128.落下/退避
「よし、ダルミは警戒を引き続き怠るな。ファブリカ、あとどれ位だ?」
「そうですねー、回収を終える頃でしょうかー!」
「了解だ。急ぐとしよう。それでは、オリヴァレスティ。頼んだぞ」
「了解ー! いくよー!」
「=うん。展開。うん」
オリヴァレスティは杖を置く。
より身軽となった状態にて、両腕を左右に伸ばして手を広げる。
大きく抱擁するような姿をとる彼女の姿は、オリーの言葉を皮切りに変化を迎える。
端から端まで伸ばすように向けた二つの腕。
それは、五本に分かれた指に沿って割れる。
五本の細長い腕を保有する姿となった彼女は、その様相を自身で確認するなり、小さく頷き、盛大なる挙動の中で腕を振り下げる。
その連続する反動を力に。
今度はその無数の腕を振り上げれば、空中上に舞い上がる。
分かたれた腕のそれぞれが空中上にて飛び舞い、巨大脳の上に存在している果実のような球体へ向かって一直線へと飛翔していく。
無数の腕は小さな身体の少女から伸びており、その小柄な姿からは想像すら出来ない力強い挙動によって、実のなる枝は切り落とされる。
「出来た! 皆! 気をつけて!」
「=うん。落ちてくるよ! うん」
その言葉により、トーピード魔導騎士団は全員退避する。
壁際にて、上空の様子を眺める彼女達であったが……。
オリヴァレスティは、一人残されている。
迫り来る落下物に擦り切れる思いを抱き、気が気でない私ではあったが、その感情、その思いは杞憂であると示される。
オリヴァレスティは────。
伸ばした腕を身体の上に集約させ、落下物を防いだ。