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054.展開/出発


《新拠点/基地内》





「ダルミ? いるか?」



「はい、おりますよ。申し訳ありませんですよ。へーネル団長。皆様が付近に迫っていることは把握していましたのですが、大変なことに……現在敵性反応を捕捉中でして、気が抜けなかったのですよ」



「いいや、問題ない。無事で良かった。……それでダルミ。どれほどだ?」



「つい先程。団長との通信可能距離が更新された時から、捕捉し続けているのですが……かなりの数ですよ。それに、今も尚増え続けていて、把握しきれませんよ」



「……位置は」



「位置は、ここから北方、帝国領の辺りです……恐らくあと(しばら)くで、ターマイト戦略騎士団と鉢合わせになります」



「なに……それはまずいな、一度恩情(なさけ)を受けている以上、見過ごすことは出来ない、か。了解だ……ダルミ、出れるか?」



「はい。問題ありませんよ。飛行時であれ探知は出来ますから、それに私の蓄積情報は、戦略を立てる上でも役立つと思いますよ」



「ということだ。ファブリカ、オリヴァレスティ、後の運びは任せる。予定としてはオネスティを拠点本部に連れて行って欲しい」



「りょうかいですー!」



「気をつけてね! 連絡はしてくれるの?」



「=うん。しんぱい。うん」



「ああ、落ち着き次第、伝達する。後はそれに従うように。……オネスティも、それで問題ないな?」



「いえ……でも、宜しいのですか? 皆さんの、その……人員を割いてもらって……これは有事では?」



「人数が多くなれば、それだけ目立ちやすい。それに、帝国であれなんであれ、君……という存在を少なからず安全地帯に送っておきたいと思うのは当然だろう? そのための……と考えてくれ」



「ファブリカさんと、オリヴァレスティさんが私の護衛、という訳ですね」



「ああ、そういったところだ。だからあまり気に病む必要もない。これは最も最善なる人選なのだ。それに既に向こうには連絡を入れてある。……気にせず行ってこい」



「そーゆーことー! 分かったら早く逃げるぞー」



「王国領とはいっても、まだ安心は出来ないからね!」



「=うん。みんな気をつけてね。うん」



「よし……そういうわけだ。私とダルミはターマイト戦略騎士団に、ファブリカ、オリヴァレスティ、オネスティは王国に……お互いに、最前を尽くそう」





ダルミは広げていた地図のようなものを纏める。そして、イラ・へーネルと共に新拠点を後にする。嵐が吹き荒れるようにして訪れた襲撃情報。トーピード魔導騎士団は二手に分かれ、異なる任務を実行することになった。





「へーネル団長にダルミさん……大丈夫ですかね」



「うーん。へーネル団長にしかー、私達の居場所が掴めないしー、ダルミがいればー、前みたいな奇襲を受けることもないと思うー!」



「へーネルさんにしか?」



「団長は脳の重複者だからねー! (あらかじ)め指定させた人間ならー、ある特定の範囲内で言葉を交わさずー、情報を伝達ー、共有することが出来るんだよー!」



「なるほど……」



「それにー! ダルミは耳重複だからー、空間把握も出来るしー、二人ならすぐお互いを掴めると思うー。私は目だけどー、まだ見えるところまでしか見えないしー……」



「はいはーい! それにそれに! 報告するって言ってたしね! 今は信じようよ!」



「=うん。任務遂行……。うん」



「そうですね。逆にお二人に失礼でした。私もファブリカさんやオリヴァレスティさんのように、任務遂行に尽力したいと思います」



「はーい。オネスティーくん、もう一回私と一緒に飛ぶー?」



「え」



「ファブリカ……? もしかしてあれを兄ちゃん……に? ええ……」



「=うん。はずかしい……。うん」



「ファブリカさん……?」



「えへへー、さーどうするー? 今までの事に目を瞑ってー、もう一度……」



「それは恥ずかしいよ……私が!」



「え」





私は、唐突なるオリヴァレスティの反応に、驚きを隠せないでいた。





「=うん。王国に行くなら誰かに見られてしまうかもしれないし……。うん」



「それならー! 杖を持ってないオネスティーくんをー、どうやって運ぶというのかなー?」



「そっそれは、ええっと……」



「=うん。私、わたしの……を使ってもいいけど。うん」



「きゃー! よく言えたね偉いねオリヴァレスティちゃん!」



「ちゃんは、やめてください。それに仕方がないことだからね。だって、団長の魔鳥さんはいないし……」



「もしかして……オリヴァレスティさん。二人で乗れるのですか?」



「=うん。あれ、言ってなかったっけ。うん」





なんと、魔鳥に乗らずとも。オリヴァレスティの杖に乗らせてもらえば良かったのだと気付かされる。





「まーせっかくー! オリヴァレスティがー、乗せてくれるって言ってくれてる事だしー! お言葉に甘えて……あーでも残念だなー。今回もオネスティーくんを運べると思ったのにー!」



「ファブリカは大胆」



「=うん。わくわく。うん」



「じゃ、早速。兄ちゃんには、ここに座ってもらおうかな!」





オリヴァレスティは、少しばかり自身の席を移動させる。そうすることにより、場所は確保されたのだ。





「……ありがとう。おお、すごい……さっきもそうだったけど、柔らかいですね」



「でしょ! 待機中のこの感触が堪らないんだよねー」



「=うん。さいこう。うん」



「ふーん、オネスティーくんはー、どっちの柔らかさがいいのかなー!」



「ファブリカさん……」



「もー! ファブリカ! そんなこと言ってると疲れて落ちちゃうんだからね!」



「=うん。早く行くよ。うん」



「それは嫌ですー。はいはいー行きましょー王国へー!」



「そうだね! 目的地はトーピード魔導騎士団本部。久々の帰還かな!」



「任務続きで、……ああ、早くご飯が食べたいー」



「それを今言わないでファブリカ……」



「=うん。お腹すいた。うん」



「同じく……」



「よしよしー! 十分にお腹も空いてきたことでー、早く行こーう!」



「はあ……」



「=うん。しゅっぱーつ。うん」





イラ・へーネルとダルミを見送り、後に新拠点から顔を出した我々は、それぞれの杖を展開した上で、上空へと向かう。こうして私とオリヴァレスティ……。そしてファブリカは大地から離れ、王国を目指し出発した。


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