041.射出/充填
「ファブリカさん、もうこうなった以上。こちらの位置が判別されていないうちに、撃つしかありません」
既に展開済みである魔術槍。そして、地面に広げた多数の魔術筒に向けて、指を指す。
「もう準備は出来てます。射出回数も万全です」
「分かったー! やるなら今しかないよねー! よーし、撃ちますかー」
私達は展開した魔術槍を挟んだ二方向にて身体を伏せる。魔術槍を作動する為に必要な充填と射出準備は、既に整えてある。
「オネスティーくん、もう一度お願いされてくれないー?」
「射出担当を、ですか?」
「うんうんー、そういうのー疎くてさー。当てられる自信ないんだよねー。私はさー充填に徹するからー気にせず撃っちゃってよー!」
二種充填式魔術槍。それは二人一組で運用する武器であり、射出手と充填手がそれぞれ必要だ。最初こそ既に装填された状態にて私が待機し、ファブリカが偵察をした後の万が一の為に用意をしていた訳だが今回は状況が異なる。
投下された筒をの効果が認められず第一射を射出することになった場合。第二射第三射と続く射出に関しては……。充填手が存在しなければ速やかな運用が不可能である。それが故に、彼女は一目散にこちらへ戻ったのだと思われるが……。既に効用が認められない状況において、今後の命運を握る射出手を担当することは、それこそ「賭け」のようにも思える。
山脈の上に身を託し、粉塵静まる火口内を臨む。対象から確認されないように、限りなく背を低くさせながら。雄々しく猛々しい角を艶かしく光らせた存在を、この目で捉えている。
「……分かりました。充填、お願いします」
「りょーかーい!」
私は肩で支えていた魔術槍を両手に移動させ、左手を窪みに添える。右手は槍と地面を支える支柱を掴み、保持させる。当初の展開位置からの変更。人力保持により、より低い位置での射出が可能になった。シュトルムの説明にあった照準器のような器具に視界を固定し、火口内にて動き続け変化しつつあるエクタノルホスに槍身の向きを定める。持ち替え、それぞれに役割を持った二つの手で目標を引きつけるように固定し、腹を地面につけながら射出体勢に入った。




