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COLOR  作者: たぁく
8/16

姫君奪還戦編 1『襲撃』

こんにちは!たぁくです!

今回はこの前書きに設定集を載せたいと思います。

突然ですが、すみません。

では、今作も楽しんでくだされば幸いです。




2025年


独立都市

峰神島



characterキャラクター


大瀬おおせ 白虎はくと

主人公。

colorは白と黒

髪はストレート。色は白。

年齢16。身長177cm 体重64㎏

非適正者。

性格は(少し)素直にはなれないという欠点はあるが、家族を殺されて以来、誰も死なせない、死なせたくないという覚悟や決意によりどんな状況でも、他人の救出を優先する。

その為に独断行動もやや多め。時折無邪気な1面も。

小学生の頃から多数勢のケンカに絡まれた経験が何度もあり、多数勢との戦闘を得意とする

過去に千火に両親を殺され、自身も殺された経験がある。

唯一の友達であった幼馴染みに殺されて以来、人との関わりをなるべく避けて来た白虎だったが、莉佳の強引な勧誘により部活に入ったことがきっかけで戦いに巻き込まれていく。

能力は悪魔順位第七柱の千火から引き継いだクリエイト(能力複製)と七柱から固定される能力。不老不死

欠点は半悪魔という件であり、魔力が尽きることで即死、上半身と下半身の切断で即死となっている。

攻撃の際も魔力を使うため、長期戦は苦手とする。



イリーナ・シグ・スフェア

当作のメインヒロイン

colorは透明

髪はショート髪の色は橙色だが、所々龍に侵食され、髪の色が黒に変色している。

過去に暴れ狂う暴龍の生贄として捧げられたが、暴龍はその際贄として彼女を喰らわず幼い時期のイリーナの体内に侵入した。

永遠の14歳(?)身長142cm 体重38㎏

性格は素直で独り言が多い(中の龍との会話)14歳の頃から絶大的な力を持っており、人々から恐れられてきていた為寂しかったせいか、甘えん坊でからかいや冗談も時折。

能力は神龍ヒュドラをベースにした猛毒の黒焔。

自身の発生させる黒焔に触れた者には高濃度の魔力による侵食攻撃で滅殺する。

自身と香り、体格、表情、声帯全てが完全な人形を黒焔で作り出し触れた者を滅殺する、鞭状の形に焔を変形させる、銃携帯に変形させる。と多種多様の戦闘方法を身に付けており、現時点、彼女に対抗できる者はこの世に一人として居ない。



千火ちか

colorは黒

髪は長めの黒髪

16歳の少女の姿をした、元順位2柱の悪魔界の女王。

幼い頃の白虎(5歳)に興味を持ち、接触するが11年の時を共に過ごし、彼に異質な好意を抱くようになった。

性格はヤンデレ(?)、そして大の冗談好き。だが、時折見せる狂ったような言動と、行動は未だ謎のまま(ネタバレの為)

白虎以外の全ての存在を否定し自身と白虎の邪魔をするものには容赦ない鉄槌を下す。

現在は白虎の肉体の中におり、白虎の刀であり、彼との魔力供給等を行っている。

能力はクリエイト(能力複製)と7柱からの固定能力不老不死。



悪魔期の彼女は悪魔階級2柱程の実力を持ち、元王にいきなり身体を求められ接吻された際舌を噛みちぎった事で悪魔の上質な血の味を覚えてしまい、悪魔喰いへと変貌。

部下等を食い荒らし、現在の悪魔の頂点に居座るサタンによって拘束。

階級を7柱まで引きずり下ろされ、独没での生活を余儀なくされた。

三年ほど服役していたがやがて逃亡し、現在悪魔界では彼女は発見次第殺害。という重い対処を指定されている。



篠見 莉佳しのみ りか

年齢17。

身長151cm 体重47kg

非適正者。

茶髪のポニーテールの少女。白虎より一つ上の2年生。

白虎が3年や教師に罵られている光景を目撃したが、彼の無気力な態度に憤りを覚え接触した。

中学時代に交通事故に遭い、中学1年生前までの記憶を失っている。

中学三年生から非適正者と適正者の両立を目指し、適正者達と輪を広げようとしたところ、完全に拒否され、時には暴力も振るわれた。それから差別というものを知り、非適正者達を呼びかけ集めた部活、〝みんな仲良く平等に〟(尚多少の嫌味も入っている模様)を設立した当本人。

