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213.残香/退廃


絶え間無き運動、連続する進行。それを大層な目的の為であると定め、気を確かに保ち続けることは考え()る最善の策であるが、自らの内部にて蓄積されている普遍的な情報を崩壊させかねない。無心となり、そのように努めつつ機械的であれと望んだ連動は、背後さえ確認出来ぬ事実と相まって、清々しくも(はかな)げな感情を生み出し続けた。



辺りを振り切り、冴えゆく脳と外部との対比を鮮明に感じつつも、暗がりの中、身の均衡を崩さぬよう、止まることなく歩み続ける私は、遂にその果て、帝国が位置するであろう方角にて、異物を見た。……そう、鮮明に。捉え、見えるはずもない()()()()環境。思えば、この瘴気(しょうき)立ち込める渦に飲まれてから、視界に映るものは、全てが朧気(おぼろげ)であり、不確かなるものであったのだ。



だが、私の視界には、明確なる……地形の変化が映る。監視塔、拠点を離れ、丘を下りて靴底を濡らしながら、目指すべき地点に向けて足を進めていた訳であるが。特段時が経たずして、この環境の変化に到達した。辺りを隔てる、掴みどころのない印象に恐れを成しながらも、進行を続けた先に、最大の変化を捉える。



────大地の消失。



進行方向、視界を定めてみれば。その先に映るは、先に続くであろう「地」の消え去った不確かな環境である。その、危険であろう地点を確認し、到達する前に足を止めるも、沈みゆくことを思い出し、半ば微速前進、(はた)から見れば足踏みをしているような状態を保つ。その(さま)の中、(きわ)から臨み、下部こそ「本来」はどのようになっているのかなど確認する他なく、私は……細心の注意を払い、極めて徐行的に、先を目指した。



遠くから見えた大地の消失は、実は平面的に確認したが為にそう思えたのであって、覗き込むようにして先を臨めば、その下部には、連続する大地、坂と言うべき傾斜が捉えられる。崖といった険しいものではなければ。当然、底なしの大穴という訳でもなかった。しかし、不明瞭である現環境……瘴気の中で、この侵入者に対して格好なる地点が(あら)わになっていたことは、まさに幸運であると言えよう。



仮にも、属した組織が帝国を攻撃している以上。その場へ向かう私といった存在は、正しく「侵入者」そのものである。極めて不安定なる自らの状態、庇護下に置かれていないことを再確認しながら、鮮明的行動を控えねばならないと深く……自覚した。


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