215.伽藍/涅槃
遠くからそれを全体的に捉えていた時とは異なり、間近に迫る存在から威圧的な印象を強くさせる。立ち塞がる不明瞭は高く、越えられない。
一点、確認出来た無生成地帯目指し、至るも、自身の寸法から比較した壮大さに圧倒される。下部より滞留する光源、天まで届いてはいない。また、その隔ての果ては見えぬが、この場より先を阻害する存在なのだと……触れずとも分かった。
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唐突にも思えるほど明らかに……。捩じ込まれたかの如く違和感を覚える障壁。さながら帝国境界線である。
微弱なる視界にて捉えたその隔てを、越えられるか否かさえ疑問に思うも、目指した地点への到達が……その危険性を排除した。そう、これより先の侵入をまるで阻むかのように確認される未知の存在に対し、進行といった形態をとりながら観察すれば、希望とも思える破断点を見つけることに成功したのだ。
口を開け、私を誘う開口部の様は、辺り一面見渡す限りを静止する現状況にとっては、あまりに魅力的であった。淡い揺らめきが存在しない一点を対面に捉え、恐る恐る目を凝らし、覗き込むようにして「先」を臨めば、そこに……。
────霧に架けられた、橋を見た。
雲の上に存在する一筋の道のように、不安定であろうが光明たる橋は、それ以外が確認出来ない状態にて、対岸を繋いでいる。
視界を移動させ、左右を覗き込めば、隔ての下部には一切の足場は見えず、あの時それに触れ、一歩でも踏み出していたのであれば、逃れられぬ落下を経験していたのであろうと、恐怖する。
得体の知れぬ存在に触れ、副次的影響を受けるよりかは、こう……あからさまなる進行地点、進むべき道を選択することが懸命であろう。




