三本足の木片
何かあるわけでもないそれは、確かに三本足に見えたんだ
ボロボロになった大きめのお椀、インスタントラーメンのスープ、数円もしないような木の割り箸。面白味がない、面白くない。面白いとも思いたくない。何でこんなことになったんだ、自分が悪いとは思いたくない。
言わばよくある話。皆が皆、関係ないと言いながらも、そういうことは必ず誰かに有るわけで、アミダくじのスピードが速かったり遅かったりと、あっちこっち、誰がどうなるかは解らない
今はまだ、扉は沈黙しているけど、今か今かと爆弾のように待ち構えている。苛立ちのあまり目の前の四本足を蹴飛ばす、お椀が叫んで足元が生暖かい。箱はその様をみてゲラゲラと笑っている。
足が冷えてきた、足が、足が。重みに耐える四本足が、息を吹き掛ける一本足が、まるで己の二本の足を見ているようで、三本足なんだって。夕暮れてそれが、それが、それが、問いの答えだったか質問だった。
途端に、辺りは闇に包まれた。箱はもう喋らないし、一本足は息を失った。沈黙、扉が、扉が叫ぶ、泣き叫ぶ。
足が来る、足が来る、交互に単調に。足が、二本の足が、片方ずつ、徐々に、徐々に近づいて。
俺は何のために生きてる
足が悪いんだ、足が悪いんだ、足が悪いんだ、足が悪いんだ、良くなかったんだ、足が、足が、足が、足が、足が、足が、足が、足が。一本が近づいて、すると、もう一本が近づいて、交互に、足が、足が。
あー、あー、足が。木のそれだけか、貫いて貫いて終わりにしよう。足が悪かったんだから、それで、それで。終わり
首から生えたそれは、確かに三本足に見えたんだ