ウンメイノハジマリ
前回の続き
いよいよ本編です!
そして前作を読み再びこのサイトに顔を出して下さった方々ありがとうございます
所──南星学園
正式名 南支部異能者管理事務局所属学園
管理局名 黒星
この学校は表向きは南星学園というお金持ちが来そうなキラキラした印象のある名前であり最も治安がいい学校とされているが、裏では親や引き受け先のない所謂身柄の保護をされない20歳未満の男女を保護する。
だが代償として『適正者』を探しだし、その適正者を育成、実戦経験を積ませ、その後10年前から続いている無差別殺人の原因とされている悪魔を討伐の為この南星学園の地下、本部に移動後訓練を積んだ適正者達を合格適正者と呼び、悪魔出現時戦場に向かわせるというシステムだ。
適正者とは悪魔に対して現在最も有効な『異能力』を使う人間であり適正者ではない所謂一般人とされた者は北に運ばれ社会の裏企業で一生を生きることとされている
そして今ここにいる一人の少年も現在南星学園の生徒であり、見捨てられた存在。つまり適正者の可能性は0と断定された非適正者である
「おい一年何見てんだコラ!?」
「出すもん出せば見逃してやるよ?」
「一年なら先輩に貢献しねぇとな!」
ガラの悪い男達が一年少年こと大瀬白虎に朝の運動場にてしつこく絡んできていた
「あの……すみませんセンパイ俺今金危ないんっすよ見逃してくれませんか?」
「あぁ!?ナメてんのかガキ!いいから金出せや!」
クソ………鬱陶しいな。もう留年は勘弁だっての
ボソッと白虎が呟く
「なにボソボソ喋ってんだ!キモいんだよガキィ!」
白虎の横腹に回し蹴りを叩き込む
「っ!?」
痛みに顔をしかめつつも白虎は笑った
「痛いっすよセンパイ……」
「なにヘラヘラ笑ってんだテメェ!」
さらにその顔面を蹴り飛ばす
そして腹、背中、足、腕と蹴り殴られ時には投げ飛ばされる
「こいつ結構金持ってんじゃねぇか」
「おお!万札三枚もあるぞ!」
「へへっありがとうよ」
結局所持金を取られ、彼らは教室へと戻っていく
その光景をみていた生徒も教師も白虎をみてヘラヘラと嘲笑っている
「クソ、非適正者ってだけでこんな目に合わなきゃいけないのかよ……」
そう言いながら仰向けの身体を起こすと教室から顔を出し嘲笑う人間達を見上げ、踵を返し校舎へと足早に進む
校舎に入り白虎の教室へと向かう途中の階段で1人の女子が白虎に言う
「あなたさっきのなんなの?なんで殴られたまま居たの?平気なの?悔しくないの!?」
なぜ怒っているのかそう口にする前に彼女は言った
「篠見 莉佳。あなたと同じ非適正者」
そういうことか。
つまり彼女は同じ非適正者として俺の行動に憤りを覚えたわけだ。馬鹿馬鹿しい
「あんたがどう思おうと勝手だ。けど俺はこれ以上逆らって留年にされて社会にも出れずこんな蔑まれ続ける生活抜け出したいんだよ。頼むから邪魔だけはしないでくれ。あと俺の行動が気に食わなかったのなら謝るよごめん」
そう言って莉佳の横を渡ろうとした時
手を掴まれそして──────
パァン!
「!?」
いきなり叩かれた。
「あなたそれでも人間!?思い通りでいいの!?プライドもないの!この生活から抜け出せるわけないでしょ!あいつらの都合のいいようにされてるだけ!事実この学校に非適正者で卒業した生徒なんて1人もいないの!」
え?今コイツはなんて言った?〝卒業した生徒が1人もいない〟?
「ふ、ふざけんなよ、だってそうじゃなきゃなんのための進級なんだよ!」
「本来の進級ってどういうものかわかる?進級出来ることをした人が進級できるの。ここ南星で進級できるのは適正者だけ。あなたが非適正者と断定されたのは昨年の8月でしょ?」
つまり彼女が言うのは俺がいくら努力してもこの学校は卒業できない。ここで一生パシリを演じるしかない。という事だ
「ふざけんな……くそ!つまりあれか?俺の我慢は全部無駄だったってのか?」
震える声で問う
「……えぇ」
簡潔に答える莉佳
絶望した白虎に彼女は続けていう
「だからね!私の作った闇部に入ったらどうって話を……しにきたの」
「は?」
こいつ、初対面でいきなり叩いておいて何言ってんだ
「何言ってんだアンタ闇部?なんだそれふざけんな!それに闇部ってなんだそれ明らかに怪しいだろそれ俺は入らな────」
「ま、まって!?」
莉佳が初めて慌てる
部員候補が消えそうで焦っているのか。
「本当の部名はね、『みんな仲良く平等に』なの!」
「…………もっとまともな部名作れなかったのかよ。つーかそれこの学校全力否定じゃねぇか」
そして去ろうとする白虎に再び
「まって!?この学校で活動はしてないの!してるのは緑橋公園の近くにある廃棄場にあるトラックの中で────」
「小学生かよ!そういうのなんていうか知ってるか?」
抑えきれなくなった白虎が言う
「え?なんていうの?」
「秘密基地」
「…………………………っ!!」
ガッ!
