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214.霊廟/偽証


延々と続くと思われた平坦なる認識を廃し、ついぞ行うべき運動へと意識を向かわせた私は、多少上方、そして比較的前方向を見ながら、震える身を制御する。他種的な要因によって強制されている訳でもなく、不確定な乱環境に触発されている訳でもない。定めであり有意義なる結論として取り残してきた彼女等を少しばかりは思い浮かべるが、それが自己において極めて重要なものであるとは、素直に思えない。



以後の事は、この身に降りかかるであろう展開をもって結末と定める。それを受け入れるか否かはさておき、静止こそ最もなる禁忌だと理解した上で足を伸ばし、緩やかな下降を現実のものとする。



後部から振り返るようにしてみれば、元よりいた場所が上面と変化し、まるで、自らが泥の中に潜り、(くだ)るような感覚を鮮明に覚えた。(まさ)しく挺進、内部にてその多数を飼い、重複する感覚を外部に当て、相殺する。そのような、処世術をとらねば、背後に連なる出来事についてを正しいとは思えないのだ。



決して、認識としては、滑り落ちてしまう程ではない傾斜。それこそ、前方を見ることのみで心を落ち着かせることの出来るほどの取り柄のない変化。正しい印象を経過させ、留めることなく降り続ければ、その先……上面同様の平坦なる湿地に到達する。



────無数の柵、石柱。空気さえも隔てるかのような重圧。変化した環境、下部より降りた先。私は、自らの視界に確かなる差を捉えた。



柵と石柱によって向こう側は見えず、歪み、まるで辺りそのものが(すく)んでいるようである。それより対面があるのかさえ不明瞭なる環境に対し、今後の行く末を案ずるも……。少しばかり視界を左右に運動させ、拡張すれば、その並行的隔てに一点、無生成地帯の存在を確認した。



誘因存在を拒絶するかの如く立ち塞がる、淡く、遮光的な合成物。柵と石柱の連続によって形作られたその右端。私の位置から捉えれば、向かえと言わんばかりの地点にて。防御における穴を察知し、早急に進行を行う。



泥濘(でいねい)にて生み出される流線的な泥達。跳ねることさえ気にせず、纏わり付くことを確認するまでもなく、ただ愚直に直線を見据える。これが私に向けられた「歓迎」ではない可能性を理解しながらも、この瘴気から逃れることが出来るのならばと……複雑的心持ちと外気とを絡ませながら、自らの足に力を込めた。


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