させる「音」を腕に感じながら。

刺突剣を大いに纏わせるが如く収縮(しゅうしゅく)させる。



メノミウスを視界に固定し飛び出した後。

目前となった所で、再び剣を構える。



収縮された刺突剣と共に。

握りしめた柄をメノミウスの軌道線上に構え……。

鞭の如く勢いで足元から振り上げる。



さすればア号姉妹のすぐ傍、振り上げた刺突剣に沿って……。

目標体に、強烈なる一筋の「線」が入る。



微かな線が確認出来た後。

その色彩を持たない線から先導する様に鮮血が溢れ出し、無色彩を存在もって、それを新たなる有色彩の線とした。



振り上げた後の線から、地上は赤一面に変貌している。

私が目にした視界の光景は、まさに血の雨である。



辺り一面に降り注ぐ上部からの大雨。

苦しい巨体生命の息吹(いぶき)を感じることが出来たのだ。





「────埋め込み式! 準備出来たよ! ……あは!」





遥か後部に退避したアン。

彼女の上空にて出現した煙球……赤の信号。



────刹那、後方から冴え渡る鮮声が響き渡る。



その事前情報(パターン)から彼女の言葉の意味を固定させ、間一髪なる反撃阻止を敢行した状態から、その身を収縮的に運動させる。





「オネスティさん。早く退避するだよねぇ」





告げられた避難勧告に従い。

足早にてメノミウスから脱兎の如く勢いにて離れる。



上空にて退避するファブリカとオリヴァレスティを目にして。

私は、一種の安心感なる異物を密かに抱く。



そして、先行するア号姉妹の進行が止まるなり……。

振り返るようにして、アンに視線を送る。


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