123.不慮/言及
「この行いはトーピード魔導騎士団にとっても新たなる試みだ。情報でしか知り得ないものの『真実』を確かめに行こうじゃないか」
「……ですが、へーネル団長」
「なんだ?」
意気揚々にこれから向かうという帝国統合施設を臨むイラ・へーネルであったが、ダルミの言葉によって冷静なものへと変わる。
「見た限り扉らしきものはありませんですよ。それに警備が────」
「その心配はないぞダルミ。今は平時ではない……防御のない施設なぞ、口を開けて、どうぞと言っているようなものだ。このまま、そうこのままでいいんだ」
「了解ですよ。万が一は、なさそうですね」
「ああ、まあ。入れることは入れるが、その後の方が心配だがな。なあ、オリヴァレスティ?」
「そうだね! 紙面の情報しかないけど、精神的な影響を受ける可能性があって、だからこそなのかもね」
「=うん。つまり、警戒にあたる人間の存在についての問題は含まずとも良い。うん」
「その通り、認識阻害のおかげで見つかることもないだろうし、防御魔術は存在していない。今こそ、画期的な入場なのだよ……ファブリカ、他に何か気になるところはあるか?」
「いえいえー! ありませんですよー! あー……でもー、ひとつ言うならー、疲れましたー!」
「そうだな。すまない。よし、我々はこれより帝国統合施設へと侵入する。全員が一列に、壁に向かって進むのだ」
再び舞い戻ったイラ・へーネルの勢い。
横一列になっているトーピード魔導騎士団はその声掛けに従い。
団長を起点として、背後へと、回転する。
人通りを背にし、壁を前にしたトーピード魔導騎士団。
それぞれが、一列のそのままに前方を臨んでいる。