性格はおせっかいで積極的。部活ではみんなのお姉ちゃんのような存在だった。


大村おおむら 俊吾しゅんご

身長197cm 体重67kg

年齢19 3年生

非適正者。

髪は短め。髪の色は黒。

性格は極めて喧嘩腰で、本人にそのつもりは無いらしい。何かと早とちりもしており、本人が納得いくまでは決して考えを改めない頑固さがある。

白虎とは莉佳が誘った昼休みの購買が初の顔合わせである。


壱乃 恭夜 (いちの きょうや)

colorは紫と黒

年齢23歳

身長189cm 体重59kg

髪は黒

若くして、ギルドグレイルを従える団長。

頭脳明晰で戦闘能力に長けており、その戦力は人間の最大80倍の力のある中級悪魔の軍団を一人で殲滅してしまうほど。

刀の名前は月影

能力は影を〝斬る〟ことが可能な妖刀を操る。

扱いの例としては影を切断した場合、実物にもその影響が及ぶ刀だ。

つまり彼と敵対する場合、自身の身だけではなく、影にも気を取らなければならないという高度な技術が要求される

恭夜自体にほとんど能力はなく、この妖刀月影からの魔力を主として戦っているが、恭夜自体悪魔と人間のハーフであり、高い身体能力を持っている。


赤宮せきみや いずみ

color青と黒

年齢は15

身長158cm 体重51kg

髪の色は金髪、ポニーテール

10歳の時悪魔に殺されそうになったところを恭夜に助けられた過去をもつ。

刀は所持者に絶対なる成功、幸福等をもたらす白銀の刃 。女神アブンダンディアの加護を使用することが出来る神剣、白卑はくひ

恭夜には異常なまでの信頼を抱いており、どんな任務であろうと彼に同行し100%以上のサポートを行う。

最近少し肉がついてきて、凄く悩んでいるとか。いないとか。

幸福よりは成功の面に能力は大きく傾いており、悪魔討伐への成功、の場合、可能な限り最大のサポートを行うことが出来る。

例を言うなら敵の攻撃が食らわない悪魔の場合成功が不可能である。よって攻撃は当たるようになる。といったサポートが可能になる。

ただしサポート中の本人の戦闘能力は皆無になってしまうのが、唯一の欠点。


岸田 樹(きしだ いつき)

colorは赤と黒

年齢23

身長190cm 体重65kg

グレイル屈指の破壊力を持つメンバー。

髪は白髪の長髪でウルフより少し長いくらいの髪だ

破壊力に関しては白虎が、以前戦った悪魔アルカダのダイヤモンドより硬いとされる装甲を素手でいとも簡単に砕くという

代わりに動きが極端に遅く、悪魔の群れなどに囲まれた時点で勝利は一気に厳しくなってしまう。

よって仲間の援護は必須である。

尚魔力を拳に集中させ放つことで広範囲の衝撃波を放つことも可能らしいが、どうも樹は上手く出来ないようだ。

武器などはなく肉体自体に能力が反映された稀なタイプである



魔王サタン

身長358cm 体重182kg

悪魔界の王。暴走し手のつけようの無くなった千火を数秒で無力化するほどの実力を持つ。

能力はオールマイティー(全能)

このサタンのみ、能力解放を4段階まで解放でき、

一段階目が筋力など全ての肉体系統の能力を100倍に引き上げるというもの。

二段階目は彼の周囲800mの者の能力を無力化するという能力。

三段階が全悪魔の能力を使用することが出来るという能力。

四段階目は明らかになっていない。

発動条件が死ぬこと。であり、他の超上位悪魔と違い、不死を捨てた代わりに圧倒的な力を手に入れた。


施設

ギルド グレイル

非公式対悪魔殲滅独立部隊

適正者それぞれに、千火が起こしたクーデター時に死んだ超上位悪魔たちの細胞を体内に取り込むことで、本来拒絶反応によって身体を蝕みあい、所有者を殺してしまうところを、超上位悪魔特有の不老不死の能力を利用し、適正者達が悪魔の力を使用することを可能にした超高戦力部隊。

