133.逆光/権益
「振る舞い……?」
唐突なる発見の根源に拍子抜けをし、反応に若干の滞りをみせる。
カトブレパスの口から告げられた言葉には妙な説得力があり、当初より感じた物腰の柔らかい印象を多方面的に増幅させる。
外部の情報についてをどれほど知り、何を企んでいるのか。
後方にて戦闘態勢をとるトーピード魔導騎士団を背に出来たのであれば、それを無下にすることはなく、彼との会話は慎重に行わねばならない。
「はい。なんと言いますか、特有の雰囲気です。それと情報を照らし合わせれば……」
「情報……あらかじめ予測していたのですね」
私は以前、つい先程ばかりに行われた会話を思い出していた。
……偶然。
彼は、あくまで私との出会いを必然的なものではないとしたはずである。
だが、溢れ出した言葉には……。
私という存在を「知り得た」状態にて、会話を繰り広げていたことが伺える。
「まあ。その様子ですと、あなたはご存知ないようですけど、機関から支給される機器には発信機能がありまして……」
「つまりそれで、私の位置を」
「そうなりますね。……これで疑いは晴れましたか?」
「……」
疑い……確かに私はカトブレパスについて。
その名称、調査員について疑問を抱いていた。
彼の口から一切の動揺なく告げられた、存在し得ない名称。
彼は私をあちら側のものだと信じていないのか、それとも、彼が部外の人間なのか……隠さねばならない「真実」があるのか。
様々な説が考えられるが、存在していない名称を何の変化もなく告げられるということは、ある程度絞られる。
会話を盗み聞かれているかもしれないこの状況にて、彼がこれ以上、加圧な情報を口にするのであるならば……。
その一端さえ判明すれば、問題はないはずである。
「気づいてますよ。私が機関の人間であるか疑っているでしょう。……もちろん当然です。この志願者名は一般解放されていませんから」
「……それが分かれば十分です」
「……?」
「ちなみに。調査員オネスティについてはご存知で?」
「いやそれがですね、私としてもあなたが名乗られた名称については疑問でして……」