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金色の 菜の花畑の 向こうから    作者:
第2部 第2章 私は迷っている
30/69

私は迷っている 5

このあたり,残酷な表現に当たるかもしれません。


・・・・

・・・今3人に囲まれて移動中。小さいから隠されるように両手をとられ,引きずられている。

辺りは,いつもなら,たくさんの生徒がいる時間なのになぜか誰もいない。


・・・気のせいか・・・空気が重い。


この3人にも何か黒い物を感じるのは怖い思いをしているせいか・・・


何がしたいんだ?いじめか?

 痛めつけられるのは遠慮したい。

・・・助けを呼ぼうにも,周りには本当に人影もない,私の手は両方からがっちりつかまれて,ふさがっている上に,後ろから抱きかかえるようにされているから・・・これは困った。


 空き教室に連れ込まれると,

 抱きかかえることはやめたけれど,腕だけはしっかり捕まえられて,怒鳴られる。


 空気が濁る・・・黒いもやが辺りに立ちこめる。気分が急に悪くなる。


・・・・


「あなたは本当は何者なの?」

 おお。単刀直入。

 答えて欲しいのか?


 気分の悪さも手伝って,黙っていたら,矢継ぎ早に問いは続く・・・

 そんなに連続して,怒鳴るように聞いてきたって,答える暇もない。


・・・・・・・・・


 さらに質問の形をした罵倒は続き、ますます空気が重く感じられる・・・

 頭痛もしてきた。


「なんであなたみたいなチビが,倫太郎様に大事にされているの?」

 

「・・・そんなの倫太郎君に直接聞きなさいよ。」

 あまりのばかばかしさに思わずそう言ったら,急に,藤井百華さんが切れた。

「生意気ながきめ!!!」


 えっ

 ・・・・・

 ドカッ  ドサッ    いたっ


 足を蹴られた。これは痛かった。何という力だ。

 蹴られたところがみるみる腫れ上がる。曲がっているようにも感じられる。

 血?痛すぎる・・・

 手が離されたため倒れ込む。


 足で良かった。お腹なら下手したら死んでいる。

 ぼんやりと考える・・・頭に霞がかかったような気がする・・


 倒れたまま見上げたら,それがさらに逆鱗に触れたらしく,また蹴ろうとするから,力を振り絞って,転がって逃げた。二人の手が離れたので・・逃げられてよかった。ちらっとそんな考えが浮かぶ。


 冗談じゃない。本気で蹴られたら,この小さい体は簡単に死んでしまう。ぼんやり考える。

他の二人は,さすがにまずいと思ったのか,百華を止めようとしているみたいだ。足が・・・激痛が走る。


 がたん・・と音がして,今まで寝ていたらしい人が,いすから立ち上がる。

「何をしているんだい?」


 重い空気が少し薄まったような気がする。


「・・見りゃわかるでしょうが。見ていたんなら止めなさいよ。」

 威勢よく言ったつもりが口から出る声は弱々しい。


「井部様・・・」

「あ・・あの・・これは・・・」

「いいわけは言わなくていいよ。一目瞭然だよな。」


そう思ったらさっさと間に入れよ!!!

 思っても,あまりの痛さに,意識が遠くなる・・





 気がついたら,自分の部屋だった。きょろきょろしていたら,心配そうに一恵さんが私をのぞき込んできた。体が重い。


 一恵さんの知らせで,じきにおじいさんがやってきた。ずっと家にいて私を気遣ってくださっていたらしい。

 あの後,どうなったか分からないけれど,井部先輩が知らせてくれたのかな。


 おじいさんの話で,井部先輩があちこち連絡をしてくれたそうだ。やっぱり。

 広川さんも駆けつけてくれたとか。


 足は見事に折れていて,しばらくギブス生活らしい。

 足の骨折だけなのに,保健室でも,医療機関でも私が目覚めなかったので,頭を打ったのではないかと,みんなかなり心配したようだ。

 1泊して検査もだいぶしたらしいが,全く気がつかなかった。



「なんで倫太郎様に助けを求めなかったんですか?」

 一恵さんが言う。何のことだろう。

「???」

「リングですよ。握って倫太郎様を呼べばすぐ助けてくれましたのに。」

「だって,倫太郎君は今,お仕事でいないじゃないの。」

「・・・それでもだ。倫太郎の力は倫子ちゃんを守ったはずだ。」


・・・手を取られていたし。リングを握る暇なんてなかった。そう言ったら,一恵さんとおじいさんは深くため息をついた。


「指輪はネックレスじゃなく,指にはめさせておくべきだったな。」

「こんなに派手なのに,普段,学園に,はめていくことはできませんよ。」

 私が指輪を見せると,おじいさんは渋い顔をした。

「いつも指にはめられるよう,もっとシンプルなやつを倫太郎に用意させよう。」

・・・いや。いりません。1つで十分。


・・・


 ・・・話しているうちに,昨日とか今日とか・・どうも話が食い違うので確認したら,なんとあれから2日過ぎていたそうだ。道理で・・・おなかがすいているはずだ。そう言うと,


「お食事をお持ちしますね。」

 一恵さんが部屋から出て行った。


「あの3人は停学・・1ヶ月。

 多分,外聞が悪いから,退学してよその学園に行くだろうさ。

 よその学園が受け入れるかどうかは・・・疑問だがな。

学園どころではないかもしれないし。

 裁判になるだろうからな。」


「裁判?」

 ・・・・・・・


「おじいさん,私・・・あの人達が何をしたかったのか,私にはさっぱり分からないんですが。」

・・・嫉妬とも違うような。


 そう言うと,おじいさんはこう返してきた。

「あまりにあの3人が倫太郎に絡むので,以前調査をさせてことがある。

 あの3人の家は,深く華国と結びついているらしい。


 藤井の家は,祖父母の代に華国から移住してきたようだし,

 吉井の家は,華国との貿易で富を築いてきた。

 清水の家は,吉井家の事業に深く関わっている。」

 

「それと倫太郎君は,何の関わりがあると言うんです?」

「日の本連合だけでなく,よその国も倫太郎の力が欲しいんだよ。」

「力って?予言の力ですか?」

「いや・・・・。」

おじいさんは言いよどんだ。

 

「さあさ,お昼ですよ。」

 一恵さんがワゴンを運んできた。それと一緒に入ってきたのは

「倫子ちゃん!!」

 倫太郎君の顔は,紙のように白かった。


「倫太郎君・・心配掛けてごめんなさい。」

「全く・・肝を冷やしたよ。」 

 ギブスのはまった私の足を見ながら,倫太郎君は顔をしかめた。

 

 その後,倫太郎君は,私がご飯を食べるあいだ,おじいさんと二人で話をするために部屋を出てしまった。

 お昼はおかゆに梅干し,簡単な香の物だった。聞いたら2日間何も食べていないから,食べ慣れている病人食がいいだろうと言うことになったらしい。おかゆじゃおなかの減りは収まらないけれど。


 私はここにいてもいいのかな。

 私がいることで倫太郎君達が困ることってないのかな。

またこんなことが起きたら足手まといだよね。

 

急に食欲が落ちてきた。


読んでくださっている方,ありがとうございます。

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