205.肺胞/憑依
「私としても、ここまで親和性が高いとは、思ってもいませんでした」
サオウと二足草の違いに気づいていない。全くの別物だというのに、二物が混在する状態に違和感を覚えないというのならば、仮定として以前より見分けなど出来ずに、茹でるといった処理を加えた後で食していたことになる。
熱に当てられなければ効果はあるのだ。期待する結果を得るためには、多少の違和感は捨て置くしかない。
神にまで縋り、自身の願いを他者に委ねた結果。私は、辛うじて得られた同化の事実を、ある種の燃焼剤とすることに決めた。
「君のお陰で、楽しみが増えたよ。……それこそ、盟約?に基づいた付き合いではあるが、退屈はしなさそうだな」
「いえいえ、勿論複雑な環境が取り巻いていることは承知しています。私としましても、有難い限りです」
「動ける人数が多ければ多いほど! 選択肢や可能性が増えるからね!」
「=うん。不安要素はあるが、解決していけば良い。うん」
「そうだねー! 今はー、この得られた環境を保持してー、作業再開していかないとねー!」
「軌道修正が行えれば、幸いなのですよ。そのためにも、お願いするのですよ」
「今後ともな」
宴の始まり。活動における回復を含め、歓迎を込めた開催に疑惑を覚えていたが、本来の言葉通り、軌道は傾いていく。私という新参者、異質、異物を捉え、嬉々として明るく声掛けを続ける面々を確認すれば、全員がその体内に「劇薬」を宿している。
「……勿論です。こちらこそ、よろしくお願いします」
涙を気にしてか、若干の態度に変化が見られ、比較的軟化している。作用に当てられた傾向にある彼女らを思えば、私という存在については今や、違和感とは捉えていないのだろうと察する。
美味しくて涙を流す。その訳を説明するが、深層的には解釈されていないはずだ。これも策略、別れを惜しんでいるのだと。後日、感覚定かとなったその時に、弱い人間であると認識してもらうためである。……私は草々を散らせど、決して取り込むことなく、ただひたすらに延命を続けていた。
口に入れては戻し、皿内部の量はさほど変化していない。その間でさえ、彼女らは宴と称した会話を続けており、それを聞き、反応することで、安静なる環境は維持される。だが、最も私にとって。良い環境の判断基準は、より情報を得られる方に傾く。それが今回、この場に存在せず。新たなる有益性を見い出せない為に、計画を練った。……つまり、この空腹感は、代償なのだ。
「まだまだあるからね!」
「=うん。食べ物も、飲み物も、お話も。うん」
「始まったばかりだしねー! さあさあオネスティーくんも!」
オリヴァレスティ、オービスと続く愉快な動きにつられて、ファブリカが詰め寄るようにして、瓶より酒を注ぎ、勧める。にこやかなる雰囲気に、私は良い印象を心掛け、その誘いを清らかなる表情にて受け取る。
「こらこら、一応注意はしておいてくれよ。……まあ、こちらに任せてもらっても構わないがな」
「ええ……そうなのですよ。ファブリカ、それにオリヴァレスティは、自由になればなるだけ、活力に繋がりますからね」
「はは……。さて、オネスティよ。構える必要なぞ当然なければ、勿論程々でも構わないが、主役として……この場には、いてくれよ?」
私は……自らの表情を変えることはなく。それを維持することに、力を注いだ。絶え間無き包囲された環境に対し、有効なる穿孔を齎す仕掛けは、最早、終局へと差し掛かっているのだ。それさえ実感出来ていれば、後の不安要素など……無いも同然だろう。




