127.状況/現状
「傷が、ない……」
「ああ、気づかなかっただろう?」
「はい……」
「それでいいんだ、傷がつかなかったのなら。……よし、ご苦労。戻っていいぞ」
イラ・へーネルは発現した人影に言葉を告げる。
さすればと、火柱生成者は、跡形もなく消え去った。
「……さて、オネスティも正常になった事だ。……ダルミ、周辺情報を把握してくれ」
「了解なのですよ」
「オリヴァレスティ、準備を進めてくれ」
「了解!」
「=うん。回収回収。うん」
イラ・へーネルは何事も無かったかのように……。
ダルミ、そしてオリヴァレスティに声を掛け、回収の準備を促す。
その他、周辺情報の把握を告げられたダルミの元へとより、何かの調整を行い始めたことにより、私は本格的に取り残された。
若干の焦げ臭さと、染み渡る脳内の記憶。
生み出された冷ややかなる現実……。
そこから、私は救われたのであろうと実感する。
「……ファブリカさん」
立ち尽くす私を見て、何を思ったか。
ファブリカは複雑なる笑みを浮かべ、隣に立った。
彼女も私と同様に、準備を行う光景を臨んでいる。
「まあー、あれ見たら普通じゃーいれないよー。団長なりの方法だからさー、驚かないであげてねー!」
「ですよね。私もどうかしてました。……おかげで目が覚めましたし、落ち着きました」
「────へーネル団長ー! 準備出来たよ!」
「=うん。いつでも問題はない。うん」
「うんうんーそれなら良かったー! じゃーあっちに合流しよっかー!」
ファブリカは人差し指と親指を繋げて円を作る。
それを掲げながらに、足を向かわせた彼女を見ながら……。
遅れまいと同様なる動きを行う。
その意味がどのようなものなのかは判明していないが。
やはり、決して悪いものでは無いと思えたのだ。