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COLOR  作者: たぁく
7/16

グレイル

ふぅ……やっと1章終わりです……

どこの誰だよ1週間で終わりにするって言ったヤツ……(笑)

本当に大変です。

全然思いつかなくて妥協した時期もありましたし……みんなそうなのかなぁ……

では、1章の終話お楽しみください!!

激痛で失神していた白虎だったが意識を失って2時間近くが経ち、瞳をあける。

「いた……ぃ……」

白虎が呻く

(白虎!?聞こえる?)

千火がこれまで以上に心配した表情で白虎の意識のす有無を確認する

(なん、で傷が治らな……い?)

(ごめん、さっき殴った人。相手が悪かったみたい)

どういうことだ。

適正者なのか

(さっきの子は黒龍舞姫って言って悪魔の中でも7位以上の超上位悪魔の中でのみ知られてて悪魔にとったら虫唾が走る程に不利で嫌な相手なの)

なら何故白虎は殴られたのか

(ならなんで……俺は……)

「ぐぅ!?」

激痛に白虎が声をあげる

(ごめん……白虎……それは、あなたから半分しかないとは言え、悪魔の臭を感じ取ったんだと思う……)

罪悪感からか語尾が少しゴニョゴニョと聞き取れなかったが言いたいことはわかった。

(俺……死ぬのか?)

恐怖を押し殺し質問する

(…………うん)

その言葉は淡々としていたが、確実に白虎の心を抉りとった

先程助かったばかりのはずが再びの死の危険────

本当の意味での死

(どうすれば……助かる?)

(それは…………)

彼女は口篭る

(頼む…!俺はまだ、まだ死ねないんだよ!千火!)

たった一つ、たった一つだけ彼が助かる方法がある。

だが、彼女は

(…………ごめん。ない)

それは白虎にとって最悪の答えだった

千火は昔から冗談を言うのが好きだ

今回もそうだ。きっと冗談だ。そう信じて彼はもう一度問う

(嘘言うなよ……あるんだろ?こんな時くらい……)

痛みで顔を顰める白虎

再生と侵食が相殺し合い、激痛が走る

魔力が尽きれば一瞬で侵食され、白虎の身は食い尽くされるだろう。

「そんな…………」

ここで終わり。

彼女達が生きているか死んでいるか。それさえわからずに終わり。

死への恐怖より自分には誰も守れないという悔しさ、その方が大きかった。

目元に涙を溜めながらもそっと瞳を閉じ────

その時

「見つけたぞ」

何者かの声が閉じかけていた瞳を再び開かせる

白虎は今負担をかけることなく動かせる唯一の瞳を動かし声の主を探る

「ここだよ。電信柱の上だ」そう言って声の主は自身の場所を彼に伝える

言われた通り白虎は電信柱の上へと目を向ける

目が合った彼は「よお」とだけ手短に挨拶をすると電信柱から飛び降り白虎へとカツカツ……と音を立て近付いてくる

悪魔だ

「クソ……」

白虎が悔しげに呟く

「お前か……アルカダを殺したのは」

返事をする余裕はない

完全に詰みだ

「っ……」

もてる力でなんとか立ち上がり刀を構える。

身体中が痛む

「なんだ?お前。本当にそれでアルカダを倒したのか?」

悪魔が視界から消える

「あぁ、最後に自己紹介だけしておこう。俺の名前はアルビダ、アルカダの兄になる。順位は10、アルカダを倒したとなると少し興味深かったが……残念だ」

(!?)

千火は〝アルビダ〟という名前に異常に反応していた。

だが彼らは知る余地もない

特に白虎。余裕もないのだ。

突如白虎は視界が真っ暗に染まり、謎の浮遊感の後背中に激痛が走る。

顔面を鷲掴みにされ、そのまま電信柱に背中を叩きつけられたのだ。

バギィ!という音が身体に響くと同時に、メキメキ……グググググ……バゴォ!と衝撃に耐えきれず電信柱が折れる音

そのままアルビダは未だ鷲掴みにしている白虎を電信柱の落下地点に放り投げ、下敷きにする

「が……ぁ……」

「ふむ」

アルビダは、下敷きにされ身動きの取れない白虎の顔面を無慈悲に蹴り飛ばす

メキグチャ!という音が彼の頬から発せられた右頬の骨が砕かれたのだ

「あ……う……」

脳震盪が発生し言葉も喋れない状況に至った白虎

「残念だ」

そう言って鞘から金色の剣を抜き、白虎の首をアルビダは跳ねる

(白虎──────ごめんね……)

