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043.破壊/移動


七本のある内の一本。足、目掛(めが)けて魔術槍の引き金を絞り、魔術筒が射出された。放たれた筒は器具が指定する一直線上に繋がりあった「立線(レール)」を沿って、それを追従する様に進む。



そして……。目標である、()()()の揺らいだ生物の根元に、攻撃は深々と潜り込んだ。命中した瞬間、まるで筋繊維が固まったかの様に……。その一本だけ動きが、止まったのだ。



筒による遠距離攻撃を受けた対処はというと。表皮に当たった時とは異なり、魔術筒は内側から溢れ出すかのように閃光を発し、エクタノルホスの足を破壊した。





「やったねー! 無事命中だよー!」



「ですが……」





命中した嬉しさ。

そして、効果が見られたということで気持ちが高揚したが。

それも束の間であった。



……第二射をもってを受けたのは、七本のうちの一本である。



(厳しい……か)



確かに奴は、一時失速はしたものの……。すぐに六本となった足を駆使しつつ、使えなくなった一本を切り捨てるように引きずりながらも、再びこちらへ向かってきたのだ。つまり、奴の進行は未だ阻止出来ていない。



私は、そんな光景を目にして再び、魔術槍を固定し定める。構えた槍の外観機器からエクタノルホスを見ると、距離が若干と先程より近くなっているのに気づき、恐怖を覚える。だが、この恐怖に支配されるのではなく、冷静に確実に、奴の進行を阻止する為には残り全ての足に魔術筒を命中させる必要があると、今一度自らに言い聞かせるように奮い立たせた。





「ファブリカさん、あの足を、ここに到着する前に、無くしてしまえば、勝算はありますか?」



「幸運なことにー、エクタノルホスの進行速度はーあんまり早くないからー冷静に破壊すればー勝算はあるかもー! でもー、射出攻撃がー『足』以外に効かなかったこともあるから気をつけないとねー!」



「ですね。あとは、奴が先にこちらに辿り着くか、私が全ての足を破壊するか、それだけですね」





絶えず近づいてくるエクタノルホスに対し、攻撃の意志を強固にする。一発、二発、と順次に射出をし、次々にその進行速度と、的の大きさ相まって、放たれた魔術筒は足に命中していく。だが……。確かに、その筒は、流動している屈強な筋肉質の足を深々と射抜くが、歩みを止めるには至らない。自らの足に筒が命中すると、その都度静止する……が。器用に、残された他の足を使用することによって、進行は再開される。



使えなくなった足は切り捨て、今度は……。残された使用可能部位を駆使して進んでくるのだ。私がいくら「足」を攻撃しても。最終的には何事もなかったかのように、歩みを止めない。そんなエクタノルホスに、薄気味悪い感情を抱いた。こうなれば、残りの足を全て使い物にならない様にしなければと再度構え、機器を覗き込むことになる。





◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





私は支えた魔術槍を体全体で感じ、攻撃の副産物として発生している煙幕の中から、冷ややかな汗を滴り落とす。七本存在する足。それらを次々に狙い、エクタノルホスの歩みを止めるために攻撃を行う。命中する度に足を痙攣させるようにして、一瞬、歩みを止めるのだが……すぐに再開させてしまうために、頭を抱えていた。



───そんな最中(さなか)



充填の完了と同時に射出を繰り返し、残りの足が二本のみとなったところで、私は今までの行動とは明らかに異なるものを目にする。なんと、足が二本のみとなったと同時に。まるでそれを軸とする様に、「人間(ヒト)」のような動きをしながら今までと比べ物にならないくらいの速度でこちらに走ってきたのだ。





「オネスティーくん! 早くー! なんか来てるよー?!」





……何故だか、二本足の方が断然早い。足を五本失う前は、その足を不釣り合いに動かし、規律など微塵も感じられないような様にて、進行していた。だが、二本のみとなったと同時に。規則正しく、右左右と規律良く交互に前へと進む。歩みから、「走り」へと移動方法を変えたのだ。何故、圧倒的に早いのか……というより何故走り始めたのか。それでも歩みを止めないエクタノルホスに、私は苦し紛れに口角を上げてみたが、渦巻いた不穏感と焦燥感は少しも和らぐ事は無かった。



奴との距離がある程度離れていて、尚且つ、ただ歩いているだけであったので、一方的に射出を重ねている間に高を(くく)ってしまっていたのかも知れない。一度ひとたびこの速度へと「変速(シフトアップ)」し、目まぐるしく距離を詰め、近づいてくる奴の動きを見せつけられてしまうと、流石に冷静ではいられない。今も尚、狂乱のエクタノルホスは……。残った二本足で、こちらへと向かってきているのだから。


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