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216.機変/治績


泥濘を脱し、新たに捉えた足場に踏み入れば、これ以上の沈殿はないと確認し、安堵する。極めて安静なる心持ちを形成させた上で、無生成地帯その端に立ち、確かめるべく二度三度、「橋」先端に対し自らの足をもって負荷をかける。石橋を叩く程でもないが、何度か耐久における実験を行い、幾らかの均一性が確認出来たため、私は満を持して一歩を踏み出し、身体全てを橋の上へと……乗せた。



……不安定な揺らめき。



自らの身を泥濘の果てから解き放った時、確かに感じた振動から、この場は橋そのものであると実感した。何せ目に見えているもの全てが事実ということはないだろうに、前回の上面同様、錯覚によるものではなかろうかと危惧していたが、その心配はなさそうだ。



私は、その連続する揺らめきを捉えた後、左右を眺めつつも前方を捉え、依然として進行を続けねばならないとの「前例」からなる衝動に突き動かされた。唐突とは言えども自然的に、自らが離脱した空間について疑問に思い、振り返るようにして後部を臨めば、目的の方角同様、元来た「環境」は既に深い霧に包まれた如く、不鮮明なるものへと変化していた。



互いの環境を隔てた揺らめきの狭間。

橋にて連続するこちら側と目的の場所。



陸地の存在は必須条件であり、尚且つの要件が求められるが、このどちらでもない不安定かつ雲海景色においては、それ以外の希望は生まれなかった。というのも、橋を渡り続ける中、事実として存在するのは、果てしない雲海の上にて架けられた一本の橋を、自ら渡っているとのことであり、そこから確認出来る視界は、その他の現象を映さない。



ただひたすらに壮大かつ底知れぬ……果ての分からぬ並行に、自らのみが「橋」という逃げ場のない不安定な足場にて、存在しているという事実に恐れをなしたのだ。



この雲海の下に何が存在し、果ては確認出来るのか、成分さえ分からず、これが「雲海」であるとの確定も無い。目的と定めてはいるが、実際として存在し、対岸に向かうことは最善なのか……それに、この環境は正しいものなのか、と絶え間無き不安は留まることを知らない。


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