団長は壱野 恭夜

副団長は不在との事


南支部異能者管理事務局所属学園

能力者を管理、育成、実戦経験を積ませ、悪魔との戦闘に向かわせる機関。

だが、戦闘に向かわせるのは少尉迄であり、それより実力の上の適正者達は皆高みの見物をしている。


用語


非適正者

リアルで言う一般人の意。

現在非適正者の方が少なくなりつつある世界であり適正者(能力者)の方が悪魔から逃れられる為である。非適正者は一般的に人間の失敗作として世間から罵られている


適正者

リアルで言う能力者の意。

この世界ではこの適正者が一般人とされている。

能力者にはそれぞれの属性(色)が決められておりその属性に見合った能力となっている。


例外者

人間でもなく、悪魔でもない。

そして例外者とは悪魔も適正者も凌駕し、本当の意味で世界を支配することの出来る存在。

現状は例外者は一人の少女しか居ない。



悪魔階級

その通りの意。

悪魔には0〜30までの階級が存在している

0〜7までを超上位悪魔とし、彼らには個別能力の他、固定能力として不老不死が備わっている。そして全ての超上位悪魔が上位悪魔の約20倍もの力を誇っている

8〜30までを上位悪魔とし、中級悪魔、初級悪魔に比べて、格段に優れている。

戦力は中級悪魔のおよそ10倍以上。


中級悪魔

ゲームなどでいう一種の中ボスの類。

能力は所持していないが、初級悪魔の5〜10倍もの戦力を持っている。


初級悪魔

ゲームなどでいう一種の雑魚に分類する悪魔。

勿論の事、能力は所持していないが人間の5〜8倍もの戦力を誇っており、非適正者なら頭部を殴るだけで容易く殺害することが出来る


だが欠点があり、どの悪魔も肉質に関しては人間の5倍程度の硬度しかない為(魔力による肉質カバー、能力は除く)、重火器等を要すれば射殺は可能である。不意を突くことが出来れば上位悪魔も例外ではない。



能力解放

上位悪魔が能力を解放するのに必要な魔力解放。

本来は群れの長の命令がないと使用は許されていない。

そして本当の驚異は人間の最大800倍もの力を持っている上位悪魔が更に個々の能力を使用可能になるということだ。



拒絶反応

悪魔に有効な殺傷能力のある〝適正者〟が悪魔の力を得る際に起きる現象。

適正者の色力と悪魔の魔力が互いに相殺し合うことで人体に非常に大きな負担をかける。

その負担を容易に死を誘い、容易く人を殺めることが出来、何より成功した際のその者がどうなってしまうのか。何もかもが不明のため禁忌の一つとされている。


だが例外として、壱野 恭夜が統一している独立ギルド『グレイル』では、この禁忌の力の習得に90%以上の可能性で成功しており、悪魔達に猛威を振るっている。

彼は、超上位悪魔達特有の力を身体に取り入れることで、悪魔の不老不死能力が拒絶反応時に働き、不死能力と拒絶反応が相殺されることが判明し、現在に至った。



峰神島

3年前、悪魔に撤退を余儀なくされ続けた人間達が故郷を棄て、太平洋に作り出した500km程度の小さな人類の最後の砦。

悪魔に対策するため、様々な重火器が保管されているが、それも気休め程度にしかなっておらず、やはり適正者たちの命懸けの防衛により現在を保っている。

日本の建物をモチーフに作られているこの島だが、3年の悪魔の進撃により200km程の地域が悪魔によって衰退している。


色(color)

