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144.凋落/迎賓


出口だと示された面から勢いよく飛び出し……。

映し出された蛍光の光景を確かめる間もなく、先へと急いだ。



目もくれずに先導するファブリカを追い、元来た道をそっくりそのまま戻り、辿り着いたのは私達が当初に降り立った地点。



建物と建物との間にて形成された死角。

当然の如く人目につかない地点へと戻るなり、彼女は辺りを見渡す。





「……あそこだねー!」





指を向けながらにして喜びを(あらわ)にするファブリカの先を見れば……。

穴と、そこに入れられた一人の男が、確認出来た。





「あれは、団長さんが?」



「おそらくねー! 去り際に置いていってくれたんだよー、きっとー!」





イラ・ヘーネルが置いていったという穴の中の存在。

それは紛れもなく、私の擬態元であった。





「あ」





地に空けられた穴へと近づき、仰向けにて目を閉じている彼を手前へと引き出せば……背後から懐かしい物品が、鮮明に零れ出す。





「これー、オネスティーくんのやつだねー! ねー? 早く来た方が良かったでしょー?」





確かにその通りだ。



カトブレパスによる拠点の襲撃に関して急がねばならないのはお互いのことであるが、ここに置き去りにされていた「私物」を思えば、仮に少しでも機会が変化してしまえば、今の結果は得られていないかもしれない。



私が今こうして、自身の物品に対面出来ているのは……。

彼女の言う通り、急いで、この場に戻ったお陰である。



その事をよく噛み締め、紛失していないことを幸福であると思う他ない。



こうして私は────。

そんな核心を突いた言葉を投げかける彼女に、一言断り……。

元に戻る作業を、始めたのであった。





・・・・・・





私という存在が、この場にて倒れている「彼の顔」を纏っていたのは現在より事実であり、擬態を行うために大層な作業を経ていた。



身動きに幾らかの制約を設けられる衣類を取り外し、元の装いに戻れば、その軽快さに飛び跳ねたくなるほどであった。



私は、装いこそ元に戻ったその時に。

か細く過ぎるような、あることを実感として感じた。



……カトブレパス。

彼の言っていたことは真実なのだと。



彼が私を判別したのは、当初その振る舞いであるとしていたが、後述では機関から支給される機器にて位置を特定していたそうだ。



彼が言う機器とは、機関との連絡を行う通信機のことを差しており、通常、対象の左右どちらかの腕に取り付けられているものである。



私の場合には、通信回線は途絶しているが。

それについては彼は、知り得ていないと思われる。



彼が用いたという機能については、私には開示されていない情報であるのか、後付けで付与されたものなのかは分からない。



しかし、彼が再び息を保ち、活動をしているというのであれば。

私が単身となったその時こそ、それらについて明らかになるはずだ。





「……終わりました。すみません、お待たせして」



「いいのいいのー、それじゃー早速ー、出発するねー!」



「あ、ちなみに……」



「どしたのー?」



「いや、この人はどうなるのかなと」



「少し経てば戻るんじゃないー?」



「そうですか……」



「ま、顔も戻りかけてるみたいだしー! そろそろかなー!」



「え」


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