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208.疾病/制定


「了解です! ……そうしましたら、イラ────」





示されていた方角を確認する最中、彼女は背後にて言葉を発するので、その表情などは当然捉えていなかった。同時進行的に告げられた言葉の途切れを確認した後、私は振り返るようにして元の位置を臨むなり、案の定……彼女は限界を迎えていた。失神、失落、混沌なる災禍。淘汰されるべき意識は、正しく夢心地であろう。



崩れ落ちるかのような音。彼女を確認……返答するまでもなく、状態を認知した。最後まで何のためか、耐えていた彼女の意識が飛んだことにより、この場にて自らを保っているのは……私のみとなった。トーピード魔導騎士団は無知である。山野に生える、草々ついて。





「意味はない、そうかもしれませんが……」





沈黙を噛み締め、辺りの安全を目視にて確認した後。私は、傍に転がっていた手頃な「紙質」を見つけ、引き裂いた。この地より溜まる魔素、その回復を待つ。彼女達は、この場より日を重ね、消耗するであろう。対策を講ぜねばならぬと画策を続け、形成させる。





【魔素の回復には時間を要し、当然魔術士にとっては必要不可欠なものであると聞く。この場にいることにより、魔素溜りの回復が遅くなるのでは……】





文字が伝わるかとの疑問。ここで改めて、今まで言葉が通じていること、つまりは共通言語が文化として成立していることについて思考する。





・・・・





色付液(インク)さえ見当たらなかったため、伸縮自在の刺突剣シュバルツを筆記具として用いる。自らに切れ込みを入れ、滴る血液を素材とし、久しく思える「文字」を書き連ねた。よく考えてみれば、共通言語成立の年とこの世界とは連続性のないはずなのに、次系列的にはさほど離れていない計算になる。



文字、言葉が共通言語に移り変わっているのであれば、機関の成立後、送られた先遣隊による文化の流入が顕著であったのか、それともこの世界の起源論が根底から覆されるのか……判断しかねる。入界以前における説明には、共通的な文化が生成された上での「現環境」であるが故に、こうして言葉を交わすことが叶うとあった。



その他の情報については曖昧、寧ろ不明瞭であるが、平坦なる思考にて当て嵌めてみれば、書き置きという行為についても不可能ではないと考えられる。私は……自らの保身と、今後における業の不認知を求めるべく、極めて単純なる手段を選んだのだ。……それが、伝わらなかったとしても。



問題には至らないと思えば、この行いこそ、保険として有効であると悟っていた。


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