千火がそう言った気がした

スパンッ!という音を立て白虎の首が胴体と分かれる

ゴトン、と静かで重い音。

切断された首の断面から血液がピチャピチャと絶え間なく滴る

「呆気なかったな。手負いでなければ俺から逃走くらい出来たかもしれんのにな。運の悪い男だ」

そう言って彼を蔑むと、アルビダは踵を返す

アルビダは気付かない

白虎の頭部が粒子状に変化し首の断面に吸い込まれるように戻っていくことを。

そして数歩歩いたところでググググ……と重い電信柱を持ち上げる音が静かな夜を染める

「なに!?」

そう言って振り返ったアルビダの面前には既に異形の刀が迫っていた

「く!?」

ガギィン!!と顔面を切り飛ばさんと迫っていた刀をアルビダは紙一重で防ぐ。

「ん……なんで止められちゃったかな」

「お前は……誰だ……?」

「あなたがよく私のことは知ってると思うよ?」

「なんだと……!?」

10柱のアルビダにはその言葉の意味がわからなかった。

「ふふ♪ふふふ♪」

そう言って白虎、いや千火…………いいや違う。

そう言って〝悪魔〟はアルビダに攻撃を仕掛ける

「白虎…………白虎!絶対絶対絶対助けてあげるからね……!こいつズタズタにして助けてあげるから!」

そして白虎の肉体であり、狂気に満ちた悪魔はアルビダを斬りつける

「ぐっ……」

迫ってくる刃を防いではいるものの、アルビダにはそれが精一杯だ

「お前は……誰だッ!」

そう言って斬りつけてくる刀を右手で掴みとり千火という名の悪魔を殴りつける

メキメキ……という音はしたがそれ以上はない。

「んん……いい匂い」

「ッ!?」

アルビダは生存本能からか、掴んでいた刀を手放し距離をとる

だが遅い

「カートリッジ」

そう言って悪魔は速度強化のカートリッジを取り付ける

刹那─────

白虎の体をした悪魔は宙を浮く

「!?」

一体どんな能力なのか。

まるで〝あの人間には重力が影響していない〟かのような……

そして悪魔は魔方陣を展開させ陣を踏み台にし、一気にアルビダへと迫る

カウンターを狙うためギリギリの間合いで避けようと身を引くアルビダだったが、悪魔とすれ違った瞬間アルビダの身体はバランスを失う

「な!?」

千火の速度強化は重力の抵抗を無くすことにより高速で移動することを可能にしたカートリッジだ。

そして付け足すと彼女のみ無重力が適応するのではなく、〝彼女の半径1mを無重力化〟するというカートリッジの能力だ

本来一度も無重力を体験していない者が、それも突然周りが無重力空間になったならどうなるだろうか。

バランスを失ったアルビダの喉袋に悪魔は歯を突き立てる

ブチチ……!!

