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048.目的/情報


「……それって」



「なぜ、彼女がそれほどまでの力を保有しているのか。それは彼女の力の源が、異なる所から生まれたのだとすれば説明がつく。かつて伝説として伝わる大賢者は自分のみが魔術を使用できる理想郷を創り、子孫を残した。……いつしか、大賢者の血を引き継いだ『特異なる種』は時空越えという試練を越え、こちらの世界に戻って来るようになった。その者達を我々は帰還者と呼ぶ」



「────……」



「……故に大賢者から生み出された帰還者は、その特異な性質を持って現れることから大賢者の力を色濃く引き継いだ『純子孫』であると認識されている。それがために、帰還者である君という存在は……体内に眠る無尽蔵の活性機関の有用性から、誰もが望むものなのだよ」



「────私が、帰還……者? そ……そんな話、……そのような伝説のような話など、私は知りません。大賢者なんて聞いた事もありませんし、種だとか分かりませんよ……」



(まさか、私達の世界が本流ではなく、こちらが純然たる世界だというのか……? 彼女の説明ではそのようだが、(むし)ろ、この世界が創られた側であると認識をしていたのだが……)



「まあ無理もない。混乱するかもしれないが、事実だ。いずれは話す予定ではあったが、オリヴァレスティのやつ……あれほど注意をしろと言ったのに。……現に、君を保有している我々は帝国による攻撃を受けた状態において、君自身を自らの意思で行動出来るような状態にさせることが急務だと考える。……この情報は何としても秘匿しなければならない」



「こ……混乱はしていません。ですが、こんな所で……話をしていても大丈夫なのですか? どこに何がいるかも不明瞭でありますし」



「ここが王国所属であることを知りながら安心しないとは、察しがいいな。確かに、我々は全ての人間から君の情報を秘匿しなければならない。……よって、この空間での会話は記録されないように術式を展開済みだ」



「……そ、そうですか。ならいいのですけれど、……では、遠慮なく質問させていただきますと……なぜ私がこの世界のものではないと?」



「ああ、彼女が君のことを、一年も前から……王国を巻き込んでまで、気にかけていたからな」



「それは……どういうことです?」



「……そうだ、ところでオネスティ。特能と重複について知っていることはあるか?」



「いえ……?」



「そうか……。ならば、まずはそこから説明しよう」



「……はい」





知っている。知られていた。私がこの世界の者ではないことを。そう知った上で、彼女は、彼女達は話をしていたのか。霧だ。私は霧のように消えた。現代に残された最大の謎……最後の魔術とは、試練。あの世界からこちらの世界へ移動するための過程。……それを越え、異界渡りをした帰還者。本当の世界……この世界の人間の共通認識。私が生きてきた「あの世界」こそが大賢者の作り出したものであり、こちらの世界が、世界を作り出した創造主の世界だというのか。





「彼女……ネメシスを例に出すと────」



「ちょ、ちょっと待ってください」





何故だ。私は、なぜ今。その言葉をイラ・へーネルという人物の口から、聞いているのだろう。……ネメシス。それは機関の実行計画に存在した志願者(コード)だ。秘匿された情報を……名前として、使用しているのか。





「ネメシスと言いました? もしかして彼女……先程の話に出てきたのは、黒く伸びた髪の先が白色の女性ですか?」



「……ああ、その通りだ。帝国に情報が漏れ、襲撃にあった以上、仕方無い。……実は……ネメシス。そう彼女から、君についての情報を受け取り、その身を保護、今に至る」



「全部知って……たってことですか?」



「そうなるな、私は彼女との交渉時に、君の存在を知り、以後君が現れるその時に備えていた。そして、存在が調査中であったオリヴァレスティによって判明すると、拠点であるラムダ山へとあくまで自然に引き込み、偶然の装いとして我々トーピード魔導騎士団が保護する形を取り……今に至るな」



