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197.愕然/併記


「どうでしょう」



「うんうん、こんなものかな!」



「=うん。かなりの速度、助かる。うん」



「いえいえ。そうしますと後は……」



「もちろん! じゃじゃーん!」





満杯となった(ざる)(そば)。今まで平らな一枚板だと思っていた机に、大きな(くぼ)みが現れる。穴の表面を隠すように。取り外し式の蓋が、取り付けられていたのだ。そこから調理場にあるような……。「水用部」にも似た部分に、更なる笊を捉える。





「じゃ、この中に!」





満杯に溜まり、凄まじい重量であろう笊を軽々と持ち上げ、窪みの中へと放り込んだオリヴァレスティ。その姿をただ呆然と眺めるや否や、確認した第二の笊へとサオウの集合体を流し入れた。



先程まで空であった容器は即座に満杯となり、今にも(こぼ)れ落ちそうである様を見れば……。出処(でどころ)不明の水が内部より現れ、時経たずして、満たされる。何事かと思いそれを捉えれば、彼女は隙さえ与えず、収納されていた笊を持ち上げ、先程まで使用していたものに移し替えた。……つまりこの作業は「洗う」部分なのだと、(おの)ずと悟った。





「おお……」



「よし! そしたら移し替えて、茹でれば完成だね!」



「=うん。ありがとう助かった。うん」



「いえいえ。なるほどですね。あとは、味付けに引き継がれると」



「その通り! あとはダルミに渡そう!」



「=うん。再び、今度は運搬に関して助けて欲しい。うん」



「勿論ですよ。早速、始めましょう」





湯に投じるという最も重要かつ慎重に思える工程は、ダルミへと引き継ぐとし、それを遂行するべく私は、洗い終えた二足草を再び笊へと移し替える。作業効率は一人より二人の方が向上するが故に、さほど時間を必要とせず、運搬用の容器を満杯することが出来た。思えば、私はイラ・へーネルより調理器具類の管理を任されているが、大半はこういった援助……である。



故にダルミへの引継ぎより後。どのような作業が待っているかについて、今の段階では分からない。ただ、いざ二人で笊の左右を持ち、別の調理場へと歩みを進めたこの際において。オリヴァレスティの調理台に残された(わず)かばかりの草山を目にすることにより、心持ちを安らかにさせたのだ。





「おーおー、ダルミ! 待たせたね!」



「そんなことはないのですよ。ちょうど、準備が出来たところなのですよ」





ダルミは動かしていた手を止め、こちらへ向かって告げる。姿既に確認していた私は、二人で運んでいた笊を指示される通りに台へと置き、横一列礼儀正しく、次なる動作を待っていた。





「ご苦労なのですよ。私はこれからサオウを茹で、味付けと共に煮るのですよ」



「……手伝うことはありますか?」





私は半ば拍子抜けした様子を心掛け、言葉を発する。自らの主任務が、調理器具類の管理であることを理解した上で、自主的に援助が必要か否かを尋ねた。





「いいえ、既に助かっているのですよ。あとはこちらの番なのですよ」





出来ることなら、私はサオウの傍を離れたくなかった。オリヴァレスティの調理台にて僅かばかりの草々を確保しているために、それに属する集団の行く末を知りたかったのだ。


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