私は困っている 3
午後の先生は優しそうな女の人だった。
「初めまして。」
「私は西山佳乃子です。大学園で呪術を教えています。」
「失礼しました。呪術をご存じないのですね。」
「はい。分かりません。」
「呪術は,わかりやすく言えば,祈りの力のことです。」
「祈り?」
「神託として神から授かった言霊を預言とか,啓示として受け止めるための学問です。
これは,倫太郎君が今代では最も優れていると言われています。」
「いや,先生。それは買いかぶりすぎでしょう。僕なんてまだまだですよ。」
「呪術界の寵児が何をおっしゃいますの。
あなたの預言は素晴らしいではいりませんか。」
困ったような顔で
「今は倫子ちゃんに教えてあげてください。」
と言うので,昨日の話を思い出す。占い師と言っていたっけ。
「預言と占いって同等なの?」
「似ていますね。でも同じじゃない。
そのあたりもこれから学習していきましょう。
言霊の受け取り方も1週間で覚えていただく予定ですので。」
さらりと言われたけれど,何にも呪術のことなんか知らない私が出来るようになるのかな。
その日は言霊についてと,言霊を下ろすことつまり神託について学習した。
分からなくなって困ると倫太郎君が助け船を出してくれたので,今日のノルマは無事達成できたようだ。
「まとめです。この呪文を唱えて,神託を受けてください。」
・・・
「全き者達よ,我が心に沿い,我が手にこの世をあたえたまえ」
・・・
あれ。何か頭をかすって通り過ぎた。
「何か分かりましたか?」
「金色の何かが通り過ぎました。」
「それは何でしたか?」
「う~ん。ひらひらという感じでしたので。蝶々かもしれません。」
「通り過ぎてどちらに行きましたか?」
「こっちなので・・・」
「倫太郎君の方へ行ったのですね。」
「倫太郎君、どう見ますか。解説をしてあげてください。」
「僕にいいことがある。」
「簡単すぎますよ。」
いやあ・・・と倫太郎くんが盛んに照れる。
「後はお二人で続きをお願いしますね。
時間ですので,また明日。
失礼いたしますよ。」
「ありがとうございました。」




