192.集積/形骸
「……?」
「ダルミさん、もしかしてエムラトは地中に埋まっているのですか?」
「よく分かったのですよ。その通り、地中にある『塊』が目的なのです。あとはサオウと合わせて……この半分程持ち帰るのですよ」
「ここから、半分ですね」
私は、指し示された範囲を理解する。
これより行うであろう採取の段取りを予測した。
「では、始めるのですよ」
ダルミの指示に従い、先導して集め出した様子を少しばかり観察した後で、違和感を感じさせるべく速やかな手付きにて模倣し、採取を行う。エムラト、サオウ、入れ違いにて引き抜き、摘み取る。監視塔の入口付近、侵入時には見落としていた窪みに存在していた籠をダルミは持ち寄り、その中に食材を乱雑に入れていく。
これを機に、私はエムラト、サオウ、二足草、サオウ、エムラト……のように、連続して摘み取るものが重ならないように、そして蔓性の植物の後には紛れ込ませないなど、細心の注意を払いながら、籠の中身を満たしたのだ。
「このくらいで、足りると思うのですよ」
「なるほど、もしかして……茹で、ます?」
「そのつもり、なのですよ。どのような食べ方をするのかは、各々あると思うのですけど、どちらにせよ! 下拵えは必要なのですよ」
尋ねておいて正解だった。というより、考える時間が欲しかったのだ。茹でるなどといった状態変化。その働きには、二足草は耐えられない。記憶が定かではなく、記憶の喪失が疑われたが、すこしばかりの思考により……問題はないとの結論を出したのだ。
「なるほど……ですね。食事が待ち遠しいです」
「まさに、ですよ。トーピードは消費激しいですからね、尚更沢山摘み取って、茹でた分だけの空白分は想定しておきたいのですよ!」
手首や腰を器用に使って、効率良く地面から引き摺り出すダルミは、冷静かつ淡々と作業を行っていた。その様子を視界に入れてしまえば最後。私もそれに倣う。蔓を根元より掴み、引き抜く羽目になったのだ。
連続して現れたエムラトという植物は、まるで色が塗られた玉葱のような色彩を放っており、紫に近しく歪な形状をしている。サオウは基本的な植物の特徴を押さえている。そのせいか、大した違和感はない。何せ。色味や形に至っても、正しく二足草と瓜二つなのだから。
「それでは……戻るのですよ。籠は一つ、つまり左右で分担し、共有しながら運搬すると良いのですよ」
「ですね。戻りましょう」
ダルミの位置と対となった状態にて私は、把手を使って持つことで、大層重くなった籠を実感する。分担するとはいえ、これでもかと詰め込まれた籠。そして更地となった半分の地面を見れば、その重量は察することが出来る。
把手に手をかけた辺りで確信へと至り、踏ん切りをつける。そのままの形にて足を曲げ、形状を戻す反動的な動きに従い、腰から力を込め、持ち上げる。そして。均衡を保ちながら浮上していく籠を保持し、ダルミの指示のもと、元来た道に対して踵を返したのだ。