157.精錬/皮膜
確かなる揺らめき。
漆黒の不確定多重平面に存在する、まるで青白い炎のようなそれは、自らの感覚に作用するが如く、半ば強制的なる干渉によって熱を伝達させる。
視野を内包し……。
際にて保持する薄皮。
そこには、即効性の高い音波振動が、発生している。
その影響下に置かれた全ての感覚器官。
表皮を焦がす曳光蓄積物の存在を顕にさせた。
重苦しくもある膜を捲りとるが如く勢い、雪原を溶かす火炎弾。
黒色単一なる空間では接写的であり、塗膜的であった。
「……っ」
突発的に溢れ出した、息を弾いて噛み砕いたかのような音の原因。
外気に晒され、衆人環視そのものを滞留させる粒子によって……それらが安寧的に、形成されたことにあると考えられる。
可変的外界弁からの流出は、私が目にした新たなる「光景」によるものであり、その真新しい揺らぎが固定へと至った結果から、次なる恩恵の存在を……より密接的かつ好感触的に待ち望むことになる。
「とーうちゃーく!」
「=うん。無事に辿り着くことが出来た。うん」
「ア号姉妹ちゃん達にー、感謝ですねー!」
「ああ。正しく御苦労だ。それに彼女は引き続き改装に当たってもらうのだから、こちらも再会を視野に入れ……応えねばならないな」
背後から確認出来る、聞き慣れた声。
私の目と耳は異なるものをそれぞれに捉えており、多少の誤差を生みながらも修正を行うべく、片方である聴覚側に意識を合わせることにした。
一度は固定させ、その詳細を捉えるべく単振動を発生させていたが、背後より得られた異なる高低に対し、確変的決断として拘泥取り止め対面に至るまで、特別長大的な時間は、掛からなかった。
「この場所は……」
擬似的感覚による積年。
思い返してみても、確定へは至らない疑問に対して、その光景そのものに声として出力させたのだが……。
それを耳に捉えた後方の面々は、互いに向き合い。
私の言葉を噛み砕くように意思の疎通を図った。
「そっかー! オネスティーくんはー、初めてだもんねー」
「そうなのですよ。我々は元より見慣れた場所でありますからね。仕方がないのですよ」
「うんうん! 感謝の後は、説明、しないとね!」
「=うん。それが今後の目的に繋がる。うん」
「その通りだ。オネスティ。感覚の淀みから解き放たれたばかりで負荷が掛かるであろうが、示そう」
大きく口を開け、空から降る無を迎え入れるが如く様相を指し示し。
極めて丁寧なる表情にて向けられた視線は……。
私の内部に溶け出し隠された「一点」に深く作用する。
私が捉えた光景と、魔導騎士団頭領。
その面下部、口腔の所作とが連動するや否や、既に溶解していた機械仕掛けの細美麗、異文化折衷の装いを体現させた御令嬢を連想させてしまうのは、幾分か迎合に至れていない証拠であろう。