155.精神/反芻
「厳密に言えば違うのかもしれないのだけどー。私達も視界から一転してー、光が消え去る現象に陥ったんだよー!」
「そうですね。皆さんと異なる点といえば、繭のような物質に触れたことによってその影響を受けた、ということでしょうか」
「……繭?」
「そうそうー。今思えばだけどー、皆はその中に居たんじゃないかなって思うのですよー!」
「……はい。私とファブリカさんがこの場所に到達した頃には、既に団長さん達は確認出来ず、その異なる存在だけが鮮明に映し出されていました」
「なるほど。接触により視界は一転し、またこうして再会を果たしたとなると、その繭とやらに我々が集約されていたというのは間違いではなさそうだな」
「だけど、ますます謎は深まるばかりだね……」
「=うん。襲撃を目的とするなら危害を加えない理由が分からない。それに何か目立った効果が見られる訳でもない。うん」
「攻撃されずに、一箇所に纏められ、みんながみんな身動きが取れなくなる……まさか、だよねぇ」
「そうか、それこそが目的ってことになるんだぜェ?」
「……そうデスね。私達に足止めを掛け、行いたいことがあったのかもしれないのデス」
「……ま、そうとなったら思い当たる節は一つなんだろうけどナ」
「魔鉱だね! ……あは!」
別働隊として分かたれた私とファブリカが辿ってきた邂逅への道筋。
目にすることとなった「繭の存在」を語る中で……。
ア号姉妹の口から「魔鉱」についての言及が認められた。
彼女らの極めて豊富なる経験からか。
導き出された足止めとの目的を定め。
そこから得られる敵対勢力の目的を探し当てた。
私としては……。
このまま本来の目的が悟られず、この先に展開されるであろう彼女達の目的に繋がるのであれば、有難いところだ。
また、空間転移装置をもって拠点内のトーピード魔導騎士団を格納したことによって、恐らくその影響により双方向による通信は不能となったのであろう。
それら彼女達の疑問点に関しては、加えて修正を思考する必要はない。
「やはり。そこに繋がるのだな。……どうだ、ダルミ」
「はい。どうやら完全に揺らぎこそ見当たらないようなのですよ……つまり、この場に残されているのは、我々のみであることになるのですよ」
「ご苦労。この場に留めた術者とやらは、早々に立ち去ったと考えるべきか。例の男に関しては不可解な点があり、何らかの問題が発生したか、別枠の存在と考えることも出来る。……何にせよ、目的は定まったな」
「ですねー! こうして、幸いなことに身体自体は無事ですしー。……有難いことに、物自体はあるんだよね? オリヴァレスティ?」
「そうそう! あるんだよねそれが!」
オリヴァレスティは、自信ありげに背中から大きな袋を取りだし腕を組む。
意識から外れていたせいで、その極めて唐突なる対面に驚くことになった。
カトブレパスとの接触において、断裂を行った際に。
彼女達の「本来の目的」である魔鉱集めは……。
無事完遂していたのであると、理解が及ぶ。
それをもって、何をするのか。
私には、今後の流れから、極めて……。
それこそ、板挟みのような印象を抱かずにはいられなかった。
「=うん。この袋が盗られていないということも、判断材料になるね。時間稼ぎが主たる目的だね。うん」
「ああ。……今は、活動不能なる時間の発生にて、どのような影響を及ぼしているのか、判断は出来かねるが。それを幸いとし、行動へ進む。いつまでも敵の思うがまま、従ってやる必要は無いであろう。……アン、あとは任せてもいいか?」
「勿論! 同じ轍は踏まないよ! ……あは!」
「色々変えなきゃだねぇ」
「……ま、丁度いい頃合かもナ。安全性は高められるし、それこそ効率も上がるナ」
「だなァ! これから先は忙しくなるぜェ!」
「……そうデスね。第一歩として、まずは団長さん達を最も適した場所に送り届けなくてはならないデス」