色は全てで7種類

黒、白、青、赤、紫、黄、透明の七種類であり、

黒は基本的に悪魔全般

白は非適正者

青は傷を癒し、肉質の強化を促す

赤は悪魔の硬い装甲をも砕く破壊特化の爆裂

紫は妖艶の幻覚系統

黄は周囲と同化するほぼ完璧な保護色

透明は悪魔、適正者以外を示す。



魔力

悪魔が力を使用するのに必要とされる力の源。


龍力

人でもない、悪魔でもない、例外者が使用するのに必要とされる力の源


色力

適正者達が使用するのに必要な力の源。能力発動時の色の濃さによって、実力がある程度わかってしまう。

濃ければ濃いほど強い

この悪魔の世界。所謂異世界にも、季節があるのか。

今日は白虎にそう思わせるに相応しい天候だった。

肌をじりじり焼くような暑さ、地面を焼き付ける太陽、焼かれた地から放たれ、空へと向かっていく熱。

それを彼らに運ぶ風。

俗に言う真夏。温度計で測れば容易に40度に達しそうだ。

異世界なだけあって暑いのか。

そして現在5000ものグレイルの兵達が整列している。

暑苦しいこと、この上ないのだ。

そして先頭に立つのはグレイルを創立した張本人。団長こと壱野 恭夜だ。

『いいか!俺達の目的は一つだ!』

やはりこの異世界にも王と姫は居るようなのだ。

そしてこの度、異世界の姫がこの世界、ウルスラグナへの襲撃により攫われたのだ。

周りを見渡せばわかる。

所々に未だ流しきれていない兵士の血液が地や壁に張り付いており、建築物もいくつか破壊されている。

『俺達の目的は!姫の救出ではない!』

「!?」

一同全員が顔の色を変える。

それもそうだ。王の命は姫の救出だったのだから。

『第一優先事項は、この度、俺達の世界に侵入する経路を知った反逆者達の殲滅、お前達の命だ!第二優先事項を姫の救出とする!』

あぁ──

また始まるのか────

血腥い死の連鎖が──────


だがその前に。

一日前の話をしよう。



(んん?)

(俺は確か、あの女にやられて────)

白虎が感じたのは、2度と味わうことは無いだろうと、自身で腹に括っていたはずの心地よい感覚。

「ん……」

白虎はそっと目を開ける。

辺りは眩しいほど真っ白な部屋だ。

先程の心地よい感覚はベッドだったのか

薬臭。

病院なのだろうか。

身体を起こし周りを見渡す白虎。

「特に……変わった様子はない…………か」

そう言って今度はベッドから出ようと……

その時右腕にグッと引っ張られるような謎の抵抗を感じ、シーツを捲り右腕を確認する。

「んん〜むにゃ……」

あの時白虎を殺そうとし、二人に傷を負わせた少女が、白虎の右袖を握っていた。

「……………………………………?」

思考が停止する。

わけがわからない。

俺を殺そうとしたのではないのか?

