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108.共存/変遷


予め保管していたもの。

イラ・へーネルが口にし、話題の本流であるオリヴァレスティを見れば、その手には紛うことなき「メノミウスの肉」が握られていた。





「ああ。メノミウスに自己復元の能力が備わっていることは、知っているな?」



「……はい。再生成を繰り返していると」





胴体の過半数を失い、首を落とされたメノミウス。

持ち得た常識に当て()めて考えれば、その状態での生存は絶望的だ。



メノミウスはそのような状態であっても呼吸を止めることはなく。

生命活動自体は依然として続いているという。



それも、空間の閉鎖によって流れ込む上部の液体によって……。

再生成が始まり、元の形へと戻るというのだから驚きだ。



これ即ち自己復元能力であり、トーピード魔導騎士団がメノミウスから得た恩恵なのであろうと、考えることが出来る。





「そうだ。その能力を元に顔型を取る事が可能なのだ」



「メノミウスの自己復元能力ー。それは複製を孕むものでー、肉を固形に押し付ければー、その通りに移してくれるんだよー!」



「単一生命体……。一個体で完結することによって他の要素を必要としない……」



「=うん。だからこそ今まで他の誰にも見つかってないんだよね。うん」



「発覚を間逃れているのは、ア号姉妹さん達が昼夜問わず管理しているお陰なのですよ」



「そうだとも。彼女が持ち得た空間を保持する力がなければ、メノミウスは圧死する。生存、その対価としてメノミウスは我々に食糧、複製能力。適性検査薬を齎す。その存在。その全てが我々の財だ。それを管理するア号姉妹もまた、重要な存在なのだ」



「つまり、メノミウスと共存関係にあるということですか」





ア号姉妹はメノミウスの討伐においての必要不可欠なる人員であり、その知識量からも空間内の存在について特化しているようであった。



外の世界に(おもむ)くことは出来ず、大衆店に偽装した拠点。

その内的空間の保持を任されている彼女達にとって、再生成を続ける存在は、正しく密接なるものだと考えられる。





「ああ。空間の保持を任として活動をしている彼女にとってはその通りだ。そして、それは我々にも関係しているのが現状だ」



「私達もー、メノミウスの存在からは切っては切り離せないんだよねー」



「そうそう! お肉とか! ね!」



「=うん。これより、その理由が明確になるでしょう。うん」



「ああ。となれば、手頃な人間を写す必要があるな────といっても頼り漬けでは先が見えん。少しばかり待っていてくれ」





イラ・へーネルがそう口にするなり、携えていた杖を通路の先へと向ける。



杖先から溢れ出した「影」は地を()い、(うね)りながら先へと進んだ。



いつしか見えなくなったその存在が、(しばら)くして戻ってくるなり、私達の周りにて形成された影溜まりから「四体」の固形物が吐き出された。





「ふー。成功だ。ファブリカ、ダルミ、オリヴァレスティ。すぐさま作業に取り掛かってくれ」



「はいー!」



「了解ですよ」



「うん! 分かった!」



「=うん。かしこまり。うん」





イラ・へーネルの言葉によって開始された行動。



影から吐き出された固形物は地面に横たわっている。



その周りにそれぞれ張り付いたトーピード魔導騎士団の面々は、残していたというメノミウスの肉を手に取り……相手の顔に押し当てる。





「これは……」



「……ああ。心配するな。息の根は止めていない」





影を深々と(まと)っているがために、形状については定まらないがその固形を見れば、人の形をしているのだと少なからず思える。





「この行いは、イラ・へーネルさんによるものなのですか?」



「影を用いてここまで連れて来た。目的は彼等の顔型を取ることだ。……まあ、そのために存在を抹消する必要は無いからな」



「そうそう! その影の中では、記憶がへーネル団長によって管理されてしまうんだ!」



「=うん。だから必要が無くなる。うん」



「そうなのですよ。捕らえられたという記憶と、蓄積される記憶を継続的に奪えば、我々にとって無害と成り得るのですよ」



「……蓄積、記憶。って」





その言葉、そして自らが受けた境遇から思い出す。



この複製空間へと移動を行った時。

最初期に出会ったオリヴァレスティは、私のことを記憶喪失であると告げた。



背後に吸着していた「アルバス」の記憶吸収作用によって記憶を無くした者であると接していたが、後にそれが偽りであることが示される。



……そう、イラ・へーネルによって。



蓄積された記憶を奪う能力などアルバスにはないと言い切った彼女……。

オリヴァレスティが私を騙す案として提案した「記憶喪失」の一連は、それを元にしたのではないかと考えられるのだ。





「そういえば、そのような話をした覚えがあるな。まあそうまでしなければ、こうはなってないわけで……」



「オネスティーくんの情報を得た私達はー、何よりも先に接触する必要があったー。その存在はー誰しもが欲しがる重要なものだからねー!」



「そうなのですよ。再び帝国に奪取されようものなら大変なことになるのですよ。……例外もおりますが」



「まさか、この帝国に他の……」


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