126.人影/火柱
「なんとかー……。でも早いところ回収を終わらせてー、退散したいですー」
「同じく問題はありませんですよ。確かになんとかではありますが」
「大丈夫! ……って元気よく言いたいけど、そういうものでもなさそうー……団長! 回収は任せて!」
「ああ、頼んだぞ。……オネスティ、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です。はは、こんなとこ、早いとこ出ましょうよ、はは……」
「おい、大丈夫か? ……そうだな、これなら」
突如として浮かび上がる人影。
霧を孕んだ人型は私を取り囲む。
円形となり、その手に火柱を生み出す存在は……。
私にとって、見覚えのあるものであった。
「これは、あの時の────」
私は気づく。
取り囲む人影が男性であり、ラムダ山へと落ちたその時に目にしたものと……紛うことなく、「同一」であるということに。
記憶が蘇ることにより、私にとってあらゆる感情を思い起こさせ……。
今や通り過ぎた火柱は、私の頬を裂いていた。
「え、これは……」
「オネスティ、少しは冷静になったか」
「あ、ありがとございますって、……怖いですよ」
背後より小さく炸裂した火柱。
以前より規模の小さな炸裂に頬を綻ばせつつも……。
私は、通過した辺りの皮膚に手を当てる。
……しかし、少しばかり拭って確認するも、色彩の変化は見られない。
つまりは、私の頬に傷などついていなかったのだ。