とにかくこの状況を長引かけるわけには、いかない。

「おい!」

少女の身体を揺する。

「んへへ…………ん、んん〜ふぇ?」

少女が目を覚まし白虎と目が合う。

「おい!お前なん────」

「うっ…………ご、ごめんなさい!!!私!あなたから発せられる魔力で、勝手に悪魔と判断して散々酷いことを!」

彼女の甲高い声によって、白虎の威圧寄りの声は全てかき消された。

「待て、勘違いってどういうことだ!?あの二人をやったのはお前なんだ────っ!?」

彼の言葉が最後まで続かなかったのは

「起きんのが遅せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

後頭部を何者かに蹴り飛ばされる。

「きょ、恭夜さん!?」

そう。このギルド グレイルの創立者であり団長の壱野 恭夜だ。

白虎の頭の中が一瞬真っ白になる。

「な…………にすんだテメェ!」

振り返った白虎は、男の胸ぐらを掴もうとする。

だが男は少し身を引くと白虎の手を掴み、腕を捻る事で強制的に白虎の背中を床に叩きつけさせる。

「いっ……てぇ!」

「速いな……お前」

余裕の表情で椅子に座り、恭夜と呼ばれた男が言った。

「あの恭夜さん!怪我人だよ……ううん、怪我人ですよ!?」

敬語が焦りで崩れ、慌てる少女。

「っ……余裕な顔しやがって……それで?俺はなんでここに?あとこいつは……」

そう言って少女を見つめる白虎。

「あぁ?そいつはー……あれだ。お前の友達を守ってくれてたんだ」

頭をポリポリと掻きながら男が言う。

「なっ……!?」

唖然とした。

それもそうであろう。

彼からは女が二人を殺した。その図でしか目に入らなかったのだ。

守っていたと言われ、もしそれが真実であれば、自分はどれだけの仕打ちをしたのか。

「な!?じゃねぇよ。だから謝ってたろ?そこのチビも」

恐る恐る視界に少女を入れる。

「ッ!?」

少女は緊張しているのか、ぎこちないが笑っていた。

怒ることもなく。

微笑んでいたのだ。

「その……お、俺!」

地に膝をつき、頭を地につける。

「俺は……何も知らずに自分の推測で!お前を傷つけた!勝手にお前を敵にして……俺、なんて謝ればいいのか…」

その姿を見たイリーナは、慌てて彼を起こそうと、近寄る。

「そんな!いいよ!私だってあの時、あなたに攻げっ─────!?」

慌てていたイリーナは、ベッドのシーツに気付かなかったのだ。

そう。蹴り飛ばされ、直ぐ様起き上がりつっかかり、叩きつけられ。

先程のやんちゃでシーツがずれていたのだ。

「どうした!?」

白虎が顔を上げる。

刹那────

彼の目を視界が真っ白に染まり、何かプニッと柔らかな感触が鼻を包む。

温かく、適度な柔らかみの二つの割れ目。

表面は布のような質感に対し、とても柔らかいのだ。

そして蒸れた臭い─────

「────ぴぎぃぃぃ!?」

少女の悲鳴により、白虎が我に返る。

そこに男が立ち上がると、突如「莉佳、大変だー!!!」と叫ぶ。

「ひふぁ!?」

と布に覆われ口にすることは出来ない。

「んっ…!」と少女の身体がピクンと動く。

訳も分からないまま、突如(ぶふっ……!)と胸に響く声。

この声も二度と聞けないものだと思っていた。千火だ。

(やっぱり俺が死んでないって事はお前も生きて────って!お前いつから起きて…………)

「あ………あの………………」

少女が話しかけるが、その声は恥じらい故に枯れ枯れで声にすら、なっていなかった。

(とりあえずっ……ぷっ…………手離して上げたら?)

笑いを堪えながら白虎に忠告する。

当然本人は何も気がついていないのだが。

「ん?」

オブラートに包んで説明しよう。

イリーナが慌ててドジをし、転び、白虎の顔面に下半身から本当の意味で、女の子を守護する布ごとフルダイブ。白虎はそれに気が付いておらず、イリーナの太ももを鷲掴みにし、固定している状態なのだ。

(あ……手遅れみたい)

(????)

「どうしたの!?」

慌てて病室に入ってきた莉佳が目にした光景は、こうだ。

これもオブラートに包ませてもらおう。

男の顔に座り込む(違う)少女。

その下半身をグッと支え、嗅ぐ男。

そんな図だ。

「ちょっ……起きていきなり…………白虎って……そういう趣味だったの!?」

何が何だか未だに全く理解出来ない彼を、我慢の限界に達したイリーナが、白虎の肩を蹴り、後ろに下がる。

「いい加減に……ダメ!!」

顔を真っ赤にしながら後ろに下がり、下半身を抑えながら白虎を睨みつける。

「っ!?」

ようやく理解した。

顔を青ざめ、突き刺すような軽蔑の眼差しで睨みつけてくる莉佳。

顔を真っ赤にし、下半身を抑え、睨みつけてくる少女。

全てが整った。

このあと彼はどうするべきなのか、考えるまでもないだろう。

だが、彼には弁解でもなく、浮かんだ事はひとつだった。

「莉佳!生きてたんだな!」

そう言って、歩み寄る白虎に莉佳は

「近寄らないで!お願い!本当に!」

彼は強く軽蔑されていた。

「酷くないか!?そんな言い方しなくても──」

変わらず、近寄ろうとする白虎。

「寄るな!下がれ!直れ!」

何処の指揮官だよ────

そう思いつつも後ろに下がり、言った。

「じゃ、じゃあどうすればいいんだよ……」

「謝って!」

莉佳が言う。

元々転んできたの相手なんだけど────

そう思いつつ、わざとではなくとも、イリーナの足をホールドしていたのも事実だ。

仕方なく、深呼吸をすると、清ました表情で彼は床に膝をつき、静かに手を下ろし、頭を伏せて言った。

「すみませんでした」

その後イリーナを連れ、病室を出た莉佳だったが、彼がまともに口を聞いてもらえるまで、半日を要したとか───────



数時間後。

午後7時半。

全ての事情を恭夜に知らされ、彼は罪悪感、自身の愚かさへの憤り等の感情で、心の淵に飲み込まれそうになっていた。

「はぁ……」

グレイルにはそれぞれの団員の部屋が用意されている。

部屋の大きさは三畳半と、団員の数で考えるとかなり広い。

自分の部屋のベランダに出て、白虎はため息をついていた。

(どうしたの?)

