132.茨道/曳光
暖色なる目的の達成を話題にし、袋を中心にして集まったトーピード魔導騎士団の誰もが、細やかな「一箇所」を見つめている。
柔らかな、掴みどころのない口調から生み出された緊張感。
現環境に私は、記憶と視界を掛け合わせていた。
「おい、あれは我々に向かっての言葉か?」
「んー、見えているはずはー……ないのですけれどー」
「でもファブリカ! あの人こっち完全に見てるよね?!」
「=うん。認識している……? うん」
「あれー……」
『あのー! 聞いてますかー?』
聞き慣れない声。
それは、この施設の侵入口から聞こえた。
音に顔を向かわせれば、そこにはあの男。
先程別れたばかりである、カトブレパスが立っていたのだ。
「……間違いないようだな」
「ですねー……どうやら認識阻害が効いてないみたいですー……」
「オネスティ。私には、あの男に見覚えがあるが、君はどうだ?」
「……あります」
「よろしい。さすれば、この状況を切り抜けた後、詳しい話を聞こう」
「……はい」
「うむ。となれば、これをどうやってだな……」
『何をこそこそと! こそこそと言えば、魔鉱をこんなに持って帰ろうとして……先程から怪しいと思っていたのですよ』
「イラ・へーネルさん、私に任せてください」
咄嗟に声が出ていた。
目の前に現れた男。
彼がこの場にいる限り、私の立場は危うい。
今いる環境を保全する為には、誠意を持って接しなければならないのだ。
「あの」
私は前へ出る。
トーピード魔導騎士団を背に、入口を塞ぐカトブレパスの元へと向かう。
「ああ! オネスティさん。またお会いしましたね! 嬉しいです……けど、だめではないですか。このような悪事に手を染めては……」
「カトブレパスさん」
「はっはい?」
「私達が見えているようですね」
「ああ、そうでしたね! ちょっとしたことですよ」
「そうですか。でしたら、これからどうするつもりです?」
「どうするって……あなたがたを、ですか?」
「はい」
「それはもちろん、通報、ですね。魔鉱を持ち去ることなどしてはなりませんから」
「なるほど、カトブレパスさんはそのような立場なのですね」
「同じようなものでしょう」
「そうとも言えますね。ですが、私とあなたでは異なる点があるようです」
「それは……?」
「では、ひとつ教えて下さい。なぜ、あの時。私がいることが分かったのですか?」
「……それは見れば分かりますよ。振る舞いです」