歯を食いたて喉元から滴る血液からアルビダの魔力と生気を吸い取る

アルビダは悪魔の腹を蹴り飛ばし体制を立て直す。

「ぐ……あぁ…………」

ハァハァ……!と必死に呼吸を整え傷口を抑えるアルビダ

「やっぱり上位悪魔だね。喉袋喰いちぎられただけじゃ死なないか……」

ジュルリと頬や口の周りに付着した血液を舐めとりながらが言った。

そして悪魔は地面を蹴り、再びアルビダに斬り掛かる

狙いは首。

喉元を抑え、出血を抑えていたアルビダは片手でその剣戟を受ける

ガギィィン!という甲高い音が響くがアルビダの黄金色の刀がギシギシと悲鳴をあげていた。

「ぐ……う……」

とアルビダが呻く。

「力を使いなよ……アルビダ……あなたはこんなものじゃないでしょ?力も使わないのに私の攻撃を、しかも片手で防ごうなんて…………嘗めるのもいいところだよ?」

少しずつ力を加える

少しずつ少しずつ防いでいた腕はだんだんと押されていき、アルビダの肩に少しずつ刃が食い込んでいく

「へぇ……首から逸らしたんだ……」

「もう一度言うぞ…………お前は……!誰だッ!」

「…………」

更に千火は力を加える

ズブブ……と刃が刀に食い込んでいく

「ぐ…………クソがぁぁぁぁぁあ!!!」

アルビダは叫んだ。そして彼の秘められた力を解放する

本来許可が取れなければ使用禁止とされている能力解放だが、現状このまま許可を待っていては命はない。アルビダはそう判断したのだ

「うん。それでいいの。これで私も……使える」

「お前……悪魔か!?」

アルビダが言う

「ふふっ♪クリエイト«能力複製»」

「くっ!?」

アルビダは悪魔の腹部に拳を叩きつける

だが悪魔はそれを難なく避わすと言った。

「その顔……自己紹介は要らないよね?」

「悪魔喰いの千火か……!」

そう言ったアルビダの表情には嫌悪と殺意が浮かんでいた

「まだ……わからないのか……!元第2柱ともあろう誇り高き悪魔の女王が共喰いにより降格され、追放され…………それでもまだ尚!悪魔を食らうのか!そして、あろう事か人間に寄生して生きるとはッ!!!」

「そういう細かい話どうでもいいんだよね」

千火は答え、更に言う

「あなたの能力は確か触れた者を自在に操ることが出来るっていうヘンテコな能力だったよね」

黙り込むアルビダ

「…………」

続けて千火が言う。

「あなた……能力解放してからまだ私に触れてないよ?」

「昔の俺と思わないことだッ!元帝国の姫よ!」

アルビダは0.5秒足らずで5mほど先に立つ千火に右手で触れる。

その腕を掴むと千火はアルビダが能力を発動させる前に腕を握りつぶし、激痛により能力発動の遅れたアルビダの首に指を突き立てる

「ぐっ……が……」

グチャグチャと首元を抉り、骨を掴む

そしてその骨を砕き腕を右方向へと振るう。

骨の支えがなくなり、いとも簡単に右側の皮が破れる

ブシャァァァァァァ!!と行き場のなくなった血液がまるで噴水のように吹き出す

「ク………………ソ……」

最後にそう言ってアルビダは地面に伏せる

「ほんと、階級10柱程度で勝てると思ってたのかな」

アルビダの死体にまたがると、犬のように四つん這いになり肉を噛みちぎり捕食する千火

魔力と生気をひたすら吸い上げる

「んっ……ぷはぁ……」

彼女が死体から口を離す

「ごちそうさま。次はこの忌々しい呪いの処理かな……折角の魔力を失うのは辛いけど」

そう言ってアルビダに残された全ての魔力を吸い取った千火はイリーナの呪いを相殺させ、打ち消す。

だが

「ッ……!」

急な立ちくらみに頭を抑え電柱にもたれ掛かる千火

「これでも……やっぱり私の魔力を半分以上使わないと解呪できない……みたい」

そう言って索敵を開始し、周りに悪魔が居ないか確認をする

「よし……」

そう言って近くの公園へと行き、顔や腕についた血肉を洗い流す

「白虎が見たら、あの子絶対ショック受けちゃうから……」

口をゆすぎ胃に不快感の残らぬよう不要な肉を全て吐き出す

「うっ……ぇぇぇ!!」「がはっ!ごほっ!」と静かな夜に響く声。そして数分が経過し

「はっ……はっ……はっ……」

流石の千火でも生まれて1度も嘔吐をした事が無かった為、相当の消耗だったのだ

「とりあえず……白虎は安心だね」

そう言って割と太めの木にもたれかかり、ガチャン!と白色の再生効果のあるカートリッジを装着し、疲労を取るため目を瞑る。

(白虎。目を覚まして…………)



「もうすぐ……つくね」

かなり体力を浪費したのか、莉佳が疲れきった表情で口を動かす

「全員無事だといいが……」

大村が言う

そして、歩くこと6分

待ちに待ったトラックが見え、トラックからは二つの人影が覗く。

「やった…………!生きてる!生きてるよ!?」

そう言って莉佳は限界に近い身体の事さえ忘れ、足に力を込め走り出す。

だがイリーナにはトラックの中は莉佳が見てはいけない光景が広がっている。そう思えた

それは大村も同じく感じていたことだった。

だから

走る莉佳の腕を大村が掴む。

「行くな!莉佳!」

「え……なんで!?」

莉佳が激しく抵抗する。

それも仕方が無いだろう。

言い方は悪いが彼女の頭の中に広がるのは現在進行形で都合の良い〝お花畑〟なのだから。

「それはだな…………」

だがこれ程までに嬉しそうな顔をした莉佳に大村の思っていること。いや恐らく真実であろうことを大村には口にできなかった。

怖かったのだ。唇が震える。手が震える。

言わなければ─────

その事で頭がいっぱいになってしまっていた大村。

刹那────大村が掴んでいた温かく細く、柔らかい腕は大村の手の中には既になくなっていたことに気がつく。

莉佳は既にトラックのドアに手をかけていた

「まて莉佳!俺がみ─────!」

大村が莉佳を抑えようと走りながら言う。

だが大村が言い切る前に莉佳は

ガチャン─────

ドアを開けた



「う…………」

白虎が目を覚ますと見知らぬ公園の太めの木にもたれ掛かっていた。

あれ、俺確かあいつに殺されて──────

周りを見渡しながら考える

「千火が助けてくれたのか?」

蝕まれていたはずの腹部も綺麗に再生し、痛みは一切感じられない。

(ん?起きた?白虎)