(いや…………俺、すげぇ悪いことしたなって……挙げ句の果てパンツにも突っ込んで…………)

(満更でもなかったんじゃない?痴女みたいだし)

「そういう事言うな!?失礼にも程があるだろう!」

不意の言葉に思わず声をあげてしまう。

「っ!?」

白虎は急いで、ベランダから部屋に入り、ベッドに腰掛けると

(なぁ、本当に失礼だからやめてくれ。痴女とか……言うなよ……)

(なんで?聞こえてないんだから大丈夫だって)

(聞こえないから、影でいうとか、そういうの大嫌いなんだよ。俺は)

そう言って、ベッドから立ち上がるとシャワールームへ向かう。

(小さい頃みたいにお風呂、一緒に入れないね)

(疲れなくていいよ)

そう言ってシャワーを浴びる白虎。

頭と身体を洗い終わった彼は、頭から水を浴び、眠気を覚まし、シャワールームを出る。

(どこか行くの?)

(あぁ……ちょっと図書館に)

(なんで?)

(悪魔に関する書籍があるかも知れない)

(んー、悪魔のことばっか)

呆れた様子で千火が言った。

(俺は今の自分自身にも、腹立たしくてしょうがねぇんだよ)

(なんで?)

(俺は……悪魔の力を使って今も生きている。確かにこの力のおかげで、俺は悪魔を倒せてる)

(けど、それ以外に方法がないじゃん)

(だから。だから腹立たしいんだ。今にも死にたい気分だよ)

(白虎……)

(けど。だけど。お前がいるから。お前が一緒だから、俺は今も頑張れる)

(っ!!な、なんなの。今更)

恥ずかしかったのか千火が多少、声が籠もる。

(デレ?)

(う、うるさい!)

(はは、行こうか)

衣服を整え、部屋の出口へ向かおうとした時。

「……なんだよ」

シャワーを浴びていた間に侵入したのだろう。

岸田 樹が彼の先程まで座っていたベッドに腰をかけていた。

「図書館はやめとけよ」

数時間前、恭夜に全てを知らされている最中、苛立たしい程のジョークをマシンガンの如く放ってきた樹の事が、正直のところ白虎は、好感度がマイナスに近い状態だった。

「…………なんだよ。さっきとは違って冗談でからかっては来ないんだな」

冷たい眼差しで言う。

「さっきは悪かったって。俺も新人に早く心を開いてほしくてだな───」

「弁解するなよ。冗談が元々好きなんだろ」

冷たい眼差しが樹の瞳を射貫く。

「鋭いなぁ……そうだよ。俺はお前をバカにしてたよ謝る。悪かったな」

樹の目に偽りはなかった為か白虎は少し声を和らげ言う。

「それで、図書館に行くなってのはどういうことなんだ?」

「今はいーかない方がいーい気がすんだよなぁ?」

「なんで疑問形なんだよ。こっちが聞いてんのに」

やはり樹の喋り方に白虎は苛立ちを覚えてしまう。

「最近、俺達グレイルの事をよく思わない団体さんが居てな?そいつらに襲われるかな〜って」

どういうことだ。

グレイルは人間の天敵である、悪魔を最小限の犠牲で倒す事が出来る、現時点、最高の部隊だろう。

「そいつらは人間なのか?」

「当たり前だよなぁ?」

チッと舌打ちしながら白虎は言う。

「なんで、そいつらが図書館に居るってわかるんだよ」

「俺は図書館に居るなんて一言も言ってねぇよ?」

「ッ!!」 樹の胸ぐらを掴み、白虎が言う。

「お前!いい加減にしろよ!?こっちはガチでやってんだ!お前が何を考えてるか、お前がどうしたいかは知らないけど、これ以上掻き回すな……!」

「怖いなぁ……わかったよ。わかった。少しやり過ぎたな。行けよ」

胸ぐらを掴んでいた手を離すと、白虎は踵を返し言った。

「少し熱くなりすぎたな……悪かった」

そう言って彼は部屋を出た。



「はぁ……」

(どうしたの?白虎)

(いや……少し疲れただけだよ)

白虎はグレイルにあった地図を広げ、図書館へ向かいながら、〝中の少女〟と会話する。

「あれ?」

(ん?)

