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金色の 菜の花畑の 向こうから    作者:
第2章 私は驚いている
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私は驚いている 6

午後は,どうも子どもの体に引きずられているせいかとても眠い。

「春だからだよ。」

 倫太郎君がこともなげに言う。

「お昼寝をするといいですよ。」

 一恵さんが気を利かせて朝目覚めた部屋に連れて行ってくれた。


「お休みなさい。」

 言ったか言わないうちに眠り込んでしまったらしい。

目を覚ますと3時頃だった。起き上がろうとしたところに一恵さんがやってきて

「ちょうどおやつの時間ですよ。」

 と言う。食っちゃ寝になっている。とちょっと体重を考えたが,今は6歳の体。あの頃は太っていなかったから多分・・・多分大丈夫。


 隣の部屋には美味しそうな苺ののったショートケーキと牛乳が用意されていた。


 牛乳・・牛乳ですか。紅茶かコーヒーがいいな。緑茶でもいいな。いやいやわがまま言っちゃいけない。

 食べていると倫太郎君がやってきた。


「ごめんなさい。寝てしまって。」

「いいんだよ。」

「倫太郎くんはおやちゅ食べたの?」

 あ。かんだ。

 くすっと倫太郎君は笑った。

「食べたよ。」


 私が食べ終わるのを待って今度は家を案内すると言って立ち上がった。


 まず,私がいる部屋を出て左へ行くと倫太郎君の部屋だった。

ぐるっと中庭を蒔くようにこの家は建っている。中庭に面したところはすべて回廊になっている。図書室の前に仕切りがあり,向こうに行けないようになっていた。

「向こうは客室なんだよ。こちらの居住区に入れないように壁になっているんだ。」

 仕切りの脇にドアがあった。

「ここは図書室だよ。図書室はこの鍵で出入りできる。

 図書室は客室側からも入れるから,出入りには必ず鍵がいる。そこだけは面倒くさいかなぁ。

 もちろん客室側のドアにも常に鍵はかけられているんだよ。」 

 こうして屋敷中を見て回った私は,この家は覚えやすいと思った。 

 

でも2~3日したら私は帰る。そう何日もお世話になっていられない。

 覚えたところで・・・


「え?帰れないよ。っていうか,帰っちゃだめだし。」

「帰れないって?」

 倫太郎君と夕食を食べながら,帰りの話をしたらそんなことを言われた。

「帰って欲しくないんだ。」 

「でもね,」

「その話はまた後で。」

 倫太郎君は私の言葉を遮るようにかぶせてきた。


「今日は遅くなっちゃったから,この街の案内は明日するよ。」

 ごまかしているんだね。何を本当は言いたいの?

・・・・・

 明日。どんな街なんだろう。倫太郎君の住むこの街は。



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