1 戦いの前に
鉄でできたコクピットが折れ曲がり体に突き刺さっている。
これで17人目。この2ヶ月で起きた戦闘での死亡者だ。リグドは共に戦っていた友の変わり果てた姿を呆然と眺めていた。
「もういいだろ、リグド。」
後ろから聞こえた声の主は皆の機体を整備する整備士のワーグナーだった。その細い体を見る限りでは大型起動兵器の整備士には全くみえないが、腕前はここにいるなかでも一番というほどすごい男だ。
「いきなりここに来て、すまなかった。」
「いいよそんなこと。友達に最後の挨拶くらい· · · 」
そこでワーグナーは少し悲しそうな顔を浮かべ、赤くなった目をおさえた。彼は昔から元々(人が死ぬ)という事にとても恐怖心を抱いていた。それがこの2ヶ月間で17人もの友人が死ぬなど、本当であれば彼は耐えられないはずだった。しかし、今彼は我々が乗る起動兵器の整備士だ。我々戦士の命を守るため完璧な整備をすると彼は決めていた。今のような状況でも彼は必死に機体を整備している。
「お前は、俺達のために変わったんだな。」
工房の片隅で、リグドはそう呟いた。
「最近俺達の国負けてんだってな~」
「戦争だぞ!そんなのんきに遊んでいいのか!」
「どーせ戦うのは俺達じゃあねーんだぞ?俺達に何ができるんだよ。」
大きな公園の前で三人の中学生が歩きながら話をしていた。
「それは· · · そうだけど· · · 」
「ていうか敵さんは新型機を使ってんだろ?勝ち目なくねーか?」
「こっちの機体は四十年前にできたやつだろ?」
「デザインも悪いしな~w」
「こっちの軍と敵軍では五倍以上の戦力差があるし· · ·圧倒的過ぎる · · · 」
「あ···あれ?ツッコミは?かんけえーねーだろってツッコミは·····」
「でもこっちは整備士の腕がいいんだろ?」
「それだけじゃ· · · かてないんだ· · · 」
すでに日が傾き辺りには静けさで満ちていた。今この国が戦争をしているなど分からないほどに。