歩いていた白虎が立ち止まる。

「場所間違えたかな……」

(白虎……方向音痴?)

(そういうんじゃねぇよ。道はあってるはずなんだけど……な)

(待ってね?)

千火が周囲の道を分析していく。

(お前、そういうことできたんだな)

(ここ魔界だから。微量ながら魔力は未だ健在だし、風で流される魔力の流れで道はわかるよ)

(なるほどな)

白虎が千火の分析が終わるまで、周りを見渡す。

(あれ?)

千火が不意に口にした。

(どうした?)

(ここ、道があるはずなんだよね。この建築物に魔力が通ってる)

(つまり────〝この建物はないはず〟ってことか?)

白虎が問う。

(そういうこと。この建物幻術か何か、そういう類のものだね。幸い人は居ないし、能力使っても良さそうだよ?)

(そうか。頼む千火)

白虎はポケットに突っ込んでいた右手を引き上げると、手をかざし言った。

バチバチと赤黒い、電気に似たような魔力が、白虎の右手から放出される。

だんだんと、形がはっきりしてきた武器を掴み取る。

実体化した〝千火〟を振り上げ、幻術に向かって振り落とす。

「クリエイト!(能力複製!)」

(ロード。能力の構造の分析を開始。ロード完了。複製に成功。分解するね)

幻術で作られた建築物が粉になって消えていく。

「すげぇ……」

(実態の無い程度の物なら、これくらい余裕余裕♪)

(とにかく、この先に隠さなきゃいけないことがあるって事だよな?)

(そうなるね。嫌な予感がする。早く行こう)

心でそう言い合うと白虎は走り始めた。



数分後。

(走るのはいいけど、どこ行くんだよ……)

(今のところ、幻術を張った本人は観測できないんだよね)

白虎の思考が停止しかけたの時。

大地を揺さぶるほどの爆発が起きた。

ドゴォォォォォン!!

とダイナマイトそこらでは、到底起こせそうにない爆発。

熱気がこちらにまで伝わってくる。

「あっつ……」

熱気に肌がじりじりと焼かれ口から漏れる。

(白虎!近いよ!)

「俺……図書館で悪魔の資料読みに来たはずなんだけどな!!」

本音を吐き捨て、白虎はこれ以上はないと言うほどに力を振り絞り、地を駆けた。

(悪魔の身体能力増強ってこんなに便利なんだな……)

時速70キロ弱で疾走する白虎が千火に言った。

(もう少し出るけどね)

(これ以上は俺の足がもつれるよ)

そして、爆煙が絶えず出る建築物を確認した2人。

その建築物は、豪華で、セキュリティも万全、部屋は何百とあり、まるで〝人間では到底、侵入すら不可能な構造〟をしていた。

(白虎、気をつけて。絶対只者じゃない)

「おや?招待状を出した覚えはないのだが?」

1人の少女を抱えながら、燃える階段をびくともしず、降りてくる男。

「殺れ」

男が口にした途端、何処からともなく現れた5人の暗殺者らしき者達が、白虎を襲う。

「手加減は……できそうにないな!!」

千火を引っ込めると、斬りかかってきた男の1人の腕を掴み、もう片方の男に叩きつける。

その際に男の刀を奪い取り、三人目の攻撃を凌ぐと、腹部を全力で蹴り飛ばす。

(一応、悪魔の身体能力強化は、現在進行形で機能してるからね。見た感じ人間っぽいから、気をつけないと死んじゃうかも)

更に、斬りかかって来た男の腕の骨を、肘打ちで叩きおり、激痛で男が手放してしまった刀を蹴りあげ左手で掴むと、背後から迫る男の左肩に突き刺し、壁まで無理矢理に押し込み、壁に固定させ身動きを封じる。

それと同時に腕を折った男の顔面を蹴り飛ばす。

直後、2階から飛び降り、斬り掛かってきた男の斬撃を避わすと、その男の背中を斬りつける。

戦闘不能になった男達に致命傷は無いか、気を使い見渡す白虎に、少女を背負った男が言う。

「素晴らしいな……これ程とは。だが、生憎遊んでいる暇は無いのだよ。悪いな」

そう言って男は一つの球状の物を取り出すと白虎の足元に投げつける。

刹那────

その球状の玉は二つに割れ、強力な閃光を発すると共に、耳を壊す程の高い音波を発生させた。

「ッ!!閃光弾!?(スタングレネード!?)しまった!!」

(千火!場所は!!)