(起きたよ。なんか……元気ないな?大丈夫か?)

(うん?全然大丈夫。ちょっとやっつけるのに手間取っただけ)

白虎には心配をかけまいと偽りを口にする千火

今回千火がアルビダを捕食したのには理由があった。

元々白虎の不老半不死の能力による治癒能力は微弱な魔力を使用しながら治癒をするものだ。

ただし、死亡時は例外ではあるが。

白虎の蝕まれていた腹部の呪いはその微弱な魔力で打ち消せる程度の物だったのだ。

本来なら触れた時点で消滅していただろう。

だが、今回の攻撃の呪いは、千火による忠告と高濃度の不死魔力、そして千火独自のスキル索敵によってギリギリのタイミングで薄いとはいえ魔力の膜を貼ったことにより呪いの直撃を避けたのだ。

微弱で相殺できる程度ならアルビダの魔力で相殺は可能。

そう思った千火だったが、現実はそう甘くはなく、自身の限界に近づいていた魔力も使わされる羽目になってしまったのだ。


(そうか……なんか、悪いな)

白虎には千火が嘘をついていることはお見通しだった。

だが、きっと白虎が傷付くようなことだからこそ嘘をつき、隠しているのだろう。

(なぁ、一つだけ質問させてくれ。冗談は抜きで、あいつらが死んだ。とかじゃないよな?)

(私の知る限り、それはないよ。それに死んだとしても、非適正者の彼女達は索敵できないからね。わからない)

(そうか。そろそろ探さないとな…………そうだ!戦闘状態になってる悪魔探してくれ!そこに居るかもしれない!)

ある1点を除けば名案だ。

だが千火にとっては〝名案〟ではなく、〝迷案〟であった。

何故なら千火の魔力は底をついている。

その事は既に白虎にもアルカダ戦後に告げていることなのだ。

(白虎死ぬ気?あなたは半悪魔なんだよ?)

千火にとってそれは非常に不愉快であった。

出会って二日しか経っていない者の為に今もこうして何度も死に、怪我を負い、身体を引き裂かれるような痛い思いをして、挙げ句の果て飛んで火に入る夏の虫状態だ。

(あと何回死ねる?)

白虎が静かに問う

(…………3回)

(変わってないな?なんでだ?)

(ふふっ♪私を誰だと思っているの?格下悪魔になんて負けないよ。それに時間も経ってるから魔力も回復してるし)

「頼もしいな…………よっ!」

そう言って寝転がっていた身体を起こす。

「二回死んだら逃げるよ。今戦闘をしている道案内してくれよ。出来るだけ敵と出くわさないようにな!」

そう言って白虎はカートリッジ速度強化を使用すると、一気に宙を駆けた。




(なぁ─────千火、お前さ、五種類のカートリッジがあるんだろ?)

無重力により空中に浮かび、魔法陣を生成させそれを蹴りつけることで高速で進む白虎が言った。

(あるよ)

(筋力強化とかのカートリッジ?の詳細を教えてくれないか?)

(どうしたの?いきなり。いいよ)

そう言って千火は説明を開始する

(まず最初に赤の筋力カートリッジね。文字通りの意味しかないけれど、筋力が20倍。

次に肉質ね。青のカートリッジで文字通り筋力が20倍。

次に空間攻撃。紫のカートリッジでこれは対象部位が空気に触れていれば、半径150メートル以内に入ってさえいれば強化はできないけど攻撃ができるよ

次に白の超高速再生。これは特別で魔力の消費が多めになるけど重ね合わせができるの。赤と白とか、青と白とか。

最後に黄。速度強化だね。実際は自分を中心に半径1m無重力化する能力なの。この能力も重ね合わせができるの。移動時には若干の押し出し効果のある魔方陣を展開しながらそれを蹴って移動するの。まぁこんなもんだけどなにか質問ある?)

