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194.白朮/融合


「どうした? オネスティ」





大変(よろ)しくない。これより行われるという調理。食材が体内へと運ばれる逃し難い瞬間。私は、サオウという植物に掛けられた奇跡的な幻惑に(すが)り、今後の計画を形成させている。正式なる指示によって決定した作業。覆し難い分担によって、サオウから突き放されたのだ。この事実は、二足草の隠匿成功を神に頼み、熱処理を行わずに口に運ばせるといった計画の難しさ、そして自らの無力さを実感させるものとなった。





「おい、オネスティ?」



「……あ、ああ。すみません。私は、皆さんに器具をお渡しする係でしたね」



「そうだとも。器具が沢山あって手に余るとはいえ、立ち尽くしていては心配だぞ! ……まあ、場所なんかは教えるから、そう焦らなくても大丈夫だ」





イラ・へーネルの気遣(きづか)いにより、オネスティのという人物は健全なる方向へと補完、形成されていく。私は、その清らかなる心持ちに感謝し、これからの行いにおいても努力を(おこた)らないと誓った。





「あ、そうだ忘れていたが。料理が完成した後、少しだけ付き合ってくれ。保存を頼みたい」



「……あ」



「はは! 心配するな! 私も一緒だ」





若干の誤差であるが。私の思っている気遣いと、彼女が思っているそれとでは、僅かに差があると実感した。





「……さぁ、早速。板、椀、箱、の用意だ。それぞれファブリカ、オリヴァレスティ、ダルミに持って行ってくれ」



「分かりました。その後は……」



「ああ、指示を待っていてくれ。そろそろ、助けが必要になる箇所が出てくるだろうからな」





イラ・へーネルはそう自らの口にて発すると、即座に。自らの役割である、エムラトの調理に取り掛かる。彼女の言葉から得られた今後の運び。私は、器具を管理する他に、予備人員としての役割も()ねているらしい。



本来ならば、追加的に発生した新たなる課題に嫌気を覚えるところであるが、今回に至っては(むし)ろ好機である。固定された役割とは異なり、ある程度の自由が存在するがために、サオウを扱っているオリヴァレスティのもとへと赴くことは容易である。



私は目的を果たすための機会を得たとして、イラ・へーネルから下された、後付けの命令に……心底喜んだ。





・・・・・・





「オネスティーくん!」





最初に助けを求めたのはファブリカ。担当しているのは、メノミウスの肉だ。何かと思いながら、調理場へと向かえば……。彼女の腰は、大層曲がっていた。





「ど、どうしたのですか?」



「いやー、あまりにも多くてさー。小分けー? 保存用のお肉だから仕方ないんだけどねー!」





天井から伸びる有線にて繋がれた透明な筒達。それらを見れば、彼女が疲労した様子で調理台に手をついている理由を察することが出来る。





「ちょっとだけー、お願い出来るー?」



「もちろんです。お手伝いしますよ」





ファブリカからの救援要請。彼女の傍へ寄る際に、空間内に響く問い掛けに反応する素振りさえ見せず、黙々淡々と各々作業を続けている様を視界に収めていた。自らの進行と連動して変化していく視界の先に捉えたメノミウスの肉は、(いく)らかが調理台の上にて置かれているも、その多くは未だ吊るされ、宙に浮いたままである。





「それじゃあ早速ー! オネスティーくん! 肉達を一緒に運ぼうー!」



「お、おー!」





唐突に発生した今後の活動における声掛けと、変化した彼女の様子を受け、流されるがままに慣れぬ「賛同」を表に出す。先導するが如く開始された、メノミウスの肉の移動。それに対して、私は遅れぬまいと最も近くに吊るされていた透明な筒を開け、中身を取り出す。



空になった状態から 一度、下に向かって空の容器を引けば、何やら(つか)えが外れたかのように、上へと登っていく。作業に取り掛かり、内容物を得る。至る所に吊り下ろされている肉を回収するべく……この作業を黙々と、二人で続けたのだ。


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