(途中まではわかる。けどあの人一般人だから索敵は…………)

(クソ!逃げられた!?)

そして2人はある音に気がつく。

ピッピと少しずつ大きくなる微かな音に。

(白虎!)

「チッ!!」

まだ視界がはっきりしない中、がむしゃらに地を蹴り、爆発に備える。

こんなに音が早く聴こえたのも、悪魔の身体能力増強の恩師か。

直後、先程の数倍大きな爆発が白虎を襲った。

数分後。

「ゲホッゴホッ!」

(起きた?白虎?)

(起きたよ……)

身体が重い。

(俺。死んだのか)

(うん)

「…………なんで人間同士で殺し合わなきゃいけないんだ」

そう言いながら、先程白虎に奇襲を仕掛けてきた男達の焼けた亡骸を眺める。

肉の焦げた臭いが白虎の鼻を刺激する。

「起きたか」

聞き覚えのある声。

そちらを振り向くと、恭夜が立っていた。

恭夜を含む、グレイルの部隊数人が調査に来ていたのだ。

「まぁ……随分派手にやられたな、油断するからだ」

「油断するからだ。か……なんも言えねぇよ」

そう言って立ち上がると、続けて白虎は質問する。

「こんだけ広いんだ。他にも人が居たろ?」

「居たよ」

「……生存者は」

「0」

「クソ……」

最悪の答えだった。

一番聞きたくなかった答え。

「まぁ生憎、ここは別荘でな。王は助かったみたいだ」

「生憎なんて言い方……すんなよ」

そして、未だに燃え続ける屋敷を眺める白虎。

────俺は、無力だ。

「っ!」

そんな彼の頭を恭夜が不器用に撫でる。

「一回戻るぞ。この世界の王様は、お話があるみたいだ」


状況をまとめるとこういう事だ。

この世界の王の事をいいように思っていない、所謂反逆者達が、王の実の娘である、姫を攫い、人質に取り、彼等の思うように王を動かそうという判断のようだ。


だが、本来王と言うものはどんな人質を取られても、絶対に自身が民によって動かされる事など、あってはならないのだ。

だが、この王は大の娘好きなのだ。

よって、現在最高の戦闘能力を誇るグレイルが王命を受けたのだ。

内容は、グレイルの命に変えてでも、娘を守り抜き、奪還すること。



数日後。

暑い太陽に焼かれながらも、グレイルの隊員達全員が成立している。

「いいか!!俺達の最大の目的は姫の救出ではない!俺達の目的は、最小限の被害で、敵を倒し、我々の手の内を明かさないことにある!」

隊員達が身動ぎ一つ無しで、恭夜の話を聞いている。

「俺にとっては、姫の命なんざ関係ない!大事なのは、お前達が生き残ることだ!確かにまだ歳も15と小さな女の子ではある。だが!俺達人類の最後の砦が、潰されるわけにはいかない!大を助け、小を捨てる!いいな!」

「はっ!!」

彼等の忠誠心の固さはここから来ているのだろうか。

そう考える白虎に、イリーナが喋りかける。

「莉佳ちゃんから、聞いたよ?白虎君の性格。助けるんでしょ?」

「当たり前だろう」

「サポートは任せてね!」

小声でそう言った、彼女の表情は満面の笑顔に包まれていた。

そんな彼女に一瞬でも、心臓が高鳴った白虎。

それに密かに嫉妬する千火。


あぁ─────

悪魔の次は人間か─────

また始まるのか。

血生臭い殺し合いが。

前書きにいきなり設定集を載せてしまい、申し訳ありません。

さて、ついに今話から新章姫君奪還戦編です。

相手は一体どんな反逆組織なのでしょう……

誤字脱字ありましたら教えて下さると、幸いです。

次話の投稿は決まっていません。

ですが今回のことで知り合いが家にまで押し入って来たので、少し反省していますw

次回はもっと早く出せたらいいです。

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