(白黄赤とかできるのか?)

白虎が問う

(できるよ。赤のざっくり5倍くらい消費魔力多くなると思うけど)

つまり再生能力を強化しながら速度を上げ、火力を上げる。なんてことも可能という事になる

(なっ!?なんでそれもっと早く教えてくれなかったんだよ!?)

(制御無理だったと思うよ)

(なら今はなんで出来るんだよ)

(私が白虎の身体乗っ取って色々バンバン使ったからじゃない?)

千火の言うことは事実ではあるが、実際最も関係しているのはアルビダを捕食したことによる白虎の基礎魔力上昇と、白虎が微量だが悪魔に近づいたことが関係していた。

(あ、あぁ…………そうなのか……なんか悪いな)

(さっきから白虎謝ってばっか)

そして千火はプイっと顔を逸らした。ような気がした。



「行くな!莉佳!!」

走る莉佳を全力で追いかける。

勿論のこと陸上部である大村がなんとか追いつく。

だが大村が莉佳の腕を掴んだのと莉佳がドアノブに手をかけ引こうと力を入れたのは同時だった。

ガチャン!と音がする

だが幸いドアを開く前に大村が引っ張ったことによりドアはすぐに閉まる。

「バカ!悪魔がいたらどうす─────」

グチャァ!!

刹那─────大村が心臓に刀を突き立てられていた。だがその刀は勢いを止めず、莉佳の鎖骨を砕き肩を貫いていた

「っ!」莉佳が痛みで顔を顰める

「がっぁあああァ!?」

大村がそう唸るとその場で崩れ落ちる

「くそ……逃げ……ろ!」

力を振り絞り、莉佳を突き飛ばし貫いていた刀を抜かせる。

大村が倒れると同時に刀も下へと下がり莉佳の右胸を引き裂く。だが幸い大村が突き飛ばしたことにより多少、とはいえ浅くはないが致命傷は何とか避けていた

「おおむ……ら…………君?」

崩れ落ちる大村を呆然と眺める莉佳

「大村君!!?ねぇ!お願い!しっかりして!おねがッ!?」

涙を流しながら大村を必死に揺すっていた莉佳だったが、悪魔に横腹を蹴り飛ばされ5m以上吹き飛ばされる

「いっ!?いゃぁぁぁぁぁあ!?」

悲鳴を上げながら吹き飛ばされた莉佳は一軒家の壁に叩きつけられ意識を失った

「二人共!!くっ……この!」

その場にいた五体の悪魔を一瞬にして消し炭にするイリーナ。

一緒に居ながらも救出に遅れたのは、突如中級悪魔15体程の襲撃にあったのだ。

「大村さ…………!」

イリーナの口から言葉が消える。

「そんな………」

大村は既に死んでいた。

あれ程活気があった男がこんなあっさりと。

こんな事で死んだのだ。

自分の無力のせいで。

溢れそうになる涙を必死に堪え、莉佳の方へ向かう

ギリギリ息はあった。

「こんなことくらいしか出来ないけど……!」

イリーナはそう言って莉佳の出血と折れた肋が刺さった臓器の出血を止め、肋を治療する

元々イリーナは破壊専門であり、治療は専門外なのだ

「肩が…………!治せない!?なんでッ!?」

くどい様だがイリーナは治療は専門外なのだ。

魔力の混合した傷口を治すことはイリーナにはできなかった。




(白虎!血の臭い!これ……非適正者の血だよ!?)

「く…………そがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

(さらに濃くなった!ここからなら見える!男が1人!女の子が1人家に叩きつけられてる!)

白虎の視界に入る橙色の少女

左胸から大量の出血をしている大村

左肩を突き刺されている莉佳

その光景を目の当たりにした時白虎の中で何かが切れた。

そう。怒ったのは当然なのだが、それとは別の……〝彼の才能〟が。

「ウオァァァァァァアアアァ!!」

獣にも似た怒声で莉佳に〝触れていた〟橙色の髪の少女に斬り掛かる。

(待って!!白虎!?この人さっきの人だよ!?勝てない!──────え……?あれ!?白虎ほんとに待って!あの人あの女の子の傷を治してる!白虎!!)

魔法陣を4つ足元に展開させ、一気に力を解放する。今まで一つだった為速度は四倍に等しい

「え!?はやっ……ッ!」

あまりの速度に驚きを隠せないイリーナ

第1位悪魔であってもこの速度は厳しいであろう

(くっ……ごめんね)

そう言って千火は白虎に供給していた悪魔の力を──────

(え!?なんで……どうして止められないの!?)

