111.往来/小域
備え付けた装備品は重く。
板のような鎧と剛性の高い繊維にて形成された服によって、足がもたつく。
そんな私を気にすることはなく、進行の速度を緩めることは無いトーピード魔導騎士団を見て、経験の有無を感じた。
左右に覆い被さるようにして存在する電飾。
形作られた近代的通路の先に確認出来た煌びやかな入口。
そこを抜ければ、人の往来を初めて確認することが出来た。
「良かった良かったー! この道で合ってたみたいだねー」
「だね! 帝城にいざ行くとなったら、問題の中心地から離れつつ行かないとだね!」
「=うん。帝城への道順は頭に入っている。あとはいかに、この姿の恩恵を得られるか。うん」
「ああ、その点には注意しなければならない。接触は避け、あくまで帝城その付近までを進行するための手段だ」
「そうなのですよ。言うなれば、そこまでの時間を稼げれば、あとは侵入可能ですからね……」
「そうそうー、吸収にも時間かかるからねー! それまで辛抱ですよー」
往来。
確認される人々を見れば、男女共に。
下部に吸着率の高いような衣類を纏っている。
上面の衣類の大半は薄く……。
被るようにして着るであろう、それらを纏った人々が大半であった。
他方存在していた人々といえば、現在の私達のような鎧であったり、その他戦闘を行うべく生み出された効率的衣類を纏う者に大別された。
「ファブリカの回復に十分であるとし歓迎するべきなのだろうが、単調な道なりはそろそろ終わりそうだぞ」
「まあでもその分、すれ違う人々も道を間違えないようにしてるのか、忙しそうになる!」
「=うん。すると発見される危険性も下がると思われる。うん」
大半の衣服さえ見れば極めて安定的な印象を受けるが、視界の上方。
比較的広範囲に拡がって映った「黒煙」に彼らの表情は曇っていた。
人々が通りにて歩みを進めながら、その光景を一様に眺める様は……。
混乱そのものを形成し、私達の進行を容易にした。
平時とは異なるであろう現状。
トーピード魔導騎士団は、足を止めることは無かった。
・・・・・・
帝国領であるという荒野。
その端に点在していた建造物は、軌道の上に立ち、同心円状なる包囲網によって中央へとそれぞれが繋がっていた。
他方から軌道が集まり、集約され絡み合った「線」は強固な壁を覆う。
複雑に絡み合った軌道は壁を囲み、まるで血液……ここでは建物を通す管のように存在する光景は、まさに「循環」を連想させた。
そのような帝国の内部、確かに存在する生存圏は細分化される。
それは、王国とは大いに異なり、通り一つとってもその差は歴然。
百歩進めば曲がり角、分岐点、または行き止まり。
複雑な道は、国土に密集して存在する建物のせいであるのか。
……途切れぬが如く、未だ延々と続いている。
今や口を開けていたあの入口からの道順は頭の中から消え……。
行き先はおろか、帰る方法さえ分からない。
トーピード魔導騎士団。
幾多の曲がり角に直面するも、迷うこと無く進行を続ける。
列としてはファブリカが最も後方であったのにも関わらず、彼女が先頭のイラ・へーネルに報告を行なったことを機に、その並びは更新された。
『あのー、少しいいですか?』
最後列にて進行を追う、更に背後。
見知らぬ声と、肩に置かれた重み。
それらを感じ、振り返るまで時間は掛からなかった。




