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036.拠点/汚染


巻型の昇降機。下部位置の方が速力が高く、上部に近づくにつれ低下していった。滑車が連結部分。その場にて留まり、伝達が阻害されると緩やかな速度制限が発生する。一瞬の制動と細かな振動を最後に、移動する引き上げ機は、運動を止めた。



私がファブリカによって救出される前。団長、そしてダルミの両名は、搬入口から既に……この基地へと運び込まれていたようである。そこで私は、精神汚染という聞き慣れない単語を連動させ、不安を(つの)らせる。更にいえば……。意識の回復もないそうなので、より一層の覚悟が必要かもしれない。





「……ついたねー!」



「はい。あとは、ここから入るだけですね」





先程まで動いていた昇降機は完全に沈黙し、それを確認した上で私達は噂のターマイト戦略騎士団の本拠地に足を踏み入れた。一歩踏み入れたすぐそこ、左右に道はない単なる一本道が用意され、その先には巨大な鉄扉が大きく口を開いた状態で存在している。この先に行方不明となっていた二人が運び込まれていることを念頭に置いて、今後を進めていかねばならない。





◇ ◆ ◇ ◆





足を踏み入れた先。上部の電灯が単間隔で存在しているだけの暗がりの道を進み、見えた先の集光部に向かってファブリカは足を進める。後から追う様にして一室に入ると、そこには目を疑うものが存在していた。



私が真っ先に目に入ったのは、巨大な画面(モニター)のような光り輝く板。それは天井から吊り下がり、その画面には私達が後にした施設や逃げ惑う外の騎士達の姿が鮮明に映し出されていた。



映像のように映し出されているその画面前部分。そこには、一つの大きな球体を取り囲むようにして八つの球体が同心円状に回転している……計器のようなものも確認出来る。横を見れば……。用途不明の機器。騎士風の甲冑。剣に似た巨大な金属質の固形物。管で繋がれた人状の機械などの「未知なる存在」が、至る所に転がっていた。



ファブリカはそんな得体の知れない空間をなんの躊躇いもなく進み続け、今も耐えず動き続けている球体の傍で腰掛けていた機械の前で足を止める。





「トーピード魔導騎士団所属ー、ファブリカ以下一名ー、只今到着いたしましたー!」





一切の脈絡もなく発せられた声に私は目を丸くさせた。後から着いてきていた者としては。ファブリカがそこで立ち止まり声を発した、という姿を後方から見ていると、壁に向かって発声練習をしていた「どこかの兵器好き」を思い出してしまう。





「ご無事で何よりです。しかし……ファブリカさん、来てそうそう申し訳ないのですが、あの二人。少しまずいことが起きてまして……」





私は再び目を丸くさせた。いや今度はより明確なる驚きに近いものであった。何故なら。管に繋がれ椅子に腰かけていた人型の機械が起き上がり、ファブリカを前にして流暢に喋りだしたからである。しかも驚きなのはそれだけではない。その声の主、忘れるはずもない噂のシュトルムのものであったのだ。それも戦闘時に耳にした(いびつ)な音ではなく、戦闘終了時に流れた清らかな報告的特徴をもった声を用いて会話をしているとは、誰が想像出来るだろうか。



それにしても、先程は腰掛けた背中しか見えていなかったせいか最初は分からなかったが、改めてこう見ると金色の煌びやかな装飾や全身の金属的な装甲といい、子供たちに好かれる理由が何となくではあるが分かった気がする。確かに、隣にいたら……目立つだろう。





「…… 深層精神汚染ー、ですかー……」



「はい。これは最も強力な精神汚染であり、その術をかけた術者が解除もしくは消失しない限り、取り除くのは難しいですね……」





どうやら二人が話している内容はイラ・へーネル団長とダルミの容態についてであり、かなり深刻だそうだ。重い空気に包まれ、話せば話すほど闇に落ちてゆきそうであるこの淀みに耐えられなくなり、私はなりふり構わず、無礼は承知で質問をすることに決める。





「……何か方法ないんですか?」



「ある……ことにはあります。この精神汚染は術者の魔素を介したものであるので、その根流を阻害することができれば……ちなみにあなたは?」



「失礼しました。私はオネスティと申します」



「……なるほど、ファブリカさん。この方をトーピード魔導騎士団所属、と仰っていましたが、彼は自ら所属を名乗っていない。つまりこれは────」



「いえいえー、オネスティーくんはーこの前の戦闘でー敵魔術師のキツイやつをー頭にズドンと食らってしまってー不安定な状態が続いているのですよー! ですから御無礼はー、大目に見てあげてくださいー!」



「そ……そういうことでしたか。こちらこそ申し訳ない、様々な情報が王都にて出回っておりましてその調査、いえ任務につき……なかなか難しいものですね、お互い。……それで、なのですが、その魔素の阻害が可能、かつ最も早く得られる素材は……エクタノルホスの角、ですね」



「エクタノルホス……」


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