簡潔に言ってしまうと現状、千火が魔力を供給しているのではなく白虎が無理矢理に力を〝奪っていた〟のだ。

(白虎ダメぇ!)

少女の声が白虎には聞こえない。

黒焔の槍を作り出し攻撃を防ごうと槍を構える

刹那──────刀があと少しという距離で触れる寸前速度のカートリッジを解除した。

「なっ!?」

方向転換、そしてそこからの黄カートリッジ装着、魔法陣展開による拳への速度強化

斬り掛かる

「くっ!?」

そう言ってイリーナは槍を振るが──────

無重力により槍が思うように回らずむしろ一回転してしまう。

「オオオォォォアァァァアアアァアアアァァァ!!」

グチャァァァ!!とイリーナの腹部を20倍の力を持った刀が引き裂く。

イリーナは宙を舞い、鮮血は振りまかれ、大きな弧を描きながら2mほど先まで吹き飛ばされ地に叩きつけられる。

ビチャチャチャ!!

振りまかれた血が地を叩く。

だがまだ白虎の攻撃は止まらない

叩きつけられたイリーナの顔面を全力で地に叩きつける要領で殴る

「いっ!?」

イリーナの顔面が20倍の力を持った拳に殴られ歪む。

そのまま地に叩きつけられ、地はゴオオォォォン!!と轟音を響かせながら地がクモの巣状にへこむ。

「かはっ!」

血を吐き痛みに顔を歪めるイリーナ。

「こんのォオォォオオオオオ!!!」

引き裂かれた腹部を今度は踏み潰す。

「これ以上は……ダメ!」

そう言ってイリーナは黒焔で作り出した鎖で白虎の四肢を拘束する。

そしてイリーナは距離をとり、黒槍を作り出し白虎に突き立て────

「くっそがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そう言って白のカートリッジと紫のカートリッジ、黄のカートリッジを同時に使用し、拘束されていた四肢を空間攻撃で切断、即座に再生させ、空間攻撃を解除し赤のカートリッジを装着する

「まだだ!まだ!まだ!まだ!まだ!まだまだまだまだッ!!!」

そう言って黒槍を左腕で掴み取る

「なっ!?玉砕!?」

後ろに下がろうとするイリーナだが黄のカートリッジの効果無重力化により、上手く下がれない。

「くっ……またあの能力!」

黒槍を掴んだ左腕から侵食が始まる

だが侵食するより先に二の腕あたりと即頭部に魔法陣を展開させ、左腕と頭部を叩きつけ、左腕を侵食される前に千切る。

白虎は脳震盪を起こすが白のカートリッジにより即座に修正、再生、左腕もだ。

「オォ!!ラァァ!!」

イリーナの顔面を左腕で殴る

吹き飛ばぬようにイリーナの足を左足で踏む。

「つ…………ァ!」

イリーナの脳が揺さぶられる

「まだだ!」

右足で膝蹴りを頭部に叩き込む。

左足でイリーナの足を固定

そして右腕で肘打ち、左足で回し蹴り、無重力により一回転し肘打ち……

怒涛の連続攻撃を繰り広げる白虎

そして左胸から右腰にかけて刀を振り下ろす。

ブシャァァァアアァァァアアッッ!!

とイリーナの血液が吹き出す。

「かっ……はっ…………ッ!」

イリーナは倒れ─────

「─────ッ!お願い!ヒュドラッ!!!」

足を地にしっかりと踏みしめ、転倒を防ぎ、禁忌の黒龍の名を呼ぶ。

突如黒煙が白虎を包み込む

「ぐっ……な……んだこ……れ!?苦し……」

「終わりに……しよう!」

そう言ってイリーナの後方に黒龍が姿を現す。

刹那─────黒龍の鱗、尾、翼、爪などがバラバラになり、やがて一つの大剣となる

「黒焔滅剣アルディア──────」

その刀の切っ先を白虎に向ける

グチャグチャバキバキメキメキメキメキメキ!ブチャチャチャチャチャ!!

