100.混線/目的
「第三者ー? って、まさか今もー!?」
「今は確認できませんですよ。ですが、危機的状況へ陥り連絡を試みたのですが。間に別域の存在が認められ……敢えて本来の計画は伝えずに『盗み聞き』をされている前提で思念伝達を行ったのですよ」
「なるほど、だから緊急事態であること以外の情報がなかったのね」
「=うん。あれだけだったら本当に何かまずいことになってるんじゃないかって思うよね……ってそれが意図なのか。うん」
「そうなのですよ。私も断腸の思い……本来ならば計画を共有して円滑に、そしてもっと早くに合流を求めたかったのですが────苦悩ですよ」
「そうかー、じゃあ仕方ないかー。誰かに聞かれてたならー、本当のこと言う訳にもいかないしねー」
「それに、阻害が発生していたのも大きいね」
「=うん。複合的な障害。うん」
纏まりつつある発生した現状の説明。
私に情報が開示されなかったのは……。
阻害、そして思念伝達を盗み聞く第三者の存在でもない。
……私が情報を知り得ていれば。
このような結果へと至らなかったからであろう。
つまり、魔術槍の戦闘情報を漏れなく記録するために、「危機的状況」を深々と刷り込ませる思惑が……あったのだ。
長距離柱型魔術槍。
その完成に私の蓄積した情報が組み込まれている事を思えば、未だ画面に映し出されたままである焦土と化した巨塔跡地を直視することが出来ない。
当然、彼等彼女等の考えに理解は及ばず。
明らかにしておきたいことが、山のようにある。
しかし。
それを思うがまま背景、そして前後関係を視野に入れず、無垢なる「気持ち」にて質問を重ねることは、まさに愚策である。
何せ私は、このトーピード魔導騎士団が、未だ何を主たる目的とし、行動に至っているのかを……掴めていない。
そのような状況にて、確立された「本流」を塞き止めることは……。
堅固なる城壁、その決壊を意味する。
「そうですよね。そうしましたら、次の行い……今後についての説明をしようと思うのですよ」
「そうだねー、ダルミ。私達はこれから何をするのかなー」
「私とへーネル団長は、シュトルムの反乱により捕らえられていると帝国に伝わっているはずです。……なので、これより迫る魔術士群に脱出の光景を見せることによって、任務は完了されるのですよ」
「魔術士……来るんだよね」
「=うん。あれだけされたらね。今や帝国は魔術に対する防御を持たない無防備な状態だからね。第二、第三を懸念すれば、元を断とうと考えるよ。うん」
「そうなのですよ。来る敵……迫り来る敵に、私達の脱出を知らせることにより、反乱の信憑性を高める計画です。それを行うために使用するのが……射出なのですよ」
ダルミは小さく頷く。
何かを変革させるが如く面持ちに、若干、印象の誤差が生まれる。
「シュトルムさんの設備を用いて、より大掛かりに脱出を演出するのですよ。遠くからでも広く、伝わるように……」
「うんうんー、それじゃあ私達はー、シュトルムの所から離れてー、帝国の魔術士達にその様子を確認してもらうわけじゃなーい? 空中へ飛び出した後ー、目的地はーどこー?」
「それは勿論────帝国ですよ」
「帝国ー? って、認識阻害かー……私の出番ねー」
「王国へ行くなら、魔術士に離脱を信じさせることが出来るけど……帝国へ行くんじゃあ……ね」
「その点においては問題ないのですよ。どうやらファブリカは気づいているようなのですよ」
「ま、まあ。一旦、視認可能状態で王国へ向かって、その後は頃合いを見て不可視化。認識阻害を付与した状態の中で……戻れば帝国へ気付かれることなく向かえるとは思うんだけどー……ねー?」
「そうだね。ファブリカ。……ねえダルミ。帝国で、何をするの?」




