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金色の 菜の花畑の 向こうから    作者:
第3部 第1章 私は目を覚ます
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私は目を覚ます 10

 水戸君が影?!私と広川さんは顔を見合わせた。

 影は結構名が知られている。つまり年齢はそれほど低くないはずだ。変装にしてはちゃんと広川さん達と同じような年頃に見える。本当か?広川さんはどう思ったんだろう。影と聞いても不思議に思っていなさそうに見えるが・・・彼女も護衛の存在は知っていたんだろうか。


そこに山名さんや英田さんがやってくる。

「大丈夫だったの?」

「ええ。水戸君がかばってくれたの。」

「へぇ。水戸君意外といい奴だったんだね。」

「いや。それほどでも。」

水戸君はにこやかに受け答えしているけれど,目は東君から離れていない。


ばたん・・・ドアが開く。

「学園長」

おじいさんが青い顔をして息を切らして立っていた。きっとまたモニターを見ていたんだ。

先生が慌てておじいさんの方に行く。

「報告したまえ。」

慌てて先生が報告している。東君は申し訳なさそうな顔をして神妙にそばに立っている。

「すみませんでした。何かに躓いちゃって。」

下を見るが何も躓けそうな物はない。広川さんも,水戸君もそう思ったみたいで顔を見合わせる。


 実験を始めようとしていた他の子達もいったん実験をやめ,一斉にバーナーを消した。

 バーナーのゴーッと言う音が消え,学園長と先生,東君の声だけが響く。

 みんな黙って話を聞いている。

 それから,同じ班の広川さんからも,水戸君からも,私からも話を聞く。


 学園長は一通り話を聞くと,水戸君の方を振り返った。

「どれ,水戸君?でいいのかね?そうか。ちょっと腕を見せてくれないか。」

「はい。」

「ほう。白衣は焦げているね。めくってみてもかまわないかね?」


水戸君は腕をめくってみせる。

「なんともありませんよ。」

確かに白衣の下の白いシャツも,その下の腕も何ともなっていなかった。

「ふう。不幸中の幸いだな。」

「はい。」

「いずれにしても,倫子君をかばってくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

「この白衣は,私が預かろう。新しい物を早急に用意させる。」


「あのぉ」

東君が口を挟んできた。

「なにかね?」

「その白衣,ボクに弁償させてくれませんか?」

「いや。学園でのことなので,君は心配しなくていいよ。」


しばらくしておじいさんは,十分気をつけなさいと全員に向かって言葉を残して,焦げた白衣だけ持って実験室を出て行った。

 

 先生が気を取り直した頃にはもう授業の終わりの時間だった。

 みんながやがやと教室に戻る。

「昨日からやたらと変なことが起きるわねぇ。」

誰かが言うと,みんなが賛成する。

「何かが起きているのかもな。」

冬彌君が言うから,山名さんも,

「私たちの知らない何かってこと?」

と返している。


確かに・・・何かが起きている。いや・・・おきようとしているのか・・・


おまえたち,みんな簡単に善だ悪だというんじゃない

 俺たちゃなにも知っちゃいないんだぜ

本当の悪とは何だと思うんだ?

 本当の善とは何だと思うんだ?

 俺と一緒に考えようじゃないか


なんだろう。急にあの詩の一節が浮かんできた。



妙な詩ですが,これからも出てきます。

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