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063.奥間/菓子


「メノミウス……先程口にしたものが……。確かそのような名前で……」



「そう! あたし達にとってメノミウスは大好物! それを狩る、となったらあたし達達を呼ばないで誰を呼ぶ! 誰もいない! 天才か! ってね! ……あは!」



「……ま、また卵回収出来るならいいけどナ」



「楽しみだぜェ! 戦闘も、回収も!」



「だよねぇ。大好物だよねぇ」



「つまりー! ア号姉妹に私とオリヴァレスティ、そしてオネスティーくんでー、これから体液採集兼卵回収に向かおうと思うんだー! だけどーメノミウスさんがまだ活動時間じゃないからー少しだけー『待ち』になったということだねー!」



「なるほど……それで、寝るのですね」



「体力を回復させるには、寝るのが一番だからね!」



「=うん。働く、疲れた、それがいいよ。うん」



「じゃあ、あたし達がいつも使ってる部屋に行こうよ!」





オリヴァレスティは長食台(カウンター)の上に置かれていた食材を食べ終える。さすれば、腹を二回程(さす)り、飛び上がる。熱膨張によって凸状に膨らんだ部分が元に戻る際の音。破裂的かつ衝撃的な音が響くと、彼女は何食わぬ顔で首を傾げる。





「兄ちゃんどしたの?」



「……その、音についてです」



「=うん。これは胃に食物を溜めて……うん」



「つまり、圧縮したの! お腹いっぱいだったから、動けるようにね!」





中身を飛び上がることによって圧縮し、容量を確保したということだろうか。確かに、胃の中が埋まった状態では即座に動けそうにもない。





「よしー! じゃー待ち時間を有効活用するためにー、皆が用意してくれた場所に向かおー!」



「おー!」



「=うん。ね、む、い。うん」



「……ま、回復だナ」



「食べたら寝る、最高だぜェ!」



「だよねぇ。この世の幸せだよねぇ」



「……そうデスね。落ち着けるところ、必要デス」



「うん! じゃあファブリカお姉ちゃん! オリヴァレスティお姉ちゃん! 行こっか! ……もちろん、オネスティさんも、だよ! ……あは!」





紆余曲折を経て辿り着いた拠点内部に目立った違和感はなく……(かえ)って清々しいほど一般的な内装に、安心感を増幅させる。オリヴァレスティが食材を平らげたことを皮切りに。ファブリカは「休憩場所」を目指し、案内する。彼女が示したのは、長食台の先に存在していた縦型の扉であり……。私は、その先に新たな空間が広がっているのだろうと予測した。



《奥の間》



アンが先導し、ファブリカ、オリヴァレスティ、そして残りの姉妹の順に開かれた扉を抜けて行き、それに続いて私もその身を(ねじ)込める。枠に腕をぶつけてしまわないようにと注意しながらその先を抜けると、そこにはこれまた何の変哲もない「部屋』が広がっていた。だが、それは内装に限ったことであり……。その……色は、なかなか見ないものであった。





「おーい帰ったよースナホリクンー……あは!」



(スナホリクン?)



「さァ! 出て来いだぜェ! スナホリィ!」





唐突に駆け抜けるそんな言葉。そして訪れたその光景に、私は、目を丸くさせる。





「な、何しているのです?」



「カブトガニのまね! ……あは!」



「……ま、ここは私達が作り出したものだからナ」



「……そうデスね。この子がいないと寂しいデス」



「そうですか……」



(……カブトガニって……え)





黄色でも足してみたいと思える程に、濃緑色で彩られた壁。その空間内に存在している木で出来た机や椅子などの家具類を目にする。辺り一面が緑色で彩られている部屋。その特異なる彩色に驚くのも束の間。ア号姉妹全員が部屋に入るなり……。床に丸まっている、奇妙な光景を目にする。



彼女達が口を揃えて話題にした「カブトガニ」というものが皆の行動により現れ、エミリーの元へとしがみついた。その姿は文献に記載されていた通りの形状をしており、この生き物が太古より生きていたという歴史が、これをもって改定されることになった。太古より以前から形が変わっていない。そう考えると、可愛げすらある……が、水は必要でないのだろうか。





「この子……スナホリクンと言うのですね。ご飯は何を?」



「ご飯はね! みんなと一緒! メノミウスの卵!」



「……ま、正確に言うと、この子に食べさせるためってのもあって討伐したいんだよナ」



「……そうデスね。可愛いデスからね」



「だよねぇ。この子のためなら、なんでもだよねぇ」



「こいつ! いつも無口だけど、嬉しい時はしっぽを揺らすんだぜェ!」





尾を揺らし、エミリーに張り付いているカブトガニ。そのような生物が、存在しているとは、思ってもいなかった。今までより目にしてきた生き物という生き物。それらが、私の知るものと異なるものであったために、尚更興味深い。





「あ! そうだ! 皆! お菓子! あるから食べて食べてー! ……あは!」





アンが喜々として大きな机を囲む。彼女が備え付けられていた椅子に全員を座らせると……。後ろにあった戸棚から、何やら幾つかの箱を持ち出した。


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