表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/219

205.肺胞/憑依


「私としても、ここまで親和性が高いとは、思ってもいませんでした」





サオウと二足草の違いに気づいていない。全くの別物だというのに、二物が混在する状態に違和感を覚えないというのならば、仮定として以前より見分けなど出来ずに、茹でるといった処理を加えた後で食していたことになる。



熱に当てられなければ効果はあるのだ。期待する結果を得るためには、多少の違和感は捨て置くしかない。



神にまで縋り、自身の願いを他者に委ねた結果。私は、辛うじて得られた同化の事実を、ある種の燃焼剤とすることに決めた。





「君のお陰で、楽しみが増えたよ。……それこそ、盟約?に基づいた付き合いではあるが、退屈はしなさそうだな」



「いえいえ、勿論複雑な環境が取り巻いていることは承知しています。私としましても、有難い限りです」



「動ける人数が多ければ多いほど! 選択肢や可能性が増えるからね!」



「=うん。不安要素はあるが、解決していけば良い。うん」



「そうだねー! 今はー、この得られた環境を保持してー、作業再開していかないとねー!」



「軌道修正が行えれば、幸いなのですよ。そのためにも、お願いするのですよ」



「今後ともな」





宴の始まり。活動における回復を含め、歓迎を込めた開催に疑惑を覚えていたが、本来の言葉通り、軌道は傾いていく。私という新参者、異質、異物を捉え、嬉々として明るく声掛けを続ける面々を確認すれば、全員がその体内に「劇薬」を宿している。





「……勿論です。こちらこそ、よろしくお願いします」





涙を気にしてか、若干の態度に変化が見られ、比較的軟化している。作用に当てられた傾向にある彼女らを思えば、私という存在については今や、違和感とは捉えていないのだろうと察する。



美味しくて涙を流す。その訳を説明するが、深層的には解釈されていないはずだ。これも策略、別れを惜しんでいるのだと。後日、感覚定かとなったその時に、弱い人間であると認識してもらうためである。……私は草々を散らせど、決して取り込むことなく、ただひたすらに延命を続けていた。



口に入れては戻し、皿内部の量はさほど変化していない。その間でさえ、彼女らは宴と称した会話を続けており、それを聞き、反応することで、安静なる環境は維持される。だが、最も私にとって。良い環境の判断基準は、より情報を得られる方に傾く。それが今回、この場に存在せず。新たなる有益性を見い出せない為に、計画を練った。……つまり、この空腹感は、代償なのだ。




「まだまだあるからね!」



「=うん。食べ物も、飲み物も、お話も。うん」



「始まったばかりだしねー! さあさあオネスティーくんも!」





オリヴァレスティ、オービスと続く愉快な動きにつられて、ファブリカが詰め寄るようにして、瓶より酒を注ぎ、勧める。にこやかなる雰囲気に、私は良い印象を心掛け、その誘いを清らかなる表情にて受け取る。





「こらこら、一応注意はしておいてくれよ。……まあ、こちらに任せてもらっても構わないがな」



「ええ……そうなのですよ。ファブリカ、それにオリヴァレスティは、自由になればなるだけ、活力に繋がりますからね」



「はは……。さて、オネスティよ。構える必要なぞ当然なければ、勿論程々でも構わないが、主役として……この場には、いてくれよ?」





私は……自らの表情を変えることはなく。それを維持することに、力を注いだ。絶え間無き包囲された環境に対し、有効なる穿孔を齎す仕掛けは、最早、終局へと差し掛かっているのだ。それさえ実感出来ていれば、後の不安要素など……無いも同然だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