11 戦闘終了
「くそっなんだコイツらは!?」
ラグナ王国軍の最新型アームデラート『ダートヴィート』は、イグラート国の量産型アームデラート『イーヴァント』よりも機体出力が上がっており、一対一では棒立ちしていなければほとんど負けることはない。棒立ちであっても、装甲が厚いため、数回なら攻撃に耐えられる。とてもイーヴァントに負けるような性能ではない、はずだった。
「なんで当たらねぇんだよ!?」
二機のダートヴィートのパイロットはなかなか倒れないイーヴァントに苛立ちを覚えていた。これまで彼は何度も戦闘を経験した優秀なパイロットだった。それがなぜ今、こうも手こずっているのか。それは、イグラート国のパイロット『リグド』と『エルダー』の技量によるものであった。彼らはダートヴィートの攻撃を華麗にかわし、隙をついて攻撃をしていた。目立った外傷はイーヴァントにはなく、ダートヴィートには多くの傷が刻まれていた。その多くが右腕に刻まれている。だが装甲の厚いダートヴィートには、それほどのダメージはなく、まだ戦えるようであった。
「こっちも限界か·····」
リグドは刃の潰れ歪んだ剣を見下ろしながらそう呟き、敵の動きを観察していた。何度も攻撃の為に切りつけたため、剣は切れ味が下がっているどころか、ほとんど何も切れない状態だった。
〈·····あと一回で勝負を着けるしかないな。〉
作戦は既に決まっていた。それをエルダーに伝え、作戦を決行した。
〈あいつら強いな。ま、もう剣は使い物にならないようだし、そろそろ終わらせるか。〉
ダートヴィートのバーニアを一気に吹かせ、速度を上げた。しかし依然としてイーヴァントに動きがない。
まさか諦めた訳では無いだろうな?と思いつつ接近する。そのときようやくイーヴァントが動き出した。距離を詰めてきたイーヴァントはいきなり軌道を変え、ダートヴィートの左右にまわった。一瞬反応が遅れたダートヴィートのパイロットは、それを理解する前に激痛を味わった。パイロットが気づくと、コックピットの左側のモニターが、中央にひびを残し機能を停止させていた。中央モニターに目を移すと、付け根から切断された左腕が転がっていた。そのとき右からコンクリートを砕く音を立てながら倒れる物体があった。それは、右腕を失ったダートヴィートであった。
〈左腕を失ったか。だが、まだっ〉
「右手を、忘れるなぁー!」
ダートヴィートのパイロットはそう叫び、右手に握ったアックスで前方を凪ぎ払った。が、既にイーヴァントはその間合いから避け、次の攻撃の構えをとっていた。
「馬鹿な!?」
そう叫んだ直後、イーヴァントがこちらに向かってきた。そしてその手に握っている一振りの剣を、高く振り上げた。そしてそのままダートヴィートの首の付け根から真下へ剣を振り落とした。それと同時に剣が半ばから折れた。
こうしてラグナ王国軍のアームデラート三機の奇襲攻撃の鎮圧が終了した。
ワッカンナイヨォ!