白虎の身体中から聞こえてはならぬ音が発せられる。

「く…………そ………」

(俺は…………勝てないのか…………)

再生が追いつかない。

黒焔滅剣アルディア。

切っ先を向けるだけでその者を絶命させるという絶剣。

絶対なる、完全なる、圧倒的な勝利をもたらす剣。

だがこの血の臭い、この肉の柔らかさ─────そしてこの黒焔滅剣アルディアは非適正者にのみ全くの効果を成さない。

そう。異能者のみを食らい滅する刀なのだ

本来悪魔なのならば切っ先を向けられた瞬間、まるで龍に噛みちぎられたかの如く身体は抉れ本当の意味の一瞬。そう1秒も無い間に消滅するはずなのだ

「ちょ!?ヒュドラ待って!!!」

攻撃が止む。

「この人…………人間……!?」

そう言ってイリーナは白虎に近寄り恐る恐る手帳を確認する。




南支部異能者管理事務局所属学園 所属


生徒名 大瀬 白虎 16歳一年所属

おおせ びゃっこ 



「嘘…………!?」

この手帳には大瀬 白虎と記載されていた。

そう。莉佳達の言っていた少年だ。

「息はある!まだあるよ……」

どうすれば…………

そう。彼女は破壊専門だ。

「もう…………無理だよぉ…………わ、たしじゃ……誰も…………」


挫け、泣きだしそうな少女に1人の男の声



「おーおーすげぇなおい、なんだこれ」

ドス黒い衣服、ドス黒い黒刀を持ち、黒髪の男性。身長は180あるかないかだろう。

「団長。あの子黒龍舞姫では……」

ポニーテールの金髪で同じくドス黒い衣服、真っ赤に染まった赤刀。身長は160くらいだろう

「おっ?あいつ怪我してんじゃね?すげぇ大怪我ほっといたら死ぬな……」

白髪の長髪の男がいう。同じくドス黒い衣服、身長は185くらいだろうか。真っ白の白刀を担いでいる。

「嬢ちゃんどきな」

白髪の男が言うと白虎の傷を治療する

「え……っと……な、んで……?」

「はぁ……おいチビ。泣くな」

黒髪の男が頭を掻きながらハンカチを渡す

「団長こちらの女の子、どうしますか?」

莉佳の治療をした金髪の女が莉佳について、聞く。

「連れて帰る」

黒髪の男が言う

「ついてこい、チビ」

着いて行くことを悩んだイリーナだったが

「おーい嬢ちゃん来いよー?この女の子に俺、イタズラしちゃうかも知れねぇぞぉ?」

背負った莉佳を揺すって言う

「ん…………い、行く!けど…………大村さんが……」

「持ってるよ。あとイタズラすんなよ樹ぶっ飛ばすぞ」

黒髪の男が言う。大村の遺体を両手で持ち上げ、俗に言うお姫様抱っこをして持っている

樹と呼ばれた白髪の男が言う。

「わかってるよ恭夜、しねぇって……まず泉に殺されるしな」

そう言って樹は泉という金髪の女にウインクをしてみせる

「…………えっ……と、その……は、ははは……」

迷ったうえ、最終的に作り笑顔をする泉

「お前愛想つかされてんじゃねぇか……」

恭夜が言う

「えぇ!?んなことはねぇよ!?」

樹が言うと、「あぁもうどうでもいいよ」と話を切り捨てる恭夜。

イリーナは気絶している白虎をおぶると、彼らの方へ向かう

「自己紹介……って言いたいところだが、まぁ二回もするのめんどくせぇし、こいつが起きたらにしようか」

そう言って恭夜が泉を見る

コクっと泉が相づちを打つと

「開門!」

膨大な魔力が発生し漆黒と鮮かな赤の混じった全長10メートルはあるだろう、巨門が出現する。

「あなた……たちは?」

イリーナが問う

「俺達か?俺達は適正者と悪魔の混じった人間だ」

「ま、まって!適正者が悪魔になると拒絶反応で死ぬって……」

「あぁ……それか死ぬよ。いや、死んだよ俺達は」

あっさりと言われ、理解が追いつかない。

「え?」

「俺達は一度死んだ。けどな俺達の一部になった悪魔はどれも……不老不死を持っている」

繋がった。

彼らは不死では無い代わりに、適正者と悪魔の力両方を得ているのだ。

「めちゃくちゃな……それに不老不死を持った悪魔なんてどうやって……」

「14年前、悪魔の中で一つのクーデターが起きた。悪魔の共食いだ。不老不死であっても、魂の核となる生気が無ければ死ぬ。だが、共食いを行った悪魔は元女王であり、王を捕食していた為…………爆発的な力を持っていた─────この時の不老不死持ちであったはずの悪魔の死体から細胞と、微かな生気を頂戴させてもらった。ってわけだ」

「納得できたか?」といいながら門へと入って行く恭夜

「この先は……何があるの!?」

「質問が多いチビだな……この先には──────14年前に死んだ悪魔の王の城がある」

「っ!?」

人間達が元とはいえ、悪魔の城に住んでいるというのか。

異常である。

悪魔の世界はただでさえ魔力濃度等が高いし、食べれる生き物も全く異なる。

たとえ今はそれが改善されていたとしても、入った当初はどうしていたのか。

「心配しなくても、飯はあるし、高濃度の魔力も消えてる。だから来い」

イリーナは深呼吸をすると人間界と悪魔の城を結ぶ門の中に白虎、莉佳を連れて足を踏み入れる



ギィィィィィン…………バタン!

