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210.変貌/遊離


《外部》



恐ろしい程の暗がりの中、私は見えず捉えることの出来ぬ「階段」を踏み締めることで認識する。恐る恐る確かめるが如く、それこそ低速ながら下り、今後についてを噛み締めながら、ようやく外部へ到達した。



大地の感触を自らの足、そのもので感じる。これが幻、もしくは深々とした幻想にも似た確定であるとこは承知であるが、やはり、由々(ゆゆ)しき事態への焦りと(きた)るべき真実への高揚で、多少混乱する。



外部より刺激として得られた情報の変化、より顕著に当てられた為に身を反転、振り返れども……あるはずの「拠点」は確認出来なかった。それが故に踏ん切りをつけ、再びこの身を山の(そば)内面とは異なる傾斜面に向けるが、やはりこの、あと一足が動かない。



外部環境へ至る前。余分な程に確保出来た「思考」の中で、収集し得られた今までの行いに関する問題点を、盛大に実感したのだ。





・・・・・・





彼女等が使用する移動物の恩恵を受け、苦なく拠点を確認することが出来たのだが、こうして外見的に離反した状態にて思えば……。僅かながらの記憶を頼りに、今後に控えるであろう「果て」を目指すとなると、これより夜通し「進行」を続けねばならないと悟る。



当然、そのような結果についても予想は出来ていた。それを踏まえた上での計画であるが、地に触れた際に抱いた不一致の感覚から伝播(でんぱん)した、(まこと)振動強し違和感により、意気揚々と進行するといった心持ちは、正常としては得られない。



失ったものを実感し、悔やむも、それは自らの視野においての、事柄に過ぎぬことを即座に理解し、「二足草」という名称の由来ついてを思い浮かべ……心を軽くしようとした。そう、この場にて意識正しく到達することが出来たのは、実に(まさ)に、疑うことなく、私自らの力によるものでは、到底ないのだ。



────二足草、その名称について。



それ即ち進行に際しての、足の数が由来する。人間、馬に乗る時は、一時的かつ代替的に四足歩行になるが、自らの分身として大地を踏む「生物」がこの草を食べることにより眠ってしまい、否が応でも人間は、二足歩行を()いられる。



そういった名を付けられる所以(ゆえん)、つまるところ「この草」を摂取することは、それを自らに当て()めるのと同義、正しく人にとっての睡眠薬となるのだ。



そう判断出来たのは、先人達の経験によるものである。正しく奇跡的なる出会いにより救われ、こうして不透明のままではあるが……自らの目的を阻害なく進めることが出来るのは、素晴らしきことなのだ。



野に生えた天然薬についてを思えばこそ。先程より得ることを欲した「改訂」を実感し、この進行に際して……本望(ほんもう)であると、強く意識することが出来る。



重く感じられた足は────今や、軽く飛ぶように。暗がりの中、斜面を下った。


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