「いってぇ!?」
すねを蹴られた。
すね蹴られるのどんだけ痛いか知ってんのかコイツ!
「なにすんだおい!?」
「いいから入ってよ!そもそも私の一生懸命作った部を秘密基地とか後ろに小並感ってつきそうなこと言うな!」
白虎の軽く言ったことに思いのほか過剰に反応する莉佳
「な、なんだよ……まさかお前も自覚あるんじゃ──」
ガッ!
「いってぇ!?だからすね蹴るのやめろって!しかもさっきと同じ場所ピンポイントで狙うな!お前すね蹴られたことあんのかよ!?」
すねを必死に抑えながら白虎が言う
その姿を見ていた莉佳は
「ふふっ」
クスリと笑いそして
「ごめんなさい……少し、ちょっとだけやりすぎたかも」
と。
これ以上言えるわけもなく白虎は
「ん。俺も悪かったよ言い過ぎた。んで部活の件だがな」
期待の眼差し
「んー……その見学させてくれその後考える」
言ってしまった。
断るつもりだったのに
「ほ、ほんと!?やったぁ!今日の放課後でもいい!?いいよね!」
相変わらず強引だ。だがそう思いつつも、こんなふうに誰かと喋るのは久しぶりだ。
悪くは無いそう思えた
「わかったよまた後でな」
「うん、ありがとうございます」
莉佳の初めて見せる笑み
白虎はその笑顔に一瞬、ほんの一瞬見とれてしまった
「おう……」
これが白虎の5月2日8時の出来事───
運命のカウントダウンは近付いて…………
そして昼休み
「いただきます」
大勢の連中が4.5人でグループを作り昼食を食べている中食堂で白虎はたった1人寂しく食べていた
「お前だな大瀬白虎は」
眼鏡をかけ制服のボタンは閉じてあり髪も黒で染めてはなさそうだ
「ん?」
絡まれることは覚悟していた。
白虎は髪の色も白で目つきも悪いどちらかというと口も悪く、一年前に絡んできた先輩を5人ほど病院送りにもしている
だがその時
「こら大村君何回もその喧嘩腰に喋りかけるのやめてって言ってるでしょ?」
聞き慣れた声。そう莉佳の声だ
「え?どゆこと?」
混乱している白虎に大村という男子が
「俺も闇部こと『 みんな仲良く平等に 』のメンバーだ。怖がらせたならすまん。莉佳といっしょにお前と飯を食わないかと誘われてな」
全く余計なお世話だ
「なんかあなた一人でポツンと食べてるし?」
だけど
こうやって喋りかけてくれる人達は───悪くない
「あぁ、なら一緒に食べようか」
そして放課後
大村、莉佳、そして白虎。
3人で闇部へと向かう
「ところでさ」
「ん?」
二人が口を揃えて白虎に視線を向ける
「その 『みんな仲良く平等に』って部は全員非適正者なのか?」
「そうよ非適正者の差別は狂ってるわ。だから私たちで支えあって楽しくしようって思って」
いい子じゃないか
「ちなみに『みんな仲良く平等に』略して『みんくに』は設立3年だ」
長い。
「てことはお前3年前から非適正者に断定されてたのか?」
「悔しいけどね。そういうことっていうか!大村君!『みんくに』って何よ!」
「ああ長かったからな今度から『みんくに』で通そう」
「ふざけないで!『みんな仲良く平等に』なんだから!絶対!」
そんな会話を白虎は微笑みながら聞いていた
一つの疑問はあった。
莉佳のカバンすごく重そうなんだが。
それから夕方5時
「はーい!ただいまー!莉佳ちゃん帰還だぁ!」
「あ、お姉ちゃん!」
「おかえりー!」
など子供の声から同い年、中には俺らより年上だろうか声まで聞こえる。
この人たち全員が非適正者という事か。
「今日はみんなに!じゃじゃーん!」
そう言って莉佳が取り出したのはお菓子、パン、そしてクーラーボックスに入ったジュース等
重そうなカバンの原因はあれか。
「わぁー!」
「おお!」
「莉佳俺らに気配んなくていいよ」
と声が聞こえてくる。
「いいの!私の好きでやってるんだから!さぁみんな食べて食べて!」
その言葉を聞くと子供たちは手に取ってバクバクと食べ始め、大人達はありがとうと言うかのような微笑みでパンを手に取り食べ始める。