ドアが閉まる。

真っ暗な通路だったが3秒も歩いていると突然明るい景色が広がった。

ゴーン……と金が鳴り、鳥が飛び、ガヤガヤと人々が騒いでいる。

それにしても凄い街だ。

人間界にあったものは全て売り出してあり、悪魔界の生き物、ケルベロス等も共生している。

何よりこの広さだ。まるで巨大都市と言わんばかりの広さ

建物が建っていない場所がほとんど無いと言っていいほどの豪街。

「っ……すごい…………」

「じゃあ…………まず言うことがあるな」

恭夜が言う

「ようこそ。俺達人間にとって最後であり最強の砦〝アルスラグナ〟へ」

「私達のギルドに案内しますね!」

「俺達のギルドは────あの先だ。見えるだろ?あの巨大な建物」

街の中心にそびえ立つ50階層は容易に超えていそうな建物

「みえる……」

イリーナは元々貧民だ。こんな景色を見たことは無い

「この世で唯一悪魔への対抗策を持っている連中の集まりだ。人間界の適正者なんてのはただの気休め程度だ。とりあえずギルドに入ったらゆっくり休め話はその後だ」


ギルドに向かうため、イリーナは人間界と悪魔界を繋いでいた門から足を踏み出し、アルスラグナへと足を踏み入れる。

4時間以上の歩行の末、遂にギルドへとたどり着く

一方イリーナだったが、街の人々達に「可愛いねぇ」や「お人形さんみたい」とか「これからよろしくね」等でお菓子や衣服を沢山もらってしまった。

「ったくチヤホヤされやがって……じゃあ本当の意味でようこそ。俺達のギルド〝グレイル〟に」


この日から──────彼らの日常は大きく変化していく。

今までの話は白虎達がギルドに入る前の話。

彼らの本当の地獄はこれからであり、また楽しみもこれからである。



この世の中は悪魔によって人類が衰退した世界

争うことは許されず受け入れる事しか出来なかった人類は忽ち衰退していった。


だがそんなある日人間達が悪魔に対処する唯一の方法適正能力を手に入れた。

それでも尚悪魔達の群勢が減ることはなく衰退の根本である悪魔を根絶することは無理であった。

そんなある日から人間達の中に圧倒的な格差が生まれた。

適正者と非適正者への差別。

非適正者は動物以下とされ、死んでもゴミのような扱いしか受けない。

そんな世界を嫌がり、ある少年が南支部異能者管理事務局所属学園から姿を消した。

それから数日後。元々この差別を嫌っていた者達が次々と行方不明になっていった。

そして数年が経ち、今のこのギルド〝グレイル〟が建っているのだ。



「さぁ……入れ」

ドアを開けた先には数々の適正者達が居た。

「お帰りなさいませ!団長!」と全員が声を揃え言う。

「ただいま。遺体が1人墓に埋めてあげてくれ。怪我人が2人、いや3人治療室で寝させてやってくれ」

「了解しました!」と全員が声を揃え言うと団員全員が彼らを迎える

「さぁ、こっちだ!」や「ご愁傷さまです」と言った言葉が飛び交う。

「なんかあったら言ってくれ。その時は手伝えることならば手伝うからな」

そう言って恭夜は階段を上っていく

「あ、あの!恭夜さん!」

階段を上る恭夜を引き止め、イリーナがいう。

「ありがとう……ございます!皆さん!宜しくお願いします!」


彼らの生活はまだ始まったばかり──────




第一章

«少し前の話»終。



どうでしたか?

少し残念なことになってしまいましたが……。

まだまだ初心者なので戦闘の文章などがうまく書けません……。

大変だなぁ……

次回はキャラクター設定を投稿したいと思っています。

そしてキャラクター設定の次はいよいよ2章!

そしてこの小説を今回も読んでくださった方々に……ありがとうございました!これからも宜しくお願いします!

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