199.液胞/応能
特殊かつ限定的な発動条件。
二足草は、溶け出すといった状態をもって作用を確実なものとし、更にいえば、その効果には時を要する。
焼物関係は、最終防壁であり、得策ではない。その点、液体であれば適性があり、温度に関しても焼物のように瞬間的に口に入ることもない。湯の中で、その他の具材と共に、適正な頃合にて混入を指示すればこそ、この環境を遠くより捉えることが出来るのだ。
「おおっ、そうかそうか! ならばオネスティよ、これからの作業も頑張ってくれたまえよ」
「任せてください」
「良い返事だ。さて、まずはだな……と、いうより私に倣って、放り込み易く分けてくれ」
調理場にて横一列になり、イラ・へーネルの動きを確認する。イラ・へーネルが手渡した小刀を手に取れば……。彼女は、手本を見せるようにエムラトを示す。
「洗い……剥き、そして食べ易い大きさに分けると」
「ああ、切れ込みさえ入れてしまえば、あとは気にするな手で剥ける。その後は見せた通りだよ」
何故、笊の中より水が流れ出しているのかはさておき、彼女が示した一連の手順によれば、芋のようにも見えるエムラトの皮を剥き、切って放り込めば良いらしい。表面は歪であり、紫の配色であることから、あまり良い印象は抱いていないが、中身も同様の色合いをしていたことは評価に値する。
食べ易くするために四刃程の手数にて分割した様を見れば、やはり救援に来たことは間違いではなかったと悟る。何せ、彼女の動きは若干のぎこちなさを孕んでおり、このまま一人で続けようものなら、かなりの時間が掛かるのであろうと予測したからだ。
「ですね。へーネルさんに続きます」
私は彼女の動きを確認する。笊に溜まる液体にてエムラトを潜らせ、細かな切れ込みを入れれば、僅かな動作で皮が剥ける。そして分割する様、更に別の容器に移し替える様を確認した辺りで、彼女の動作に倣って作業を開始した。