「なにしてんのあなたも食べるのよ」
「え?」
その時
「そこの兄ちゃんはどうした?莉佳」
一人の男性が莉佳に問う
「この人は見学人!もしかしたら私たちの部活に入ってくれるかも知れないの!」
「そっかぁ!入ってくれるよね!お兄ちゃん!」
「兄ちゃん!ここはあったかほかほかだぞ!」
と歓迎の声がトラック内を染める
「そうですね、今日結論をだそうと思っています!」
そう言うと「今にしてよー!」と子供たちが駄々をこねるが
「ほら!お兄ちゃんが困ってるでしょ!」
と莉佳がなだめる。
そうして楽しい時間は過ぎ
午後7時
「今日はありがとう」
莉佳が言う
「あぁそれはいいけどお前らは帰らねぇのか?」
白虎が質問する
「私たちはここで住んでるの案外楽しいのよ?もし入るなら泊まりに来てね!というより入りなさい!」と小悪魔の様な顔で言ってくる
「あーぁ!もうわかったよ!」
そう振り切って足早に家に向かう。
そして途中で足を止めると
「今日はありがとうな楽しかった。また明日おやすみ」
そう言った白虎に莉佳は今日一番の笑顔を見せ
「うん!また明日。おやすみ白虎」
白虎はふっと微笑みを返し家に帰る
運命の日はもうすぐそこ────
次の日
白虎は朝になるといつもより早く起き2人を迎えに全力ダッシュでトラックへと向かう。
「おはようお前ら!一緒に学校行くか?」
ノックもせず全力でドアを開け、覗いた先には──────
「へ?」
下着姿の莉佳がいた
静寂
混乱
そして興奮
「えっとその、これは、だな、み、みんな特に男子とかいる場所では着替えないなって思ってぇ!?」
男の大事な大事な宝物に有り難き全力蹴りを頂戴した白虎
正直目がまわっただろう
「このド変態!痴漢!ゴミ!歩く強姦レイプ魔!出てけ!!」
顔を真っ赤にした莉佳はすきたい放題白虎を罵倒し追い出す
そして白虎は気づいた
あ─────男(小学3年以下除く)全員外出てんじゃん……
「お前もなかなか勇気あるな。莉佳の着替えを覗いた勇者なんてお前が初めてだぞ。良かったな。お前は俺達の中の勇者だ。あと周りを見ろ」
と大村が言う。
全く嬉しくねぇ
「くそ……だからって蹴るか息子を」
「女には、何万年かけてもその痛みはわからんさ。機嫌悪そうだし先に行くぞ白虎」
そう言って莉佳より一足先に学校に向かう大村と(息子が瀕死状態の)白虎であった
HRが終わり一時間目の授業終了5分間際に一つのサイレンが鳴り響いた。
『悪魔が緑町に出現!数想定300!合格適正者総員でも今回の戦力では足止め程度の効果しか無い模様!至急〝適正者〟は地下の本部へ避難してください!』
こんな時まで。
「こんな時までこの町は……国は適正者を優先するのかよ…………」
その時廊下を走り抜ける見慣れた2人を見た。
「クソっ」
そう吐き捨てると白虎も2人を追うため走り出す
悲鳴、怒声様々な声が絡まる校舎をかき分け2人の向うであろうトラックを目指す
だが。
白虎より先に着くはずの2人は未だ着いておらず白虎が先にたどり着いてしまった
おかしい何故だ
だがそれより先にするべきことがある。
「みんな大丈────!?」
この世界は悪魔が支配する町
人間が争うことは許されず、足掻き、争うことをしても適わぬ圧倒的戦力そして力の差。
ここはそういう世界なのだ。
残酷な残酷な残酷な慈悲の一つない世界───────
どうでしたか?序章の時2、3日かかると言っていた次章かなり早く出してしまいました。
小説書くのって楽しいです
あ、ちなみに主人公は白虎で『はくと』と読みます!
これから彼等はどうなるのか
気になってしまい早く続きが見たい!という方も居られればなんだ、って飽きてしまった方もいるかも知れません。
ですが自分なりに精一杯面白い作品にしたいと思っております!
尚脱字、誤字、気になる点が御座いましたら気軽にご指摘ください!