「彼女が、私を……そうだ、先遣隊……他の帰還者の情報は」



「あいにく、私が知り得た情報は、ネメシスによってもたらされたものだ。それ以外は……分からない」



「そうですか……今、その……ネメシスはどこにいるのですか?」





彼女は、基地内に存在している画面(モニター)の様なものに向かって、指し示す。その外界には。当初から疑問であった頭上の違和感が、映し出されていた。





「見えるだろう? あの上の。すぐにあれを出現させ、国としたんだ。以来、我がアヴィルガント王国は浮遊国家ツェッペリンに、彼女が作った窪みに存在している鉱物と、原生の魔石を献上している」



「あれが、国……。彩花の……国」



「……おい、変なことを考えるなよ」





────浮遊国家ツェッペリン。

……その名前は、いかにも考えつきそうなものだ。大惨事にならないと良いが……。





・・・・





彩雲彩花は一年前、この世界へ向かった。彼女は、自らをネメシスと名乗り、今は空に佇む円盤状の大地にいるという。何故、彼女がネメシスという志願者名を知っているのか。そして、私がここに来ることを把握しているのか……不悠乃があの言葉を知り、彩花が後発の情報を知り得ている状況。何らかの関わりがあると考える。



私は上空にて存在するという彼女に会うために、まずは不悠乃との接触を図り、これらの関係性を確かめる必要がある。そのためには、やはり一年前の出来事にあるような、「特能」「重複」などのような能力について知識を得なければならない。この先、調査をするにあたり、それらを知らないのでは、成功率に影響する。仮に、彼女のような能力を駆使できるのであれば、効率向上の件も視野に入れることが可能である。





「これで、秘密、というか、話さなければならないこと……まあ、オリヴァレスティについても話すことが出来た。ここからは、君に基礎知識を補完させることが必要だ」



「……はい」



「さて、ネメシス……君が知る彼女を例に出すと、その数は不明だが彼女の重複箇所は、目と耳だ。重複とは簡単な話、能力の足し算なのだ。例えば耳の重複であれば、重複者は耳を両耳合わせて四つ所持しており、二つの耳に四つ分の聴力が重なる。元々ある人間の身体部位を普通の倍所持した『重複者』は、特能の有無に関わらず、身体強化の恩恵(おんけい)が先天的に得られるため、高い効果が期待出来るが、その分希少価値も高いんだ。それ故に、騎士団に所属するにはこの重複が必要不可欠となる」



「……ということは、へーネルさんもファブリカさんもダルミさんも全員……」



「ああ。ファブリカは目を、ダルミは耳を、あと一人いるがそれはまた機をみてとして……我々と同じように騎士団、つまり対人戦闘に従事するものは必ず重複者だ。騎士団では、足が早ければ偵察に、腕が強ければ剣士に、頭が良ければ指揮官に、目が良ければ狙撃手に、耳が良ければ探知に……というのが基本情報としてある。そして、特能に関しても行う仕事、によって有効種類があるように、こういった(やく)についている者達は重複と特能の組み合わせが優れているものがほとんどだ」



「……重複に加えて、特能というものもやはり希少なものなのですか?」



「そうだな。特能についてだが、これも彼女を例にすると、ネメシスが使用していたのは万物捕食、万物耐性、万物使役……あとは粒子化なんて変わり種もあったなぁ」



「それを知り得たのは……」



「ああ、先程少しだけ話題が出た、……この一年間。大変だった……今のような状態に落ち着いたのは奇跡だな」



「?」



「私は彼女と一戦交えている。まあそれは彼女きっての申し入れではあったが」



「────」



「お互いに対等な状態での戦い。盟約の元一戦を交えたのだ。その勝者は敗者に要求をすることが出来る。そしてその要求は必ず受諾しなければならないというものだった。────そして私は、敗北した」



「────」



「勝者であるネメシスから告げられた要求は、他の帰還者が現れたら何よりも先に報告をすることだったんだ」



「────……そういう事だったのですね。だからあの時」



「ああ。君が前線基地に来た時点で、その存在は報告されていた。その後、山を降りること……それに感覚共有の視覚情報まで、全てネメシスは把握していたんだ」



「ということは、私のことを報告したのは────」


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