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069.偵察/落下


「戻りました」





駆け足で反転後にて辿り着き、若干上がった息を整えた後。私は満を持して、重き顔を上げる。





「お疲れー! どうだったー?」



「そうですね、外観だけ見れば一つの穴でしたが、中を覗いてみれば、何層もの輪が連なる『連続的な落差』を感じることが出来ました。……それと」





燦々(キラキラ)と目を輝かせて……。まるで、新しい玩具を見つけた子供のように集まり始めた彼女達。その劇場にも似た構図に驚きながらも。私は包み隠さず、捉えた光景を口にすることにした。





「一つの頭部に連結された六つの身体。そんな生物が穴の中にいました」



「間違いないねー」



「だね! その間違えようにもない特徴、メノミウスだね!」



「=うん。こわい。うん」



「でも変だよ! 穴が段階的に大きくなってたり! 穴を覗いてすぐにメノミウスが見えるなんて……あは!」



「……ま、確かに。普段とは違うところがあるナ」



「大丈夫かァ?」



「……そうデスね。オネスティさん。そのメノミウスは『動いて』いたのデスか?」



「……いえ、動いていない……というより。止まっている、といった方が、より正確ですね」



「うーん。そこに降りなきゃ攻撃できない環境がそのままなら……あは」



「……あそこに、降りるのですか?」





私はアンが唐突に、呟いた新事実に対して被せるようにして尋ねる。





「あ、うん! 降りないと、攻撃が出来ないんだ! ……ってまた言ってなかったね! ……あは!」



「あははー、オネスティーくん。知ってしまったねー! この先に訪れるー、事実というものをー」



「……ええ。ファブリカさん。何となく分かってきましたよ。こう何度も同じことがあれば、ですけど」



「察しがいいんだね! 兄ちゃん! で、その事実とは……」



「=うん。じゃかじゃかじゃかじゃかじゃか……。うん」



『じゃん!』



「落下ー!」



「え」





オリヴァレスティもといオービスから始まった弾性的連続音(ドラムロール)のような音声。そしてア号姉妹まで繋がったその連結は……。彼女達の合同作業によって、区切りを見せる。彼女達によって放たれた区切りの良い音声の後。ファブリカはその口で。予想をしていた「事実」を誇ったような表情にて溢れさせる。





「……分かりました。何か異常があったにせよ、どちらにしても、主場へ向かうことが必要ということですね」



「そーいうことー!飲み込みが早い子はー好きだよー! じゃあーみんなー。懸念要素が解消されたことでー、早速大穴へと向かいー、落下しちゃおっかー!」





予定調和にも似て、次なる事柄が決まる。大穴への進行は、隠されていた「落下」が必須条件であるとこの状況にて明らかになるが、これもまたいつもの事であると思い始めていることに対し、()()の敗北感を溢れんばかりに忍ばせ、抱く。そして、大穴へと向かって足を進ませた辺りにて。ファブリカが軽々(サラリ)と口にしていた「懸念要素」というものが私自身を指したものであることに遅ればせながら気づき、この短期間の間で二度も負の感情を抱くことになるとは思ってもいなかった。



メノミウス。一つの頭部に連結された六つの身体。その容姿は芋虫のようであり、不確定要素を大いに孕んだ状態にて沈黙を保ち、息を呑むかのように静止している。そんな生物が穴の中に存在しているのにも関わらず。穴から穴へと進行を続けるといった事実。私としては、この先に訪れる結果に対して。……「墓穴」を掘ることがないように行動せねばならない。



つまりは……いざ歩みを進め、全員で先程偵察した地点に立ち、足を踏み入れようとしている、このような状況において。同様の行動を取らないこと即ち、信頼を転落させることに繋がる。私は彼女達の決定に異議を唱えることなく、それに従う形にて、「無害無益」の心象を心掛け、その他伝播(でんぱん)される事象に対する実行に至ることが、極めて先決なる取り決めであると考えられるのだ。



────さあー! 行こっかー!


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