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035.搬入/搭乗


巨大な二つ橋を大地に敷き、移動する為の(ベルト)に転輪。傾斜のつけられた鉄灰色(てっかいしょく)の堅牢な壁。無数に空いた穴からは砲のようなものが確認出来る。まるで、陸上の船のような雄大さに固唾を呑む。あの時、ロームルスとイラ・へーネルが話していたものはこれだったのか。シュトルムは戦闘指揮より研究を優先させていると聞いていたが、自らが要塞の一部なのだからそれも仕方の無いことなのだろう。私は、ファブリカに先導され、荒野に佇むその巨大建造物の元へと急ぐ。





「報告ー! 敵方の情報によるとー、どうやらこの施設ー自壊魔術が展開中だそうですー!」





解放され陽の光を浴びた出入口。そこに接地していた要塞下部に、ファブリカは足を向かわせる。そこで待機していた騎士の一人に、彼女は報告をした。





「……なんだって、それは大変だ────……こちら搬入口。施設自壊運動が現在進行中との情報あり、至急全人員帰還すべし、繰り返す。全ての陸地作業者は速やかに待避を……さあ、御二方もこちらから我らがシュトルムにお入りください」



「……うちのー団長とダルミはー搬入済みですかー?」



「はい。二名とも先程搬入済みです。……しかし、精神汚染が著しく、意識はまだ回復していないそうです。……さぁ、急いでください」





要塞下部に備わっていた(リール)型昇降機への搭乗を勧められ、私とファブリカは幾らかの疑問点を残したまま、陸地を離れた。



私は剥き出しになったままの昇降機から、次第に集まりつつある騎士達を見て納得する。急がねば……。あそこまでの人数を待避させるのは、容易ではないと思われたからだ。





「ファブリカさん。これが、シュトルムさん……つまり、この設備丸ごとが、人ってことですか」



「うんうんー! シュトルム騎士団長はねー、自身の体を機械化してー魔素を直接運用させるのがー最も効率のいい方法だと提言した先駆者なのですよー、それを自らが被験者となって実行に移せるんだからーその覚悟は並々ならぬものだよねー」



「なるほど、自らの手足のように意思が及ぶ限り、余すことなく完璧に使いこなす事が出来ますね。しかも伝達指揮が一箇所に統一されている以上、それが一人で完結してしまうと考えると、確かに効率を考えるなら最適解ですねって、ことは今こうして乗っている設備も、どこかの一部ってことですか?」



「そう怯えなくてもいいんだよー。先に組み立てられたものの支配権をー同化することによって得たー。と考えれば、生々しくも、どの部位だとかも多少は気にならなくなるよー!」



「……多少、ですか?」



「まー、私も違和感がない訳でもないけど……違和感といえばー、へーネル団長とダルミ、何とか救助はされたみたいだけどー、意識が戻っていないなんてーかなり強力な精神汚染を受けたみたいだねー!」



「精神汚染……その御二方はなぜ」



「それはもちろん、敵方による保険だろうねー」



「……保険」



「うんー。汚染に成功したらーあらゆる器官の鈍化してー生きるのに最低限の状態に変化させることが出来るー。その状態になったらー抵抗できないねー。つまりー私のようなー連携者に思念伝達が送れなくなるわけだよー!」



「なるほど、万一の場合に備えて、救援を送らせない為の予防線なのですね。生体的に弱体化させ詳細を発信させないようにするとは、用意周到でありましたが……そういえばファブリカさんはどの辺りで離脱を?」



「そうだよねーオネスティーくん、私が空から落っこちちゃうところ見てたもんねー。そうそうー、あの後落下中にねー認識阻害を広範囲に発生させて身を隠すことに成功したんだー離脱したのはその時かなー!」



「それでシュトルム団長に救援を……」



「うんーほんとはねーそういった専門の人のねードルフベルンさんにお願いするはずだったのー」



「ドルフベルン……?」



「うんうんーレパルス攻撃騎士団の団長さんー。敵と事を構える時の専門なんだけどー、なぜだかシュトルム団長が救援に来てくれることになったんだよねー。まーでもこれでーなぜ彼が来たのか分かったけどねー!」



「……これですか」



「彼が生粋の実験好きっていうのは王国中で知らない人はいないくらいに有名でねー、自分の体すらも実験の素材にしてしまうくらいだから予想はしてたけどー……」



「かなり大掛かりで、この運用自体が実験という訳ですか。ちなみに先程、この基地そのものがシュトルムさんだと伺いましたが……実体はあるのですか?」



「人って言えるのかは分からないけどー、形はあるよー! それも子供達には人気みたいなんだけどー」



「それで報告の際に……」



「うんうんー、あの人隣にいるだけで音大きいしー、何より目立つからー困るんだよねー!」


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