125.人間/魔鉱
「……な」
「やっと気づいたか。オネスティ、私達はこっちだ」
背後からの声。
私は何もかもを差し置いて、振り返る。
「皆さん……。あれは、いったい……」
私は目にした。
鮮明へと変わった視界に捉えた人影。
トーピード魔導騎士団であったと思っていた存在は……。
頭部のない無数の「人間」であった。
「これこそが、魔鉱を生成することに特化した形態。その統合施設が我々の目的地だ」
上部に黒線にて吊るされた巨大な脳。
そこから伸びる細い線により接続された無数の人型。
大樹のように存在する頭上の枝には、実のようなものが生っている。
「まさか、あそこに生っているのが、魔鉱ですか」
「ああ、正しく」
「魔鉱とは……」
「魔鉱とはー、大地に眠る魔素を吸い取ってー、凝縮したものなんだーその過程で魔石なんかが生まれるんだけどー、皆の目的はーその魔鉱だからねー!」
「そう、魔素から魔鉱を生成するには、人の体に溜める必要がある。……だから効率を考えれば、帝国のようにこうするのが一番いいのかもね」
「=うん。これは流石に信じられない。うん」
「うんうんー、人であるんだろうけどー、器、魔素を通すものとして退化してるみたいだねー!」
「ああ、人としての最低限の器官しか残されていない。脳の統一化により会話は不要であり、得られた莫大な人々によって、単一の個体として認識、機能し、魔素抽出、魔鉱生成の効率化を図っている。帝国とはそのようなものだ」
「これほどまでとは……確かに警備にあたる人材が見当たらないとは、頷けるのですよ」
「……皆、大丈夫か。何か異常を感じてはいないか?」
頭のない人間。
頭部より伸び、接続される巨大な脳。
その上に生る無数の球体。
私の背後に捉えたトーピード魔導騎士団を見れば……。
全員が全員、漏れることなくその異端なる物体を見上げている。
精神的な影響を受けかねない。
当初より耳にしていたその言葉はダルミの言う通り、これを見れば頷ける。
……少しでも気を抜けば、胃の内容物を撒き散らしてしまいそうだ。