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032.強襲/捕獲


振り落とされないようにとしがみつきながら、空を飛んでいた私は王国城壁を離れ、目的地であるという第二の山を目指していた。魔鳥の背中から左右を見れば、イラ・へーネルとファブリカがこちらへ向かって視覚的信号を送る。

二人から示された方向に目をやれば、最初こそ雲だと思っていたそれは第二の山の先から立ち上る噴煙だと判明した。



異変に気づき、ダルミからの思念伝達とが相まって彼女達は飛行速度を上げると、煙臭さを鼻腔で感じ取ってからあっという間に噴煙の近くへ迫る。ラムダ山とは規模が明らかに異なる。大きな山を上空から越え、王国の位置からでは確認出来ない山の反対方向を見下ろせば、その煙の原因が(あらわ)になったのだ。





「……もう位置が割れているのか」



「あそこが新拠点なのですか?」



「ああ、そうなんだが。こうも見境無しに破壊行動を取るとは、舐められたものだな」





立ち上る噴煙の正体は魔術を用いた破壊行動であり、へーネル団長が示していた新拠点の辺りを中心に、大地や山肌の至る所が(えぐ)られていた。





「未確認魔術反応ー()ー。状況から推測するとーダルミはー中にいるようですねー!」



「あの……あそこにいるのって」



「ああ、敵だ。我々の基地移転を嗅ぎつけてここまで来たらしい。幸いこの高さでは気づいていない」



「つまりー好機ですねー!」



「故に強襲をかける。ファブリカが空間断絶、後に降下。私は上空で敵の注意を引く。降下後内部で分散、速やかな排除を。くれぐれも新拠点の位置は悟らせるなよ」



「了解ですー嗅覚が優れていてもいいことありませんねー!」



「お互いにな。オネスティ、何か?」



「あの……ダルミさんが応戦せずに救援を求めたのは、基地の位置を判別させないためなのですね」



「ああ、その想いを無為にしないためにも、我々は何としても排除を急がねばならないというわけだ」



『でー? その後あなた方はあの二人に会えるのかなー?』





見知らぬ声。進行方向上方に人影が現れる。





「っ────まずいッ! ファブリカ!」



「この子、ファブリカっていうのねー?」





灰色の長髪を二箇所で結いた蒼眼の少女は、実体化しているファブリカの首根っこを掴み、落下させる。



絹のような柔らかさと洗練された陽光の反射。手櫛(てぐし)一度(ひとたび)結わかれた髪を撫でれば、一切の阻害なく零れ落ちるほどの質感。毛髪の一つ一つが核へ向かおうとしているかのように統一された毛先は極めて自然的に下を向いている。



灰色なる印象の少女は、悠々自適に、そして鋭く尖った歯を見せながら不敵な笑みを浮かべている。





「でー? あとはどうするのー?」



「……オネスティ、だめだ囲まれた」





私は彼女に釘付けになっているイラ・へーネルの言葉を聞いて視線を移動させると、背後左右の全方位に人影が確認出来る。……私達はその言葉通り、包囲されていた。





「……うんっ! 抵抗は、しないみたいねー! 良かった良かった! で、着いてきてくれる?」



「……ファブリカは」



「うんー? 後でこちらで回収しておくよー!」



「二人は、無事なのか……?」



「無事無事! もうあの二人は私達で回収済みなのー!」



「お前達の目的は────」



「はいー! お喋りはそこまで! これ以上喋ったら息、出来なくなるよー?」



「……」





多数の浮遊する人間。

魔術士に包囲された状態で、正体不明の少女は投降を促す。



手を後ろに組み、彼女の部下と思われる者が、イラ・ヘーネル、私の順で手枷を装着した。彼女の言葉によって促され、団長が魔鳥を粒子化させる。すると、私は空へと放り出される。



私と団長の身柄は光の鞭の様なもので一纏めにされると、瞼が急に鉛のように重くなり、自らの意思で目を開くことが出来なくなった。





「よーし! これで準備は整った! すぐ着くから、開けと言われたら大人しく開くんだよー!」





彼女の声が聞こえなくなると、外部から聞こえてくる音も次第に遠のいて()き、完全に消失した。





* * * * * *


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