134.屈曲/配列
「オネスティーくんッ!」
背後より聞こえた、刺すような声。
紛うことなきファブリカの声は、私の動きを静止させた。
「……というわけで、オネスティさん。これから詳しい話をお聞かせください」
カトブレパスが腰から取りだし、私に向けた短い杖。
その先からは眩い恒星が姿を見せている。
「兄ちゃん伏せて!」
対峙する対象の変化、明らかに「話し合い」では済まされない現状。
確認すれば、背後のトーピード魔導騎士団から熱量を覚える。
オリヴァレスティにより告げられた待避的命令に従い……。
私は間髪入れずに足を折り、地に体を付けた。
────風圧。
地の感触を覚えるや否や、背後から全部にかけて新たなる「力」を感じる。
通り過ぎたそれは、少し先の人物周辺に着地し、辺りを粉塵で掻き消した。
「……皆さん」
私は肺に影響を及ぼさぬように、小さく呼吸をしながら背後を臨む。
頭を低くしたまま位置を移動させ……。
先程まで背にしていたトーピード魔導騎士団を求める。
「……っ?!」
刹那、私は身体に浮遊感を覚える。
突如とした温感にその存在を確認せずとも、記憶が教えてくれる。
「ファブリカさん……」
「オネスティーくん! 少し距離取るよー!」
私はファブリカその人に、腰を保持されながらに移動を行っている。
抱えられた状態にて、揺られる。
その先には……煙幕存在しない「人々」が待っていた。
「へーネルさん、これは……」
「おお、オネスティ。どうやら奴、魔術を行使したそうだ。……それを相殺して……今に至る」
「そうそう! 兄ちゃん危なかったんだからね!」
「=うん。荷物も放り出そうとしてしまったのだ。うん」
カトブレパス。
彼が向けた杖の先、それは魔術そのものであったのだ。
私に向けられたそれは……。
向かうことによって対向なる魔術によって打ち消された。
辺りを包んだ噴煙は、その産物である。
「……そうだ、カトブレパス」
自身でも理解の出来ない事柄。
伴う若干の長考加減を憂い、静止するべく声を出す。
彼が私の使用出来ぬ「魔術」を行使し、更なる話し合いを求めている現状を素直に呑み込めぬこともまた、流れを途切れさせた理由なのかもしれない。
「……おそらく、まだあそこであろう」